「まくら」営業、はじめました。

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黒部は挑戦の地(黒部名水マラソン前半)

 

 

 

バカ、なめるんじゃない。黒部じゃケガはないって。ミスしたら死ぬしかないんだ。気を緩めるんじゃないぞ。

黒部の太陽』より

 

 

 なぜ人間は、多くの犠牲を払いながらも自然への戦いをつづけるのだろう。たとえば藤平たち隧道行工事技術者にしてみれば、水力用隧道をひらき、交通用隧道を貫通させることは、人間社会の進歩のためだという答えが出てくるが、藤平にとって、そうした理屈はそらぞらしい。かれには、おさえがたい隧道貫通の単純な欲望があるだけである。発破をかけて掘りすすみ、そして貫通させる、そこにかれの喜びがあるだけなのだ。自然の力は、容赦なく多くの犠牲を強いる。が、その力が大きければ大きいほど、かれの欲望もふくれ上がり、貫通の歓喜も深い。

吉村昭『高熱隧道』より

 

 

 

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先週某日。

 

出張で広島に行っていたのだが、そのビジネスホテルで『黒部の太陽』を鑑賞する。

いつもならば出張中は酒を飲んだり、会社PCを開いて仕事をしたりするのだが、今回は酒も炭酸ジュースにし、仕事もほどほどに終わらせ、上映会を楽しんだ。

 

 

黒部の太陽 [通常版] [DVD]

黒部の太陽 [通常版] [DVD]

 

石原裕次郎三船敏郎。日本を代表する二人の映画スターが、限りない映画への夢を抱いて実現させた世紀のプロジェクト。
昭和30年代、不可能と呼ばれた黒部ダム建設に、文字通り命を賭けた男たちのドラマを、映画演劇人総出演の豪華キャストにより、
かつてないスケールの空前のスペクタクル映画。

 

 上映時間が3時間越えの超大作だった。途中眠くなったりもしたが、その日のうちに最後まで見終えることができた。三船敏郎石原裕次郎の夢の共演が見られる傑作作品である。CG無しにこの作品を作り上げるのはどれだけ大変だったことだろう?(というか、本当に死者を出してないんだよね……?)

 

ところで、この映画を出張中に観た理由、それは、6月4日に控えた

 

黒部名水マラソン

 

 に参加するからであった。

 

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黒部に行くのは初めてであった(というか、富山県自体、初めて足を踏み入れた)。そこで、予習目的で「黒部の太陽」を観たというわけである。

 

これでばっちり、黒部への興味関心を持つことができました。

  

 

――

6月3日。(大会前日)

 

昼前、前日受付のために、会場の宇奈月温泉に向かう。マラソンは前日受付が多いし、そもそもフルマラソンの開始が9:00なので、前日から現地に入っていないと参加が難しいのである。余談ながら、マラソン前日のホテルは確保が非常に難しく、価格も暴騰する傾向にある。私も泊まる場所がなかなか見つからずに苦労した。

 

 

さて、大阪から向かう場合、以下のルートとなる。

 

新大阪→→(サンダーバード号)→→金沢駅→→(北越新幹線)→→黒部宇奈月温泉駅→→(バス)→→会場

 

 

移動中、一冊の本を読む。それは、以下の本。

 

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高熱隧道 (新潮文庫)

高熱隧道 (新潮文庫)

 

 黒部第三発電所――昭和11年8月着工、昭和15年11月完工。人間の侵入を拒み続けた嶮岨な峡谷の、岩盤最高温度165度という高熱地帯に、隧道(トンネル)を掘鑿する難工事であった。犠牲者は300余名を数えた。トンネル貫通への情熱にとり憑かれた男たちの執念と、予測もつかぬ大自然の猛威とが対決する異様な時空を、綿密な取材と調査で再現して、極限状況における人間の姿を描破した記録文学

 

黒部の予習第2弾である。最初に取り扱った『黒部の太陽』が黒部第四発電所(クロヨンダム)ならば、この小説の題材はその前の黒部第三発電所である。

 

 小説ながら、正直『黒部の太陽』よりも恐ろしく、迫真に感じた。トンネル貫通を阻む高熱地獄や泡雪崩など、圧倒的な自然の脅威に立ち向かう人間が勇ましい。

……しかしそれ以上に、閉塞的な環境で、トンネル貫通を何が何でも行わなければならない状況に追い込まれることで、主人公や周囲の人間の人格がみるみる変わる過程があまりにも不気味であった。あくまで資料を基に描かれた作品ではあるが、このような出来事が現実にこの国で起こっていたことを思うと、背筋が寒くなる。

 

個人的感想だが、フィリップ・ジンバルドー『ルシファー・エフェクト ふつうの人が悪魔に変わるとき』(スタンフォード監獄実験のレポート)や、スタンレーミルグラムの『服従の心理』(アイヒマン実験のレポート)を読んだ時のような、人間の脆さを感じた。

 

読了後は決して爽やかな気分ではないものの、「いい本を読んだなあ」と思えた。吉村氏の小説は初めてだったが、ほかの作品も読んでみたいなあ。マラソンを通じて、良い出会いができたと感じました。

 

 

……あ、そうそう、マラソンの日記でしたね(笑)

 

 

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15時頃、会場に到着。会場に着くと、一気に感情が高ぶりますね。

そして、この日楽しみにしていたのが、高橋尚子氏のトークショーである。

 

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会場は人でいっぱいでした。Qちゃん、きれいだなあと思ってみていたが、実は私よりも20歳近く離れていることを後で知る。走っている人って、本当に若いですね。

 

話し方や動作をみていると、すっかりテレビの人って雰囲気だなあ、って感じました。Qちゃんもどんどん変わっていくんだなあーなんて、何様目線で思ったのでありました。

 

――

会場を後にし、宿泊施設に向かう。

 

宿泊先のロビーでのんびりしていると、近くに座っていた人に話しかけられる。

 

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年齢30代前半くらいのイケメン男子。まあ、高橋尚子に限らず、ランナーって年齢がわかりずらい人が多いので、あくまで推定ですが。

 

男性「あなたも明日参加するんですか?」

 

「あ、はい。そうなんです(笑)」

 

男性「フルですか?」

 

「そうですね(へらへら)」

 

男性「そうですか!お互い頑張りましょう」

 

 

その後、お互いのことについてさっくりと話す。話していると、私とは違い、本格的なランナーであることがすぐにわかる。

 

 

男性「僕、マラソン始める前は10㎏以上太っていて、これはまずいなあって思って。それで始めたんです。そこからはまっちゃって、今では毎日走ってますね。今だと180日連続ランニング中です(笑)」

 

「すごい記録ですね。ぼくなんか、平日に1回、土曜日に1回走るのがせいぜいなので……全然練習量が違いますね(笑)意識が足りないですね」

 

男性「いや、そんなことはないですよ。走る頻度は人それぞれでいいと思いますから。ただ、私は少し病的になってきている気がしますね(苦笑)ところで、今回の目標タイムはどんな感じですか?」

 

「うーん、前回が4時間15分くらいだったので、できればサブ4(4時間以内)でしょうか?(笑)まあ、練習量があれなので……ひとまず、完走できることを第一に頑張ります(笑)男性さんはどうですか?」

 

男性「そうですね~いやあ、今回はタイムを少しでも伸ばしたいと思ってるんですが、今回のコースはちょっときつそうですね(苦笑)」

 

「そうですね。結構高低差がはっきりしていましたからね」

 

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黒部名水カーターマラソンHPより

 

 男性「今のところ、ベストタイムが3時間5分くらいなので、5分縮めてサブ3ってところですかね。これまで、毎回5分ずつ縮めることに成功しているから、なんとか……って感じですね(笑)」

 

「は、はあはははは。頑張ってください(次元が違う)」

 

 

 

こういう徹底したランナーって、本当にマラソンへの向き合い方がすごいと思いました。ブログを拝見しても、こんな感じの人がわんさかいてびっくりさせられますが、直接会話をしてみると、その意識の高さにもっとびっくりしましたね(笑)

 

 

なんというか、彼らは、おさえがたい走ることへの単純な欲望があるだけである。発破をかけて走りすすみ、そしてゴールにたどり着く、そこにかれの喜びがあるだけなのだ。フルマラソンのコースは自然の産物であり、容赦なく苦労を強いる。が、その力が大きければ大きいほど、かれの欲望もふくれ上がり、ゴールの歓喜も深い。

 

という感じですかね。まあ、あたしゃここまでの境地にはまだまだ程遠いですがね。ただ、こんだけ取り組み方に差があると、かえってすがすがしい気持ちで応援したくなりました(笑)

 

 

本番に向けて夜は22時くらいには眠った。

 

 

 

当日は後半に続く。(興味があったらよんでね)