「子育ての知恵」は誰でも言えるが、誰かに当てはまるものではない
子育ての本を読む。
今回はこの本。
「育児は母の手で」「三つ子の魂百まで」「「ママがいい」に決まってる」……。根強くまかり通る育児神話や「通説」。それに翻弄される多くの保護者たち、とりわけ母親たち。実際のところ、子どもは何を訴えているのか、様々な仕草はどのような発達の表れなのか? 発達心理学の長年の研究成果をもとに、確かな育児の知識を平易に伝える一冊。
高橋恵子『子育ての知恵 幼児のための心理学』表紙
発達心理学の研究成果をもとに、主に子育ての相談件数が多い「1歳半から就学するまでの幼児期」のテーマを中心にまとめられている。ちまたにあふれる「子育て体験本」・「(怪しげな識者の)ハウツー本」とは違い、学術研究をベースにしているため、内容は至ってかため。
各章は以下の通り。
第一章 心の発達 三つ子の魂百までか
第二章 母親の神話 「愛着」の心理学
第三章 幼児の人間関係 子どもからの報告
第四章 わたしが主人公 自己主張と自制心
第五章 子どもと社会 あなたの子どもは、あなたの子どもではありません
第二章・第三章は特に興味深かった。
「発達心理学」
人間の発達に伴う心理という、なんとも実験しづらいテーマを研究対象としている。そのため、どうしても小規模で制約の多い研究にならざるをえないのだと感じる。当然、一般化した結論を出すことは非常に難しいのだろう。
そんな発達心理学の研究成果をベースにしながら書かれている本なので、何かありがたい子育て術を教えてくれるわけではない(していたら眉唾)。そのため、身近な育児のダイレクトな解決策を期待すると、少し肩すかしを食らうだろう。
でも、個人的には、自分の頭の大半を占める「育児」という営みが更に興味深く感じられるようになった。
興味を持った点をメモ的に下記に残す。
・第一章
ブロンフェンブレンナーの生態学的モデルを元に、子どもを取り巻く環境を客観視してみてもよいかもしれない。子どものために親が果たせる役割というのは、数ある外的環境要因の1つなのかも知れない。(以下のブログが更に詳細にまとめてくれている)
・第二章
母性愛は18世紀半ば以降の社会によって作られたものであるが、根拠のある物ではないようだ。江上園子が提唱する「母性愛信奉尺度」を元にした実験では、母親は世間が期待するような強い母性愛はもっていなかった。ただし、母性愛を神聖視する発想は依然として根強かった。そのギャップがなぜ引き起こされるのか?それがどのように育児に影響するのか?はよく考えなければならない。(子育ては母親がやるもの、という強いプレッシャーから、母性愛を信じるしか心の逃げ道がなかった・・・?)
・第三章
著者が発案した子どもの人間関係「愛情のネットワーク」を可視化するためのツール「PART(絵画愛情の関係検査)」の手法紹介と、使用した際の研究成果。おそらく、この本のハイライトではなかろうか。
PARTは下記で試すことができる。大体、3歳6ヶ月頃から問題なく使用できるよう。
息子タロウがもう少し大きくなったら是非試してみたい。
・第四章
マシュマロテスト二関する最新研究にも触れている。私自身、マシュマロテストに対して少しうさんくささを感じていたが、「欲望を抑えられる子がすぐれている」というよりも、「恵まれた環境のおかげですぐれて育った子は、欲望を抑えられる」っていう方が納得がいくよね・・・やっぱり・・・。
うーん、子育てって、奥深い!