再開
じっとしていれば、つまずく心配はない。足を速めれば速めるほど、つまずく可能性は大きくなるが、どこかにたどり着く可能性も大きくなる。
チャールズ・ケタリング
今週より、ランニングを再開。
2017年に入り、すっかりランニングから離れていた。寒いのが苦手なので走る気力がわかなかったし、お菓子作りに夢中になりすぎていたからね。
ただ、1月も中旬に入り、そろそろ走りたくなってきた。カラダがなまり切らぬうちに、ランニングを習慣づけたいのである。
ところで、2016年は、ランニング習慣を身に付けるために、以下のアプリを使用していた。
まあ、一言でいうと、恋愛系ランニングアプリ。走った距離や時間に応じて、ポイントがたまる。そのポイントが一定程度までたまると、恋愛ストーリーを見ることができる、というものである。
別にストーリーが面白いわけでもなかったのだが、ポイントをためるという点に意外とハマってしまう。また、走った距離に応じて「〇km通過!」という応援もしてくれたり、ちょっとペースが落ちると「さぼってるんじゃないわよ」などと叱咤激励もしてくれる。上の画像を見て侮ることなかれ、意外とバカにならないアプリである。
気づけばランニングが習慣化し、生まれて初めてフルマラソンを走り切ることもできました。すべてこのアプリのおかげです!(ステマステマ)
……ただ、ポイントをため切ってすべてのストーリーが展開し終わってからというもの、正直このアプリにも飽きていた。ある意味で、ランニングを習慣づけるという役目をしっかり全うしてくれたともいえるが。
2016年は大変お世話になったが、2017年は別のツールを通じてランニング習慣に磨きをかけたいと思っていた。
そう思っていた昨年末、現在お付き合いしている彼女より、以下のものをクリスマスプレゼントでもらった。
憧れのランニングウォッチである。GPSもついており、走った距離やタイムを記録してくれる代物である。
前からとても欲しかったのだが、
「まだ自分には早いかな」
と、買うことをためらっていたのである。だからこそ、もらった時は、たいそう喜んだものである。
2017年より、これを使って自分のランニング記録を作って行きたい。
――
今週の火曜日から、久しぶりにランニングを再開。
時計「ピピ」
「おおっ!」
時計を使うと、1㎞毎にタイムが記録される。また、時計を見ればすぐに何km走ったのかがわかる。自分のペースが定量的に把握できるというのは何とも面白いものだ。
これならば、2017年もランニングを楽しく続けられるのではないかしら、そんなことを思うのでした。
それにしても、今はとても走りやすい時代なんだと思う。時計にしろ、ランニングウエアにしろ、ランニングシューズにしろ、素人でも本格的にランニングを楽しむツールがしっかり整っている。日本ランニング人口1000万人というのもうなずける。
そう思うと、一昔前のランニング道具がそこまで整っていなかった中で走っていた人たちって、すごいよなあ。尊敬します。
――
久しぶりに走ったせいか、10㎞走っただけでカラダがひどく筋肉痛。でも、この筋肉痛も心地よく感じる。今年もランニング頑張っていこう。目指せサブ4!(まだ早いか。)
あと、何日続くかしら?
誰でもある時期、情熱的になることはある。ある人は30分間熱中できるし、ある人は30日間続く。しかし人生の成功者は30年間情熱が続く人である。
エドワード・B・バトラー
1月に入り、お菓子とパン作りに一層の熱が入っている(まあ、素人レベルなのだが)。
朝起きてパンをこね、合間にカスタードクリームを作り、パイ生地を練る、そんな休日を繰り返す。
一日があっという間に過ぎていく。時間を忘れられるような趣味があるということは、いいことなんだと思う。大げさではなく、お菓子とパンを以外のことは考えられなくなるくらいに夢中になっている。
――でも、あれほど大切にしていた、日記すら放り出してしまっている。
書きたいことが何も思い浮かばない。日記を書く時間があるならば、少しでもパン作りの技術習得に当てたいところ。少しでも製菓材料の知識を身に付けたいところ。
日記を書いてパンがふっくらするの?日記を書いてフォンダンに詳しくなるの?……そんなわけがない。
今は、あたまがシュークリーム。
――
土曜日の夜。
最後に粉砂糖をふりかけ、シュークリームとエクレアの完成。ちゃんと空洞ができたのでよかった。この日も朝からお菓子作りをはじめ、手際の悪さも手伝い、終わったころには真っ暗になる。
洗い物を片付け、晩御飯の買い物に出かける。
――
買い物を終え、家路を辿る。その途中、
(今日は久しぶりに日記を書きたいな)
と思う。
せっかくなので、帰り道10分、日記で書くことを考えてみるのも悪くない。
……
……
……何にも思い浮かばない。思い入れが何もない出来事が思い浮かんでは消える。
――世の中に対しての興味関心が、随分と薄まってしまったようだ。
お菓子作りやパン作りに没頭していることはいいことだと思うし、とても充実した時間の過ごし方だと思う。ただ、その代りに何か大切なことを犠牲にしてしまっているような気がした。
これって…本当に幸せなこと……?
――
虚無感のまま、自宅に到着。
(あ、そういえば、久しくポストの中を見ていなかったなあ)
気づけば、今週は一度もポストを見ていなかった。家に着いたらすぐにお菓子作りに向かっていたから。
エレベーターに乗る前に、1階にあるポストに立ち寄る。そして、回転式のロックを解除し、中を開ける。
中には、本年度のタウンページと、光熱費の請求書と、広告チラシが大量に入っていた。
広告チラシは、いつもならば1階にあるゴミ箱にすべて捨ててしまう。だが、なんとなく、この時は部屋まで持ち帰る。
――
家に帰り、着替えてから広告チラシを見る。読んではゴミ箱の中に詰め込んだ。だが、1つだけ目に留まる。
「……これは――」
こんな一枚を発見。
「美人多数、ブス2人。家いくよくるよ。美人多数、ブス2人。家いくよくるよ。ブス2人――」
……ふ
なんだかとても癒された。なんてユニークな文言だろう。
……でも、これを見てマッサージを頼む人っているのかしら……?今日は久しぶりに、こんなどうでもいいことをゆっくり考えてみたいものだ。
ありがとう、チラシ。
そして、そのチラシをごみ箱に捨てた。
――さて、明日は何を作ろう?
ライバルは2016年
すなわち外部からの秩序に屈すること(すくなくとも精神的なことがらにおいて)は、自由人に値いしないことのように思われた。しかし、人間の自然的傾向を克服し、個人の内部の一面、すなわちかれの自然を、他の面、すなわちかれの理性、意志、良心などによって決定的に支配することが、自由の本質であると考えられていた。
ところがよく分析してみると、良心は、外的権威と同じような冷酷な支配者であること、また人間の良心によってあたえられる秩序の内容は、けっきょく個人的な自我の要求によってよりも、倫理的規範の威厳をよそおった社会的要求によって左右されやすいものであるということが明らかになっている。
良心の支配は、外的権威のそれよりももっと冷酷である。なぜならもし個人がその秩序をかれ自身のものであると感じているとき、どうしてかれは自分自身に反逆することができるだろうか。
エーリッヒ・フロム『自由からの逃走』
新年、あけましておめでとうございます。待ちに待った2017年、ついにスタートしましたね。2018年に向けて、いいスタートを切っていきましょう(とかいう奴がいるんですよ~)。
さて、正月になると、どうも目標を立てたくなる。1月の初めにしっかりとした目標を立てることで、1年間を自堕落に過ごすことなく、有意義に、かつ自分を律しながら過ごせるというものである。
さて、どんな目標を立てようか――?思いつくママ記してみよう。
・フルマラソンにもっと出る!
・もっと美しい体になる!
・お菓子・パンづくりの技術を磨く!
・英語や趣味の勉強の時間を増やす!
こんな感じか。……うーん、でも、もうちょっと具体的に考えてみたい。たとえば、定量的に。
定量的:対象の状態を連続する数値の変化に着目してとらえること
コトバンクより
まあ、要するに数字として設定するということでしょうか?例えばさっき挙げたものならば
・フルマラソンでいいタイムを出す!
→サブ4を達成する
・もっと美しい体になる!
→ウエストを〇〇㎝まで下げる
→上腕二頭筋を〇〇cmまで上げる
・お菓子・パンづくりの技術を磨く!
→作れるレシピをA個まで増やす
・英語や趣味の勉強の時間を増やす!
→一日〇時間勉強する
みたいな感じ。しかし、こういう目標を立てて、うまくいったためしがない。結局のところ、上のような目標の立て方は、自分の実態に即していない絵に描いた餅なのかもしれない。 できれば、より実態に即したデータを分析し、自分に合った目標を設定したい。
そこで、とあるエクセルファイルを開く。
これは、私が以下の項目について毎日つけている記録である。
・運動
・飲酒日
・お菓子・パン作り
・勉強(お菓子、パン、英語、PC等、何でもよい)
この記録を始めたのは、社会人1年目の冬のことである。始めたきっかけはあんまり覚えていない。たしか、筋トレにはまっている先輩社員と筋トレ談義で盛り上がった際、「記録をつけることの重要性」を指摘されたからだったと思う。先輩のアドバイスに従い、運動記録をエクセルファイルでまとめることにした、ような。
その後、運動だけでなく、飲酒チェックや勉強チェックなども項目に加わっていった、というわけである。
この記録を何かに役立たせようとは思ったこともなかった。だが、せっかくなのでこの記録をもとに2016年の自分を振り返ってみよう。そこから、自分が立てるべき目標が見つかるかもしれない。個人情報なのでちょっと恥ずかしいが――。
【分析~運動編~】
まずは自分の運動状況について振り返ってみよう。
①月別運動した日
うーん、こうやってみると、春から秋に活動的になり、冬は運動量が著しく下がっているのがわかる。ちなみに、3月は大阪に転勤となり、精神的にも時間的にも運動する余裕を持つことができなかった(言い訳)。
合計運動日数 172日
月平均運動日数 14.3日
うーん、おおよそ2日に1回運動している人間みたいですね。個人的には頑張ったと思っているんですが、どうでしょう?
②月別運動強度(2016年)
次は運動強度について分析してみよう。これは、
ちょっと待て、運動日数だけカウントしても意味ないだろ。運動量もちゃんとみないと、月別の活動度合は測れないではないか!
というご指摘をする方に応えたものである(私がそういうやつ)。
どういうことかというと、①の運動日数のカウントだけでは、5㎞走った日と20㎞走った日が同じ「運動した日数1」としてとらえられるだけということである。これでは運動した当人は納得がいかないものである。
そこで、運動した日数だけでなく、月別の運動強度も分析してみることにした。私が毎日つけている記録では、運動内容も記している。そこで、私がしている運動内容を以下の強度で設定してみることにした。
(あくまで私の主観による設定です)
この基準をもとに、月別運動強度を算出すると、以下の通り。
さっきの運動日数と合わせると以下のようになる。
ふむ、こうやって見てみると、春夏は運動日数が多いけど、運動強度は大して高くなかったことがわかる。逆に、秋は運動日数は少ないけど、運動強度は高くなっている。
これは、春夏は運動強度の低い筋トレや10㎞未満のランニングが中心だったのに対し、秋は大阪マラソンに向けて日常的に10~20㎞走るなど運動強度を上げていったからと思われる。
うん、興味深い(私だけだろうね笑)
【分析~お勉強編~】
さて、次はお勉強について分析してみよう。
2016年は、主に以下の勉強をしていた。
・趣味(お菓子、パン、お茶、チョコレート)
・PC
・英語
とりあえず勉強内容は問わずに、これらの勉強をした日を月別にまとめたのが以下の図である。
合計勉強日数 115日
平均月勉強日数 9.6日
なるほど、3日に1日勉強していたというわけです。ただ、月によって結構ムラッ気がありますね(笑)ちなみに、春~夏の勉強は、主に資格取得の勉強でした。冬はお菓子とパンの勉強ですね。
ちょっと待て、勉強日数だけカウントしても意味ないだろ。勉強時間もちゃんとみないと、月別の勉強度合は測れないではないか!
という方があるかもしれない。
これについての返答だが、恥ずかしい話、勉強時間まで記録してません(笑)記録をつけていたのは勉強習慣を身に着けるためであり、とりあえず机に向かったならOKという、実に甘い目的だったのです(ahaha)。……これは来年の改善点にしますか。
②菓子・パン作り日数
趣味である菓子・パン作りはどうだっただろう?
合計菓子・パン作り日数 48日
平均月菓子・パン作り日数 4.0日
菓子・パンを実際に作った日は、どうやらかなりムラがあるのがわかります。夏から秋は大阪マラソンに向けて運動重視になっていたので大幅に下がってます。あと、夏は、オーブンの熱が嫌だったり、バターが調理中にすぐ溶けてストレスがたまるので、なんとなくお菓子作りは避けていたような(苦笑)
……ちなみに秋冬に向けて増えているのは、大阪マラソンから解放されたからですね。単純な子です。
【分析~飲酒編~】
最後に、飲酒しなかった日をまとめて見よう。(「飲酒した日」じゃなく、「飲酒しなかった日」ね)
合計飲酒しなかった日数 104日
平均月飲酒しなかった日数 8.7日
おおよそ3~4日に1回飲まなかったわけですね。 月ごとのムラはあまりないですが、3月と12月がひどいひどい(笑)12月は忘年会も多かったからなあ。
でも、トータル的に飲みすぎ!!!もっと若者らしく、お酒を控えないと……。
……あ、どうでもいいけど
飲酒しなかった日数だけカウントしても意味ないだろ。飲酒量もちゃんとみないと、月別の飲酒度合は測れないではないか!
とか言わないでよ?飲み会とかの飲酒量まで計算すると酒がまずくなる。あくまで個人的な価値観だが、飲酒したら1ミリだろうが1合だろうが1升だろうが同じ「飲酒」だと思ってるでやんす。
余談だが、3月は運動・勉強・クッキング・飲酒すべてにおいて最悪である。3月の私がいかに余裕がなかったのかが如実に表れていて面白いですね。3月の転勤、当時はわからなかったけど、結構ダメージ大きかったのかなあ?
さて、2016年分析が終わったところで、2017年の目標設定をしてみたい。
ちょっと考えてみたけど――まあ、
2016年の自分を少し超えてみせる!
これでいいや。2016年もそこそこ頑張ったし、去年の自分を少しでも超えられたら「よくやった!」と言ってやりたい。
……え?全然具体的じゃないって?まあ、細かいことは気・に・し・な・い・の!チュッ(おえっ)
というわけで、こんな表を作ってみた。
2016年は2017年よりもすべてにおいて少しだけ数字を増やせるように頑張ります。ちなみに、
2017年の目標値=2016年の各値×1.2
です。(1.2の根拠はありましぇん。なんとなく「ちょっと頑張った」って感じ。会社の売上高だったら大躍進でしょうが)
この目標は絶対に達成したいですね。かなりあいまいな目標ですけども(笑)
……ただ、「毎日の記録」に根付いていることから自分に与える影響は強そうな気がしてます。
よーし、ガルバンゾー!!!マメマメ
いつまでもあると思うな親と親
12月30日。明朝。
「さて、そろそろ行こうか――」
昨日の夜のうちに、部屋の掃除を済ませ、冷蔵庫の中にある賞味期限切れの食材に別れを告げ、仕事着をクリーニングに出し、たまったごみを収集場に捨てた。
家を出る前に電気の消し忘れをチェックし、鍵を閉める。
――
伊丹空港に出発1時間前に到着。
空港内はものすごい人の量であった。 手荷物カウンター、保安検査場は大蛇の列が出来上がっていた。それでも、皆がどこか浮足立っているように見える。おそらく自分もその1人だろう。
飛行機にはあまり慣れていなかったので、空港職員の人や後ろに並んでいた人には少しご迷惑をおかけしてしまった。田舎者なのでどうかお許しください……。
さあ、出発お新香!
ーー
約1時間半のフライトで無事到着。
私の故郷は、言わずと知れた某雪国。年末年始は雪であふれかえっている。
雪の影響に伴い、天候によっては伊丹空港に引き返す可能性がございます
という、条件付きのフライトであった。飛行機に乗った後もそわそわしていたが、何とか無事に到着することができた(わーいわーい)。
――
故郷に唯一ある空港には、すでに母が車で迎えに来てくれていた。あ、私の実家は、空港から車で約1時間ほどの辺境の地なのである。
母「飛行機は無事に飛んでた?」
「いやあ、危なかったよ。もしかしたら大阪に引き返していた可能性もあったみたいだから」
母「へえ、そうなんだ。でも、これくらいの雪、普通でしょ?」
「コッチの人からすりゃそうだろうけどね(笑)大阪にいたら雪そのものが珍しいらしいから。こんなに雪がずっと降り続いているのを見たら、異国にきた気分だと思うよ(たぶん)」
母「ふ~ん。そんなもんかね」
――あ、ちなみに、実際の会話は上記ような標準語ではない。文章には表現できないが、母の言葉ひとつひとつには、もっときついナマリが入っている。でも、それを書くと我が母が野蛮人なのではないかと勘違いされる恐れがあるので、あえて標準語に直して記している点、ご留意いただきたい(まあどうでもいいか)。
母の車。母が運転し、私は母が握ったおにぎりを食べる。
「いやあ、でも、やっぱり今日の雪はすごくない?」
母「――そうだねえ、今日の天気予報では晴れるって言っていたのにねえ」
「空が暗いよ」
母「高速も50㎞規制がかかってる」
「今、何kmで走ってんの?ちなみに俺は、今年、速度違反で捕まったから」
母「あ、そうなんだ。じゃあ、ゴールド免許じゃなくなるんだね」
「おふくろはどうなの?まだゴールド?」
母「いや……去年だっけ?高速じゃないけど、一時停止のところで停止が甘いってことで捕まったから。急に警察が出てきてびっくりしたよ。まあ、これも運命だね」
「ふーん。初めて聞いた」
母「スピード違反で捕まるのはお父さんの方だよ。運転がかなり粗いからね。生真面目で神経質な癖に、免許更新を忘れるわ、違反を繰り返すわ――どっか抜けてんのよね」
「まあ、オヤジはそんな感じだね」
母「高速って言ったら、おまえ、この高速道路で逆走車と衝突してしまった事故があったの知ってる?」
「え、そうなの?知らん」
母「結構、ニュースになったんだよ。ドライバーは高齢者だったみたいだけど、数人亡くなったんだから」
「知らなかった……」
母「確かにこの道路、結構わかりづらいからねえ」
「高齢者ドライバーの問題は田舎の方が深刻っていうのは、こういうことなのかしらねえ。おふくろも気をつけなよ」
母「あたしゃ大丈夫よ。まだ50代だもの。心配なのはお父さんだね」
「まったく。オヤジももうすぐ70だからなあ」
どうでもよいが、母と父はひとまわり違う年の差結婚なのである。自分も結婚を意識する年齢になり、12歳の年の差を乗り越えた両親の凄みを実感する。
母「――あ、そういえば、お父さん、骨折したよ」
「ふーん。……は!?」
「唐突になんだって!?親父が骨折!?」
母「骨折。酔っぱらって滑って転んで。肋骨3本」
「は!?」
母「町内の飲み会で大分酔っぱらっていたみたいだね。ちょうど先々週くらいだね」
「じゃあ、雪道で滑って転んだってこと?」
母「いや、家の中」
「……もう、意味が分かんない」
母「本当だよ。馬鹿なんだから」
「いや、そうじゃなくて、なんで家で転ぶの?なんで家で転んで骨折するの?」
母「知らないよ。滑ってストーブか何かに肋骨ぶつけたみたいだよ。病院に行くのが怖いからしばらく隠していたみたいなんだけど、ずっと痛そうにするわ発熱するわで大変な感じだったから、無理やり病院に連れていったわけ。そしたら、肋骨3本折れてんの(笑)」
「え、全治どれくらい?」
母「3か月」
「3か月!?肋骨って治るのにそんなにかかんの?」
母「いや、肋骨3本だから3か月。1本につき1か月くらいじゃない?」
「そんなアホな計算あるか。親父は大丈夫なの?その、心の方は……。この年齢だとこういうのが精神的にも来そうな気がするじゃん」
母「まあ、ねえ。ちょっと落ち込んでいるけど」
「そうか……じゃあ、横腹はたいて励ましてやるか」
母「やめんかい」
ーー
実家に到着。
父「おお、よく帰ってきたな。お疲れお疲れ」
「お疲れお疲れじゃないよ。なに骨折してんだよ!」
父「ああ……まあねえ。しょうがないだろ」
あ、ちなみに親父もナマリがひどいので、標準語に修正している。ご留意を(どうでもいいか)。
父「別に生活に支障はないよ。バンドで固定しているから痛みは感じないし。ただ、重いモノを持ったり、雪かきしたり、車の運転をしたり、軽い運動も何もせずに安静にするだけだから」
「思いっきり支障があるだろがい。全治8か月だろ?年末に何やってんだか」
父「そんなにかかるわけないだろうが!たぶん1月中には治ると思う」
母「先週、病院行ってレントゲン撮ったら、何も変わってなかったんだけどね。それに、少し前まではトイレもひとりで行けずに、着替えも一人でできずにいたんだから。少し早い老人介護だよ」
父「……やかましいってんだよ。それより、背中痒いからかいてくれ」
母「ん」
父「あ、もういい。かきすぎかきすぎ。もういいって」
母「ん?」
父「もういいっての(笑)」
「……(何をいちゃついてんだ)」
父が思ったよりも落ち込んでなくてよかった。それよりも、母は負担が増えたのにもかかわらず、いつも以上に元気そう。母の偉大さを感じるのであった。
――
(双子ちゃん)
晩御飯にすき焼きを食べた。卵黄が2つ出てくるちょっとした奇跡に遭遇できました。
父「いやあ、食べた食べた。大分酔っぱらったなあ」
「 うむ。また酔っぱらって骨折するなよ」
父「ん?なんで知ってんだ!?」
母「あ、もう焼き芋には言っちゃったから」
父「なんで言うんだ!」
「ん?どういうこと?なんかまずいの?」
母「あはは。この人、酔っぱらって骨折したっていうのが恥ずかしいから、親戚にも『大掃除しているときに、はしごから落ちてしまった』ってことにしてんの」
父「そりゃそうだろうが」
「なんという情けない……」
父「なんで言うんだよ。バカ。ああ、もう」
母「あははは」
父「あ、そろそろ風呂入るか。おい、頼む」
母「ん」
と、父は服を脱ぎ、身に着けていた肋骨バンドを母が外し始める。なるほど、ここにきて夫婦共同作業が増えている模様である。両方とも楽しそう。
(……夫婦35年の凄みである)
なんて横目に思うのであった。
以上、くだらぬ記録でした。……ちゃんと親孝行しないとなあ。
あ、皆様も、年末年始に気を緩めすぎてお怪我なさらぬよう、ご注意を。
では、2017年もよろしくお願いいたします。
クリスマスの終わり
もう帰ろう もう帰ってしまおう 寝静まった 街を抜けて
人を怨むも恥ずかしく 人褒めるも恥ずかしく
なんのために 憎むのか なんの怨みで 憎むのか
もう眠ろう もう眠ってしまおう
臥待月の出るまでは
吉田拓郎『祭りのあと』
12月25日。夜。
私「じゃあ、ここで」
彼女「うん。また年末にね」
関西空港で彼女と別れる。どうでもよいが、我々は、いわゆる遠距離恋愛というやつである。
彼女は飛行機に乗り、自らが住む場所へと戻った。
一方の私は、そのまま空港直通の高速バスで、大阪駅へと引き返した。
満員の高速バスに乗りながら、今の自分の気持ちを表現してみる。――いろいろな気持ちが表れた。
(彼女とのクリスマスはとかくに金がかかるなあ……。食事代、買い物代、プレゼント代……これが毎回だとつらいなあ。まあ、クリスマスだから毎回にはならないんだろうけどね)
(彼女にとって、本当に楽しいクリスマスになったかしら?少しノープランすぎたかなあ……。)
(世間一般的なカップルは、クリスマスはどのように過ごすんだろう?自分たちは、一般的なものからどれくらい離れているんだろう?)
(……学生時代の独りぼっちのクリスマスも悪くはなかったなあ。一人でやけ酒してケーキをむさぼりたいなあ――まあ、今の自分がそういうことを思うのは学生時代の自分に対して失礼ってもんだよなあ。……でも、なんだかんだ言って、独りのクリスマスもいいんだよなあ――)
(……明日からシゴトかあ。今日は早く寝ないとなあ)
……なんとも、とりとめもない心境。
――
家に到着。
シャワーを浴びてから、残っていたチョコレートタルトを食べる。自作なので、タルト生地がもろい。また、ガナッシュ部分の乳化も失敗してしまった。……まあ、食べられなくはないけど、プロのものとは程遠い。
「……」
大口で平らげる。3口程度で終了。彼女といるときはちびちび食べていたけど、一人で食べるとあっけないものである。いっそホールごと食べてしまいたい心境である。でも、食べると明日一日が台無しになってしまうのでやめておく。ホールごと食べるような無頼漢でもなくなったようだ(もともと違うケド)。
「クリスマスねえ……」
……クリスマスってこんなに現実的だったかな?もっとわくわくするもので、気持ち高ぶって夜眠れなくて、なんだかわからないけどロマンチックで、心の底からさみしいもので、さみしいなりに心は踊っていて――。
「……あ」
と、己の心の変化に、幾分の客観性を意識しながら、解釈を加えることにした。
きっと、今年のクリスマスが終わったんですね。
……何の中身ものない日記。でも、今の自分の心境は、こんな中身のない状態なんです。(いつも中身がないとかいうやつは首を絞める)
たまにはプロントで観察日記でも
おお神よ、かしこき才を我らに与えたまえ 人を見るがごとくにおのれ自らを顧みる目を.
え~、お忙しい中御足を運びいただき、ありがたく御礼申し上げます。
昨今、「モノを売るのではなく、〇〇を売れ」という言葉をよく耳にするような気がしますな。
「モノを売るのではなく、コトを売れ」
「モノを売るのではなく、ストーリーを売れ」
「モノを売るのではなく、カチを売れ」
「モノを売るのではなく、ココロを売れ」
「モノを売るのではなく、カラダを売れ」
なんて言葉ですね。とりわけ我々の営業部署では
「モノを売るのではなく、ジブンを売れ」
という言葉を好んで使う傾向にあるように思います。
――何と言いますか、とても深いようで、結局のところ、何を言いたいのか今一つピンときません。まあ、なんとなく言いたいことはわかりますがねえ……(笑)
少し似たような話として、
同じ言葉でも、話し手によってはまるで違うようにとらえられる
ということがございます。落語なんてその最たる例でしょうが――もう少し身近な例でこのことを考えてみましょうか。
例えば、「モノを売るのではなく、ジブンを売れ」という言葉を、尊敬すべきAさんが発したら、
(Aさんは深いことを言うなあ!)
と思えるもんです。……一方で、あまり尊敬できないBさんが同じ言葉を発したら
(薄っぺらな言葉を得意げに言ってら笑)
(まあ、一番できていないあんたが言うなよ笑)
ととらえられてしまうから気を付けなくてはなりません。なんというか、
言葉だけを磨くのではなく、言葉を発する当人も立派でなければ意味がない
ということでしょうか?
――これって、「物を売るのではなく、○○を売れ」が言いたいことに近いような気がしますなあ。(違うかな?)
――
土曜日。
この日の私は、彼女であるサトイモさんに渡すためのプレゼントを選んでいた。ネックレスを買うことを決め、さまざまなジュエリー店をのぞいたのだが――。
(商品の違いなんて正直よくわからんよ)
と思うに至る。
――そこで、考え方を変えてお店をのぞいてみることにした。ずばり、ネックレスの見るのではなく、そのネックレスを売る販売員をじっくり見てみることにしたのである。言い換えると、
最もネックレスを魅力的に感じさせた店員から購入する
ということである。
……彼女のことを考えるなら、販売員じゃなく商品をちゃんと選びなよ
という失望をされる人もあるかもしれない。(そう思う気持ちもわかるのですが……。)
ただ、お客が販売員の接客によって購入意欲に違いが出ることは、ある程度ご理解いただけるはずである。特に、違いがよくわからないような場合は顕著であろう(私の場合、PC、携帯、ファッション等は、店員からのアドバイスによって選んでいるように思う)。
もちろん、高いお金払って買うプレゼントなので、いい加減な気持ちでは選定しないことは強調しておく。ある程度彼女と自分の好みを考慮しながら、販売員の能力にも着目したわけである。営業職なんだし、たまにはこういう観察をしてもいいでしょ?(誰に聞いてんだ)
ちなみに、当日はノートを取りながら販売員の話をきいた。まあ、製品の説明をメモしてたわけではなく、販売員の接客に関してメモを取っていたのであるが(キモイとか言わないでね)
なお、販売員とのやり取りに際し、販売員の能力を以下5つのポイントで評価した。あ、すべて私の独断と偏見で設けた基準である。
①質問能力(質問の数、質問の質)
②雰囲気(積極性、口調、笑顔等)
③サービス精神(己の体にネックレスを当てるかどうか、名刺に記す製品情報の質、カメラを取りたいという問いかけに対する対応等)
④対話意識(客情報を得ようとするか、一方的に話しすぎてないか等)
⑤製品説明能力(製品をうまく説明できているか、押しのポイントなどをスマートに言えるか、わかりやすく話すか等)
合計、5人の販売員と会話を行い、各項目について5段階評価してみた(5の方がレベルが高い)。
さて、観察結果は以下の通り。
どうでもよいが、観察の詳細な内容は以下の通り。くどいが、すべて私の独断と偏見による調査である点、ご留意願いたい。
【客として提供する個人情報】
・当日、私は以下の情報のみ、販売員に提供することとした。個人的には、客の質を見極める重要な要素であると思ったからである。
①「少なくとも本日中に決めたいと思っている」(需要が高い客であるということ)
②「彼女の年齢は20代後半」
③「〇万円前後のものを探している」(客のレベル)
・ なお、基本的には自分でこの情報を開示することはない。販売員が聞いてくれば素直に答える。もしも聞いてこない場合は、自分から情報提供をする。この情報を与えるに際し、情報の引き出し方に注目したい。どのような話の流れで、どのような話し方でこの情報を得ようとするか?
こういった要素を聴かずに接客するのは、ある意味で営業トークとして未熟ということになるだろう。もちろん、必ずしも聞いてくるのがよい販売員というわけではない。引き出し方がストレートすぎたり、ぶしつけだったならばまずいだろう。
【必ず聞く質問】
これは、販売員の客の問いかけに対する回答能力を問うものである。営業たるもの、お客様からの質問にスマートに答えることで信頼を得られる場合も多いだろう。もちろん、ただテキトーで責任感のない答え方をしていてはマイナスである。わからないものはしっかりとわからないと伝えることも、時として重要であろう。
というわけで、以下の質問を仕向けた。
①「見せていただいたネックレスをカメラで撮影してもよいか?」
②「これらの製品は、どの年齢層の人がつけることが多いか?」
③「彼女に商品を紹介する際、『彼女が商品の価値をすぐに理解できるような押しのアピールポイント』を教えてほしい」
【その他着目点】
・口調(積極⇔慎重)
・笑顔の数
・問いかけの数(お客情報を聞き出そうとするか、製品説明にばかりするか)
・カラダの張り具合(ネックレスを己のどこにあてるか?首?手?)
・せかし具合(せかしすぎるのも、まったくせかさないのもダメ。程よく焦らせること)
・選択肢の数(ネックレスをいくつ提示してくるか?多すぎても少なすぎても×)
・名刺サービス(製品情報をどの程度記憶に残す努力をしてくれるか)
・店の価格帯(お客の質は店のレベルによって映り方が変わってくるからね)
しかしまあ、改めてこういう目で販売員さんを見てみると、実にいろいろなものが見えてきて、己の営業の勉強にもなった(気がする)。
――特に、ダイヤモンド社の販売員さんは、恐ろしいほどの接客能力であった。嫌みのない質問、会話を意識した商品説明、質問に対する見事な回答――どれをとっても、そして総合的に見ても、ほかのお店の販売員に圧倒的な差をつけて「買いたい気持ち」にさせられた。
さて、この流れからすれば、私はダイヤモンド社の販売員を通じてネックレスを購入したということになるはずである。
……が、実際に私がネックレスを購入したのは、2位の販売員がいるガーネット社でした。
なぜだか想像つきますでしょうか?
商品がガーネット社の方がよかったから?
――いいえ、冒頭申し上げた通り、商品の違いは私にはよくわかりません。基本、どの商品を選んでも後悔はなかったのです。
ガーネット社の方が安かったから?
――いいえ、今回はガーネット社もダイヤモンド社も価格は全く同じでした。
ガーネット社の店員が好みだったから?
――いや、そんな理由で選ばんでしょ。彼女へのプレゼントなんだから(たぶん)
ガーネット社は最初に訪れた店だから、1番印象に残っていたから?
――いや、一番最初が有利って言うのはあんまりピンときませんね。M-1とか見てると最初の漫才師のこと忘れてしまうし。
答えは、
ダイヤモンド社の販売員さんは、私がノートにメモしたり、ほかの店舗をうろうろしているうちに、選択肢に挙げていた製品を全部売ってしまったから
でした~。
……なんのこっちゃ。
クリスマスが今年もやってくる
クリスマスという名前自体に、不思議な力があるようだ。
チャールズ・ディケンズ
クリスマスの雰囲気をいくらか瓶に詰めておき、毎月ひとつずつ開けられたらいいのに。
ハーラン・ミラー
土曜日。昼過ぎ。
地下鉄に乗り、大阪にある日本有数の某百貨店を訪れる。
ぎゅうぎゅう状態の店内は、赤と緑と白の装飾で彩られ、クリスマスを想起する音楽が続けて流れる。売る側も客側も皆、クリスマスムードに包まれていた。
個人的には、クリスマス当日よりも、クリスマス1か月前~イヴ前のほうが浮足立った感じがして好きである。(この感じ、共感いただけると思っているのですが、いかがでしょう? )
百貨店に着くと、誘われるようにデパ地下食品コーナーへ。そして、クリスマス限定のデザートを見て回る。
「あら、このケーキ、イチゴたっぷりでなんてかわいらしいの。……あ、このシュトーレン、バターたっぷりでいい香り。ーーあ、このカンノーロ、不思議な形してるわねええ」
興奮が止まらない。お菓子作りは初心者だが、それだけに職人たちの技術にほれぼれする。やっぱりデザートの世界は奥が深い。あ、食べるのはあんまり好きではないんだけどね(苦笑)
ーー
ふいに時計を見る。すでに1時間以上も食品コーナーにいることに気が付く。
(……いかんいかん、こんなことしている場合ではない)
別に、暇を持て余してスイーツ鑑賞をしに来たわけではない。限られた時間の中、重要なミッションを遂行するために百貨店にやってきたのである。
重要なミッション、それは、
お付き合いしている女性に送るプレゼント探し
である。(焼いもの彼女なので、サトイモさんとでもしましょうか)
今年はクリスマスが連休となっているので、3日間、一緒に過ごす予定となっている。どのタイミングで渡すかは不明だが、とりあえずプレゼントはお互いに用意する流れとなっていた。
……まあ、正直、プレゼント探しって、非常に面倒くさい。
「こっちもいらないから、そっちにも渡さなくていい?」
と言いたいところである。だがまあ、そういうわけにもいくまい。
特に今年は、仕事を言い訳にサトイモさんへの誕生日プレゼントも渡していなかったのだ。せめて年内最後の女性限定トキメキイベントであるクリスマスにプレゼントを送らないと、本当に愛想をつかされてしまうだろう。こんな私と付き合ってくれているという点において、奇跡的な女性なのである。付き合いも長いが、ちゃんと関係維持・向上に努める必要がある。
ちなみに、プレゼント選定に際し、サトイモさんにほしいものをそれとなく聞いてみたのだが、彼女いわく
「この年代(20代後半を指している?)の女性ならばみんなほしいもの!」
とのこと。……う~ん、わからん。
わからなかったので、会社の同期(彼女以外で唯一、稀に連絡する女性)にメールで尋ねる。
う~ん、バックか財布かアクセサリーじゃない?そんなことより仕事つらくて死にたいよ~
……何の役にも立たない回答である(面白かったので書いてみる)。
でもまあ、20代ならそうなんだよなあ~って感じである。ともかく、何のプランも思いつかないまま、とりあえず百貨店に向かい、アクセサリー系をメインに探すことにしたのであった。 あんまり考えてもわからない世界だし、無駄に引き伸ばしてもしょうがないので、最低でもこの日のうちにプレゼント決めてしまうこと、を第1目標としていた。
――
同じような製品が並ぶ各フロアでは、財布の紐が緩くなったお客をとらえるために激戦が繰り広げる。特に、クリスマスプレゼントの対象になりやすいジュエリーショップは一入であろう。普段は通ってもほとんど話しかけないくせに、各店員も私のようなイモ人間にも積極的に声をかけてくる。
一定の距離を保ちながら、 いろいろとジュエリーを見てみるが……。
(わからん……なぜこのようなものに大枚をはたくのか?)
ジュエリーの価値をほとんど理解できない。とりあえず、値段と品物をある程度決めないと、頭がパンクする。
候補として挙がったのが以下の通り。
・指輪
・ネックレス
・ピアス
指輪は気持ち的に少し重いし、ピアスは昨年度に送っているのでかぶってしまう。
――となると
ガーネット社店員「ネックレスですね。承知いたしました。どのようなタイプをご検討で?」
「ええ、う~ん……悩ましいですね(苦笑)」
ガーネット社店員「いろいろなタイプがございますが――クリスマスプレゼントでしょうか?」
「そうですね。一応、彼女に、なんですけど」
ガーネット社店員「まあ、素敵!それじゃあ、クリスマスに彼女様にプレゼントされるんですね。素敵な夜景なども計画されているんでしょうか?」
「いいえ、そこまでは考えてないですね(笑)というか、なにもまだ考えてないですね。あははは」
ガーネット社店員「いいえ、プレゼントを考えてくれるって言うだけで素晴らしい彼氏様ですわ。ところで、ご予算はどの程度でご検討でしょうか?」
「ええ、まあ、これくらいですね(指で示す)」
ガーネット社店員「なるほどなるほど。よろしければいくつか選定させていただきますね」
「はあ、どうも」
というわけで、いろいろ商品を案内される。
ガーネット社店員「こちら、立体的なハートのモチーフが可愛らしい印象となります。当店限定モデルとなります。大切なときにお使いいただきたいネックレスでございます」
「はあ」
ガーネット社店員「こちら、シンプルに1石あしらわれたダイヤモンドと優雅なホワイトゴールドのコントラストが美しいネックレスでございます。いつまでもご愛用いただけるデザインです」
「ふむふむ(高いのと安いのとの違いが分かんね)」
ガーネット社店員「ちょっと私の首の方にあててみますね。こんな感じになります。ご覧ください。いかがでしょうか?」
「いいですね(体張ってるなあ。本当にいいと思います)」
ガーネット社店員「ありがとうございます。彼女様だともっと素敵に映ることでしょう(満面の笑み)」
「(ふふふ)――あ、ちなみに、ネックレスの写真を撮らせていただいてもよろしいですか?いくつか店舗を回りたいんですが、回っているとご紹介いただいた製品を忘れてしまうので」
ガーネット社店員「写真、ですか?もちろん大丈夫です。よろしければ商品の品番号と特徴を記したカードを手書きでお渡しさせていただきますわ」
「あ、それはありがたいです。ありがとうございます」
店員さんは慣れた様子で自身の名刺を取り出す。そして、裏に商品の品番とネックレスの絵を描きはじめる。
ガーネット社店員「はい、こちら失礼いたします」
「ありがとうございます。ところで、在庫はどの程度ありますか?」
ガーネット社店員「在庫ですか?少々お待ちください。ーーこちらの製品は在庫が残り1つとなりますね。お求めの際はお早めに。ほかの製品は各3つほどございますので問題ないですが……時期が時期ですので」
「わかりました。それではどうも失礼します」
ガーネット社店員 「またのお越しをお待ちしております」
というわけで、そのお店を離れる。
ーー
その後、近くにあるお店を数店舗訪れ、大して違いの分からないネックレスを数十個見て回った。
……気づけば約4時間ネックレス探しに時間を費やしていた。そして、精も根も尽き果てながら、ようやくネックレスを購入したのであった。渡すべきプレゼントを手にしたときは、得も言われぬ安堵感であった。
ちなみに、訪れた各お店の店員さんに
「ネックレスなんて、一つあれば十分ですよね(笑)」
と聞くと、皆が口をそろえて
店員一同「いいえ、女性はアクセサリーをいくつも欲しいものですわ。もちろん、一つのものを大切にされる方もいらっしゃいますけど、基本的に複数あったほうが嬉しいと思いますわ。そこは男性と少し違うところですよね」
と諭された。店員は女性の立場として言ったのか、それとも売り文句で言ったのか――いまだ腑に落ちぬ回答なのであった。