地震につき、控えめに
月曜日。
朝、6時過ぎに起床。
(走るにしては遅い時間だな。5時に起きて走る予定だったのだが・・・・・・。)
貴重な朝の時間である。ウダウダしている暇はない。気を取り直し、シャワーを浴び、着替えを済ませる。朝食に牛乳を一気飲みし、7時過ぎに家を出る。
ーー
電車に乗っている最中、ぼんやりと、昨日自分が書いた日記を読み返す。
(150km、6月走りきれるかな・・・・・・、まあ、今朝は走れなかったけど、夜に走ればいいか。今日は午前中にアポイントがあるだけだし。早く帰って走ろうっと)
10分ちょいで会社最寄り駅に到着。そこから10分程度歩く。
エレベーターに乗り、8時前にオフィスに到着。オフィスには先輩社員が数名いる程度。元気のない挨拶を済ませたあと、PCを開く。
(さて、メールチェックをした後は、午前中の商談の準備をさっさとすませーー)
そう思った、その時である。
7時58分。
ぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ
(・・・・・・・!!)
揺れを強く感じる。ただ、それ以上に、携帯電話から鳴り響く「緊急地震警報」のけたたましい警音の方に驚いた。
揺れは比較的すぐに収まった。まわりを見渡すと、慌てふためいている人もいれば、私のようにどうしたらいいかわからずに辺りを見渡している人もいれば、何事もなかったかのようにPCに向き直す人もいる。
地震発生からすぐに、上司から安否メールが入った。上司は電車に乗っていたようだが、地震の影響で電車が止まり、身動きが取れない状況らしかった。上司以外の同部署の方々とも連絡がつき、どなたも会社に行けない状況であった。どうやら、私が所属する部署の同僚は、私以外、誰も会社に来れないようであった。
すぐに、館内アナウンスが流れ、津波の心配がないことを伝えた。そして、数分前に私が乗っていたエレベーターが運転停止したことを告げる。もしもエレベーターに乗っていたら・・・・・・ちょっと怖くなる。
インターネットのニュースをチェックする前に、他部署の方の
震度6弱 大阪直下らしいよ。やばくない?
という声が聞こえる。どうやら、ことは思いのほか重大のようだった。午前中に入っていたアポイントはキャンセルを入れた(といっても、取引先も地震の影響で出社できていなかったので、何も問題はなかったが)。
ーー
その後、ツレや両親、ずいぶん疎遠だった友人、会社の取引先からメールが届く。私もサラリーマンらしく、大阪の取引先に安否の確認連絡をする。
始業後すぐに、我が部署の部長からも連絡が入る。無理せずに早めに帰宅せよ、との指示。ただ、地震の影響に伴う情報共有や、配送トラブルの対応もあったため、すぐに帰宅することはできなかった(だって、代わりにやってくれる同僚が会社に誰も来ていなかったんだもん)。
16時過ぎ、一通り地震の影響に伴う業務を済ませ、帰宅することにした。
ーー
(最寄駅の張り紙)
帰りの電車も動いていなかったので、仕方なく、会社から家まで歩いて帰宅。同じように歩いて帰宅する人たちの行列により、大渋滞に巻き込まれた。私のようなサラリーマンならカバン一つでいいが、観光目的の人や出張関連の人たちは、道の悪い中、重いキャリーバッグを引きずらなければならず、一層大変そうだった。海外から来た人たちは、もっともっと大変なことだろう。
ーー
1時間半程度歩き、家に到着。マンションのエレベーターも使えなかったので、階段で部屋までたどり着く。
(部屋の中、大丈夫かな・・・・・・)
おそるおそる、家のドアを開ける。
ドアを開けると、特段変わった様子はない。電気は無事に通っている。ガスコンロをひねると、無事に点火する。蛇口をひねると、変わらずに水は流れる。ホッと胸をなでおろす。
・・・・・・しかし、視界にあるものが。
(ハンバーグ・・・・・・?)
少し前に買ったハンバーグ。冷蔵庫に入れていたハンバーグである。だが、なぜか床に落ちている。
・・・・・・あ!ハンバーーグ!!
私はすぐに冷蔵庫が開きっぱなしになっているのを確認。中のものを確認すると、全て生暖かくなっていた。この時期の冷蔵庫内の生暖かさは不快以外の何物でもない。
(まあ、この程度で済んだのならかわいいものか・・・・・・)。
さて、本丸の部屋の扉を開けるとーー
(我がナルシスト鏡)
本棚がひっくり返り、本が床一面に散らばる。また、ナルシスト鏡(エクササイズ用に昔買った高さ2m近くの鏡)が綺麗に倒れている。幸い、割れてはいなかったけど、ナルシスト鏡の圧力でずっと愛用していたゴミ箱がぐちゃぐちゃに圧壊されていた。あと、ゴミ箱の中身が散乱していた。
(この程度なら、かわいいものよ)
部屋の片付けをさっさとすませ、テレビをつける。
人が亡くなったことを知る。
避難所に避難している人たちが映る。
交通インフラが乱れ、先ほどの私のように歩いて移動している人たちが映る。
明日からは雨の影響でより一層の警戒が必要だという。
地震は今回だけにとどまらず、ここ一週間は余震や同程度規模の地震が起こる可能性があるらしい。
テレビをつけながらラジオを聴く。大阪府民の個人的な体験報告が流れる。阪神大震災を思い出すという人がとても多いことを知る。
そして、パーソナリティの
「今日はみなさん疲れております。これからも何が起こるかわかりません。まだまだ気を緩めずに、まず今日は体をゆっくり休めてください」
という言葉が響く。今日だけで終わるなんて思うなよ、というように聞こえてしまい、ちょっと怖くなった。でも、たしかに、今日1日でなんだか疲れた。
ーー
2011年3月11日、私は被災地にいた。まだ大学生だった。
食事もままならず、テレビも見ることができず、水も電気もガスも携帯電話も使えなかった。友達もいなかったので、まさにひとりぼっちだった。
あの時に比べれば、今回の地震はまだ耐えられる(もちろん、まだ避難所で大変な思いをしている人がたくさんいるし、何より人が亡くなっているので、いい加減なことは書けない。あくまで私の個人的な体験の範囲での感覚ある)。でも、今日は今日でなんだかとても疲れた。一体、この状況はいつまで続くんだろうか。
しばらくは、何が起こるかわからないから、少し控えめにいきます。いろいろとね。