「余裕」を作れるのは、「余裕」がある時だけらしい
人がスラックをつくらないのは、いまやらなくてはならないことに集中し、将来起こりうるあらゆることを十分に考えないからだ。いま現在ははっきりと間近に迫っているが、将来の不測の事態は緊急度が低く、想像するのが難しい。漠然とした将来を目の前にある現在と突きあわせると、スラックはぜいたくに感じられる。結局のところ、そんなものを取っておけるほど、自分は十分に持っているとは思っていない。――(中略)――欠乏に直面したとき、スラックは必要不可欠である。それなのに、人はたいていそのための計画を怠る。もちろんその理由はもっぱら、欠乏のせいで計画するのが難しくなることにある。
『SCARCITY:Why Having Too Little Means So Much(いつも「時間がない」あなたに)』 センディル・ムッライナタン&エルダー・シャフィール
どんな困難な状況にあっても、解決策は必ずある。救いのない運命というものはない。災難に合わせて、どこか一方の扉を開けて、救いの道を残している。
セルバンデス
2017年、とし初めのこと。
「勤労休暇――ですか?」
上司「うん」
「……すみません、勤労休暇ってなんでしたっけ?」
上司「知らんの?会社に勤めて★年目とか◆年目とかの社員に与えられる『休む権利』だよ。――そうか、お前は今年が初めてか。まあ、平たく言うと、会社からの命令で、『連続して最低でも6日間は休みを取れ』ってこと。連続だからな」
「それは土日を含めてですか?」
上司「どっちでもいいよ。含めても良いし、含めないで6連休以上にしてもいい。まあ、どんな形であれ、今年のどこかのタイミングで最低6日間連続で休めばいい」
「土日含めなかったら?何日休めるんだろう……?」
上司「そうやなあ。まあ、土日を含めなかったら、土・日・月・火……・土・日で……9連休か。まてよ、祝日とかのタイミングに合わせたらもっと休めるな。ゴールデンウィークや年末年始にくっつけて2週間くらい休んだらどうだ?」
「なるほど……でもさすがにそれはできませんね。いろんな意味で怖くてできないです」
上司「……それやる人は、相当勇気あるだろうなあ。俺も怖くてできんわ……でも、別にいいよ?無理に休む必要はないけど、せっかく会社が休ませてやるって言ってるんだから、有意義に休んだらいいよ。ただ、1月中に休む時期を決めろよ」
「わかりました、ありがとうございます――」
勤労休暇、実にありがたい仕組みである。さて、年初の段階では、別に「この時期に休みたい!」というのが全く思いつかなかった。ただなんとなく、その時の私は、
多分、10月って精神的にも疲れてるんじゃないかしら。
というよくわからない経験則から、10月にこの勤労休暇を入れていたのだった。
そして、その勤労休暇ウィークが今週なのであった。
――さて、6日間、だれの目を気にすることもなく休めるとしたら、あなただったら何をするだろう?
・旅行(あてもなく彷徨いたい)
・実家帰省(親孝行できる時間もそう長くないしね)
・お腹がはちきれるほど食べ歩き(バイキングだろバイキング!)
・大量のDVD鑑賞(海外ドラマだな。ポップコーン買いだめしないと)
・本の虫(久しぶりに山本周五郎?司馬遼太郎?それとも星新一全作品読破?)
・お菓子作り(すっかりさぼってんがな)
・愛人との蜜な生活(沖縄だろ?愛媛だろ?金沢だろ?あと北海道とフランスとウクライナとインドネシアと――)
ちょっと考えただけでもこんなことを思いつく。どれも楽しそうだし、せっかくなので思いっきり振り切ってエンジョイしたいところ。
……だが、今回の連休は、これら以上にやりたいことがあった。というか、どうしてもやらなければならないことがあった。
それは、
資格試験のためのお勉強
である。
イエーイ!!ビバがりべーん!!
……いや、違うんです。ま、まあ最後までお付き合いを。
本年、とある試験を受けることになっていた。試験を申し込んだのは約半年前。まあ、コツコツ勉強すれば恐れるに足らないのだが、日頃の仕事を言い訳に、資格の勉強をすっかり怠っていた。そして、気づけば受験日まで20日を切っているというわけである。
ちなみにこの資格、平均的な資格習得のための標準学習期間は、各種参考サイトによれば
4-6ヶ月間
とのこと。繰り返すが、私に残された時間は約20日間。そして、今までほとんど手付かず。……まあ、客観的に見てかなり厳しいでしょうな。ちょっとなめすぎである。
ま、せっかくの連休なんだから、資格なんてまた次に受ければいいじゃん。
と思う人もいるだろう。私自身、その衝動に駆られた。しかし、自分で受験すると決めたのに、それを捨てて享楽的に過ごすことなど、私にはできない。
人間たる者、自分への約束をやぶる者がもっともくだらぬ。
と私の中の吉田松陰先生も言っている。
……まあ、正確に言うと資格を受けるために払った教材費が惜しいのである。(受験代を含めると、10万円はゆうに超えている。ぼったくりか!)
おまけに、会社の人事評価の際に提出しなければならない
目標設定
にも、この資格取得を掲げていたのである。そのため、個人的には何としても合格しなければならないわけである。そんな大事な試験なのに、直前まで何もやらないとは……。わが師である吉田松陰先生は、自分の約束を破るものをくだらないというが、同じように、やらなければならないことを直前までやらない人間も、同等にくだらないと思うわけである。
……さて、すでにどう頑張っても及第点すら絶望そうだが――このタイミングで6日間の連休である。前述のとおり、個人的にはどう頑張っても付け焼き刃で立ち向かえるような資格ではないと感じている。……しかし、しかし、である。私の目の前にあるのは、
6連休
である。社会人にとって、この6連休という言葉の重みは計り知れない。大学生の夏休み2か月に匹敵するほど、いやもしくはそれ以上の価値ではないだろうか?それくらい、社会人にとって6連休とは、実に圧倒的な時間である。(学生諸君、今はわからないだろうがいずれわかるぞ、いずれ――)
……神は私に最後のチャンスを与えたのだろうか?それとも、悪魔が追い詰められた人間をもてあそんでいるだけなのだろうか?
いずれにしろ、試験を無視して遊びに興じられるほど肝の据わった人間ではない。ダメで元々、仮に落ちたときにも
やるだけのことはやった
と会社に報告するためにも、今回の6連休は資格勉強に費やすことにしたのであった。
さて、土曜日より、毎日家にこもって勉強をつづけた。外出したと言ったら、食糧の買い足しで近所のライフに行ったときか、気分転換に軽くランニングした時くらい(あ、あと選挙投票にいった)。……もう、軟禁状態である。
まあ、営業職なので、平日には取引先から電話がかかってくる。あとは、彼女からかかってくる電話にはちょこちょこ出ていたか。でも、普段営業でいろんな人と関わらなければならないせいか、土日平日含めて6日間、部屋にヒトリこもりっきりというのは実に珍しい過ごし方であった。
不思議なもので、外部との接触が薄れると、
もしかして、この世界には自分しかいないんじゃないか?
って思ってしまった。マンガ家や小説家がそんなSFを書きたくなるのもうなづける……と勝手に解釈を巡らせたくなるほどに。いずれにしろ、こんな過ごし方、多分、そんな長い期間は耐えられそうにない。たぶん、いまの私には6日くらいがギリギリですね(笑)まあ、学生時代は毎日こんな生活だったんですが(あの時は勉強ではなかったが)。
とりあえず、最終日である木曜日に到達。おかげさまで、6日間ずっと勉強に勉強を重ねることができた。そして、
このペースで死に物狂いで頑張れば、もしかして……いけるかもかもかもか
と思えるくらいには到達できました。この調子で、明日からは働きながら勉強を頑張ろう!
と、ここまで書いたのだが、実は今週、こいつが待っている。
待ってました!ご存知、静岡は大井川で開催の
しまだ大井川マラソン
でござんす。来週の日曜日は静岡で走るぜよ!嗚呼、楽しみだなあ。
……え、勉強?まあ、移動中とかはちゃんと勉強しますって(えへらえへら)。
(……あれ?なんか右上に)
(しまだ大井川マラソンHPより)
「……え、台風来てんの?」
テレビとかネットとかもあんまり気にしてなかったから、台風が来ていることに気づかなかった。マラソンにうつつを抜かしていることに、神が怒り狂ったのだろうか!?
なんてね_φ(・_・
…さて、明日からはまたサラリーマンの生活に戻ろう。