「まくら」営業、はじめました。

営業職の男です。「まくら」を極めて営業のタツジンになりたいのです。

ケーキを食べればいいじゃない?

 

 

完全を求めることは、人間の心を悩ませるこの世で最悪の病である。

ラルフ・ワルド・エマーソン

 

 

つまんねえ女。思春期の私は心のなかで毒づいた。自分のケーキがいかほどのものだと思っていやがんだ。世界には、いや世界にまで出向かなくとも、大通りの古びたケーキ屋ですら、あんたが百年かかっても作れないおいしいケーキがわんさとあるのにさ。五百円かそこらでそれは手に入るのにさ。

角田光代『薄闇シルエット(ホームメイドケーキ)』より

 

 

日曜日。

 

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ケーキを作ろう

 

 

ふいに思い立つ。風邪で寝込んでいるのもばからしくなってきた日曜日の朝である。

 

作ろうと思ったのは、もちろんショートケーキ。今日はショートケーキ日記である。いつものような素晴らしい教訓や、多く賢人たちの共感を呼ぶ反省は一切ない。ただのショートケーキ日記である。美しきマダムたちよ、温かいミルクティーのご用意を。 (あ、男子禁制なんで)

 

 

 

――

 

10時。ケーキ作り開始。まずはスポンジ生地から。

 

 

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(ブラックコーヒーを飲みながら優雅に)

 

うん、そこそこうまく焼けた。さて、冷ましたこいつをぶった切り……カットしたいと思います。

 

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 3枚おろしなり。

 

 

 

 

 

 

――

 

トッピングの前に、キルシュ&シロップでアンビバージュ。

 

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(こいつでしっかり濡らしてやりますよ、奥さん)

 

 表面をしっかり濡らし、クリームをたっぷりかける。

 

――

トッピング。

 

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(イチゴってなんでこんなに高いんだろうね……)

 

 

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 (独身貴族の底力である)

 

 

この上にさらに生クリームを塗る。更に2段目、3段目と続けます。(急に省略)

 

――

 

 

ケーキ全体に生クリームを塗り終える。そして、いよいよ仕上げにかかろうと思った、その時である。

 

 

 

 

「……あれ?アレはどこにやったっけ?」

 

 

 

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(アレ) 

 

 三角のアレがない(正確には『三角コーム』という)。

 

 

 

部屋中を探す。一度も使ったことはないのだが、1年ほど前、100円ショップで買ったので、家の中にあるのは間違いない。ただ、最近キッチン棚を思いっきり掃除したので、その際にどこかに紛れてしまったようである。

 

5分ほど探したが、どうしても見つからない。

 

 

(……これ以上、ケーキを常温にさらしておくわけにもいかないなあ。)

 

 

 

お菓子作りは時間との戦いなのである。(知ったかぶり)

 

 

(ま、まあ、アレを使わなくたってケーキはできるし……)

 

と自分に言い聞かせようとする。

 

……しかしここで自分の中の完璧主義者が顔を出す。

 

 

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「本当にそれでいいのか?高いイチゴを買い、高い生クリームを買い、高いバターを買った。多額の投資をしたのに、中途半端な出来でよいのか?何より、『タイム・イズ・マネー』、多くの時間を費やしてここまでたどり着いたのだ。それなのに、中途半端なケーキを作ってよいのか?そもそも『画竜点睛』という故事成語を知らぬのか?ここでアレを使わないと、すべてが台無しになるのではないか?」

 

 

……

 

 

「……仕方ない」

 

 

ということで、冷蔵庫に途中のケーキを慎重に入れる。エプロンとバンダナを脱いでパーカーに着替え、ボサボサの頭で家を出る。そして、歩いて10分のところにある100円ショップに向かった。

 

 

――

 

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「……ない。アレがない」

 

 キッチンコーナーを何度も確認。しかし、残念ながら三角のアレはどこにも見当たらなかった。

 

 

(なんでおいてないんだよ!ふつうどの店にも置いてあるでしょうか!)

 

 

と心の中で地団駄を踏んだ。そして、再度店内で悩む。

 

(……もう、やめない?別にアレを使わなくてもケーキはできるわけだし……。これ以上時間をかける必要はないんじゃないの?)

 

と思う。

 

……しかし、完璧主義者が再び頭に浮かぶ。

 

 

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 「男が一度やると決めたら最後まで徹底してやるべきだ。画竜点睛という故事成語があるように――」

 

 

 

……

 

 

 

 

「しかたない……」

 

 

結局、この店から歩いて30分先にある、別の100円ショップへ向かうことにした。(余談ですが風邪引き中です笑 )

 

 

 

 

――

 

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(そのⅡ) 

 

 

 

(……うそでしょ)

 

 

 

……この店にもアレがなかった。もう、どこの百円ショップにはおいてないものなのでは?という根本的な迷いが生じる。

 

 (もう、フォークか何かで代用したら?できないことはないでしょ?できる主婦はみんなそうしてるんだと思うよ。アイデアは常に窮地によって生まれるもんだよ)

 

 

……しかし、再度、彼が顔を出す。

 

 

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 「画竜点睛画竜点睛画竜点睛画竜点睛画竜点睛画竜点睛画竜点睛画竜点睛画竜点睛画竜点睛画竜点睛画竜点睛画竜点睛画竜点睛画竜点睛画竜点睛画竜点睛画竜点睛画竜点睛画竜点睛画竜点睛」

 

……

 

 

 

 ……というわけで、そこからさらに歩いて10分のところにある100円ショップへ。ここになければ、もう電車を使って製菓専門店にまで行こうと思った。

 

――

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 (そのⅢ)

 

 

 

おそるおそる、キッチンコーナーに向かう。

 

 

 

 

 

私は目を見開いた。

 

 

 

 

 

「あ、あった!!」

 

 

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(アレがコレ)

 

 

アレはあった。

 

 

やっぱりダイ〇ーはすばらしい。ステマと言われても私は構わない。皆さん、100円ショップと言ったらダイ〇ーですよ!

 

というわけで、1時間半ほどのアレ探しの冒険を終え、家路につく。

 

 

――

 

ケーキ作りを再開。アレを使ってデコレーション。

 

 

 

 

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 (どこにアレを使ったか、わかる人にはわかるかしら苦笑)

 

 

とりあえず、無事に完成。……まあ、アレを必死で探し求めるような出来栄えでもないですね(苦笑)。でも、何とも言えぬ充実感。ついでに、クオリティの高い料理日記を継続している方々のすごさを実感したのであった。

 

 

 

 ――

さて、実食。

 

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(今日はダージリンでいただきますのよ)

 

 

「うん、大体想像通りの味!」

 

このもっさりとした野暮ったいケーキの味、たまに食べるとたまりませんな。風邪をひいているので、生クリームが重かったですが(笑)

 

 

ケーキ作りはやっぱり奥が深いですな。

 

 

 

 

オ・シ・マ・イ。

 

 

 

 

 

追伸

 

余ったケーキの処分に困る。……正直、一切れで十分です(涙)冷蔵庫に居座る食べかけのケーキ(ほぼ手付かず)が、今は実に忌々しい。

 

 

 

 男独りの寂しさも実感したのであった。