ギザ十な日々

2人の息子と妻との日々を書いています。

曇り日の結論

 

 

 

晴れる日、曇る日、嵐の日。人生はお天気そのもの。人の運命はどうなるか分かりません。お天気同様、予測不可能ですよ。

福井敏雄(気象予報士)

 

 

 いいかえれば、人生には明確な「結果」があり、そのときになればある行動の意味を最終評価できるという考え方そのものが、都合のいい作り事に等しい。現実には、われわれが結果とみなす出来事も決して真の終点ではない。むしろそれは押しつけられたまがい物の里程標であって、映画の結果が実際にはこれからもつづく物語にまがい物の終止符を打つことであるのと変わらない。そしてある過程のどこに「終わり」を押しつけるかによって、結果から導かれる教訓は大きく異なってくる。

 

 ダンカン・ワッツ『偶然の科学』

 

 

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金曜日の夜。

 

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テレビを見ながら、何ともむなしい気持ちでいた。花の金曜日だというのに、どうしてこんなにむなしいのだろう?酒のせいか、くだらないバラエティー番組を見ても涙がこぼれる。

 

自分の気持ちを高めようと、借りてきた『七人の侍』のDVDを観る。だが、今度はこの映画の内容のすばらしさよりも、長すぎる放映時間に疲れを覚える。

 

気づけばもう23時。前半のDVDが終わる。後半のDVDを観ようか?いや、今日は早めに眠りにつこう。今自分に必要なのは、休息なのだ。

 

 

 

酔いきれぬ頭のまま、私は布団に入った。

 

 

――

 

土曜日

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朝。8時30分ごろ。

 

電話。会社の携帯が鳴る。

 

土曜日に会社の携帯が鳴る悪夢

 

かと思ったが、どうやら現実に会社の携帯が鳴っている。

 

「はい――焼き芋です」

 

ナタデココ「あ、もしもし、ごめんね、土曜日に」

 

「あ、ナタデココさんですか。おはようございます」

 

ナタデココさんは、私が所属する部署の事務職の女性である。

 

 

ナタデココ「あれ、まだ寝てた?」

 

「モーニングコールでした。いい目覚めです」 

 

ナタデココ「あら、それは失礼しました(笑)」

 

「どうかしましたか?土曜日に電話なんて」

 

ナタデココ「いや、ちょっと焼き芋君にお願いしたいことがあって」

 

「はあ」

 

ナタデココ「実はどうしても今日中にやらなければならない仕事があって――」

 

「はい」

 

ナタデココ「仕事内容はコウコウコウコウ――って感じ」

 

「なるほど」

 

ナタデココ「――でも、今日はちょっと用があって、対応できないのよ。だから、休日に申し訳ないんだけど……」

 

「いえいえ」

 

ナタデココ「……お願いしていい?」

 

「もちろんです。あたりまえです。承知しました」

 

ナタデココ「本当に?ありがとうね!」

 

「いえ、いつも助けていただいていますから。それに今日は特にすることがなかったので」

 

ナタデココ「じゃあよろしくね!ほんと助かります」

 

 

電話を切る。すぐに、お礼のメールがナタデココさんから届いた。これで、「夢を見たたと思っていた」で済ませる選択肢はなくなった。

 

というわけで、土曜日に急きょ会社に行くこととなった。

仕事内容は決して複雑な内容でない。単純作業であり、誰でもできるものである。ただ、期日が限られているという点で、どうしても土曜日にその仕事を遂行しなければならなかったのである。

 

休日に仕事をしなければならないことは、私の気分をより一層落ち込ませた――わけではなく、むしろ高揚させた。

 

 先輩社員から仕事を頼まれるというのはうれしいものである。それが別に私じゃなければできない仕事というわけでもなかったとしても(まあ、私にしかできない仕事なんてないですが)。

 

この時ばかりは、土曜日に何も用事を入れていなかった自分をほめてやった。そして、昨日までモヤモヤしていた悩みはすっかり忘れ、最高に晴れやかな土曜日の朝を迎えた。

 

シャワーを浴びる。

家を出る。

会社に着く。

仕事を始める。約1時間で終える。

完了した旨ナタデココさんにメールし、会社を出る。

家にそのまま帰る。

 

 

 ――

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帰宅。すでに夕方になっている。

携帯を見ると、彼女からの着信履歴があることに気が付く。

 

 

「あ、もしもし?」

 

彼女「あ、おはよう。今起きたの?」

 

「そんなわけないでしょ?今日は会社に行っていたんだよ、まったくまったく」

 

彼女「土曜日に会社?なにかあったの?緊急事態?にしては、やけにご機嫌だこと」

 

「いや、緊急事態といえば緊急事態?まあ、大したことなかったんだけどね。朝、会社の先輩から電話がかかってきたんだよ。それで、どうしてもやらなければならない仕事があるけど、用事があるからできなくなったってことで、俺に急きょ頼んできたってわけ。断るわけにもいかないから引き受けたんだけど、ほんと、まいっちゃうよね(笑)」

 

彼女「仕事?なんであんたに頼むの?」

 

「そんなの俺は知らないよ、というか先輩に訊いて?(笑)まあ、先輩からしても、俺が一番頼みやすかったんじゃないの?」

 

彼女「――へえ、そうなんだ」

 

「まあ、悪い気はしないよね。先輩から頼られるって。仕事が本当にできないやつには頼まないからね」

 

彼女「どうして先輩は自分でやらなかったの?」

 

「だから、土曜日に用事があったんだって。まあ、どうしても誰にも頼めなかったら、その用事も犠牲にするもんだと思うけど、幸いなことに頼める後輩がいたってことなんだろうね。そして、それがボクチンというわけだ」

 

彼女「へえ」

 

「まあ、しょうがないよね。まったく、俺も今日はやることがあったんだけど、まあ、しょうがないよね(へらへら)」

 

彼女「何をやる予定だったの?」

 

「え?まあ、借りていたDVD観たり、落語聴いたり――あ、英語の勉強したりだよ。もう、本当に忙しいったら忙しいったら」

 

彼女「私に会いに来るっていう選択肢はないのね」

 

「え?あ、いや、まあ……え?」

 

彼女は少し不機嫌な様子。

 

彼女「はあ、なんだか疲れた。じゃあ、またね」

 

「……じゃあ、うん、とりあえず。また」

 

 

といって、電話を切る。

 

我が気持ちにモヤがかかる。 

 

――

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夜。

英語の勉強を軽くした後、ビールを飲む。まあ、特に達成感もない、ぼんやりとした気分。

 

 (あ、そういえば今日は走っていないなあ……)

 

土曜日に走るのは我が日課である。仕事とは言え、大切な日課を済ませずにお酒を飲むことにうしろめたさを覚える。

 

昨日のデジャブのように、なんだか酔いきれぬ気分。気分転換で、借りてきた『七人の侍』の後半を見る。

 

面白かったけど、なんだかかえって気分が落ち込んだ。

 

――

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日曜日。

 

この日記をコメダ珈琲で記す。

ぼんやりした日記を書いてしまいました(笑)

 

でも、こんな日記も悪くない(悪いという人は明日雨になるでしょう)。