ギザ十な日々

2人の息子と妻との日々を書いています。

動物たちの子育て事情が面白い。 『正解は一つじゃない 子育てする動物たち』

 

 

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 新型コロナの影響で家にいることも多いので、読書をする時間が増えた。そして、最近は子育てに関する本をよく読んでいる。

 

・・・でもまあ、子育て本って、正直、母親に向けられたような内容が多い。男性向けに書かれた本もあったので何冊か読んでみたが、

 

「子育てに非積極的な日本の男性の皆さん、もっと子育てに参加しましょう!」

「子育て中の母親って、こんなに大変なんだよ!」

「子育てに参加しないと、待っているのは熟年離婚だよ!!」

 

という論調が多いので、読んでいてしんどくなる。いや、そういう本はそういう本で大事なのはわかりますよ?私もしっかり勉強させて頂きました。でも、そこからもう一歩踏み込んで、もっと子育てに対して好奇心が湧くような内容の本が欲しかったのである。脅迫よりも理屈で動く男たちの気持ちを、もっと出版業界は理解してほしいものである(何様)。

 

 

そんな中で見つけたのがこの本。子育てに対して新しい視点をくれる実に興味深い本であった。

 

 

 

動物の子育ては多様であり、完全に育児をしないという戦略をとるものもあれば、ひとりで子どもを育て、時には自分を犠牲にしてまで子どもを守るものもあります。同じ種だからといって、皆が同じことするわけでもなく、種内でも多様性があります。性別によって子育てへのかかわり方が違うものがあれば、同じ性別の個体でもその時々によって異なるやり方をするものもあります。そういった子育てを見てみると、ヒトと似ていると思うこともあれば、信じられない!と思うこともあるでしょう。こういった子育ての多様性は、進化的な意味がある、つまり、他の動物がいたり自分の遺伝子を子世代に残すかという課題を解決しようとした結果ととらえることができます。

はじめに より

 

様々な種類の動物の子育て事情をまとめた本。全部で22章となっており、各章を若手の研究者が担当しており、自身が研究している動物の子育てについて記している。

 

子育てのハウツー本ではないので、すぐに動物たちの子育てが私の子育てに役立つわけでは無い。それでも、子育てに対する好奇心は強く刺激される。そして、子育てという興味深い活動に自ら向き合いたいと思いたくなる本。研究者が書いた本だが、文章はとてもやわらかく、一般向け、特に子育て中の人たちに向けて書いているように感じられた。

 

 

他の動物たちからみたら、ヒトの子育てって、どう見えているんだろう?「なんでオスがそんなに子育てに参加するんだ?」とか「なんでオスは子どもを殺さないんだ?メスが子どもに夢中で交尾しなくなるだろ」とか「そもそも、なんで自分の子どもって分かるんだ?」とか「頼りないオスだな。もっと子育てに参加しろよ」とか「自分で育てるなんてバカだな。俺なら他の動物に任せるよ」とか・・・いろいろ思うのかしらね。

 

そんな好奇心くすぐられた一冊、理屈っぽいお父さんにお勧め。

 

 

 

 

メモとして、 印象的に残った動物の子育てを下記にまとめておく。

 

○マウス

親マウスは子を口でくわえて運ぶ『回収行動』を行うが、その際、子マウスは体を丸めたコンパクトな姿勢で大人しくなる『輸送反応』を示す。これは、猫やライオン、リスなど、多くの哺乳類の子どもで見られる反応。輸送反応では、心拍数の低下、泣き止み、おとなしくなるという3つの要素が同時に起こる。

輸送時間が長い=子どもにとっても親にとっても緊急事態にさらされている可能性が高い。この時にもしも輸送反応が適切に起こらないと、子どもは親から捨てられてしまうかもしれない。

輸送反応は人間の子どもでも同様に示される。それは、哺乳類の原始的な反応ということか?

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参考)筆者論文を取りあつかった記事。

 

○ハト

・父親も母乳(正確に言うと「そのう乳」と呼ばれるミルク状の物質)で子育てに参加している。穀物を主食とするため、そのま口移ししてもヒナが摂取することができない。ペンギンやフラミンゴなどの鳥類も同様のそのう乳を与えることができる。

 

・ハトの夫は偉いとか言っている場合では無い。人間には粉ミルクという叡智があるのだ。そのう乳が作れなくたって、育児に参加する方法はいくらでもある。

 

○クマ

クマは冬眠時期に出産を行う。妊娠期間は2ヶ月と非常に短い。実際の交尾は夏の時期に行うが、人間のようにすぐに妊娠開始(胚の着床)とならない。それは、胚の発育が途中で停止するから。実際に着床し妊娠できるのは、秋に栄養を十分にため込むことができたメスだけ。おそらくそれは、冬眠時期に栄養不十分だと、母親と子供の両方の命が危険になるから?

なお、秋に栄養をため込むことに専念するため、雄とも交尾をしない。一方の雄は、子供を邪魔に思うのか、故意に行う。子供の死因の85%はオスの子殺しである。

 

母親と子供の関係は、子供の性別によって変わってくる。子供がオスの場合、子供は生まれ育った場所から大きく離れ、新たな場所で生活を始める。子供がメスの場合、母親の直ぐそばで生活することがあることが知られている。理由は分からないけど、人間も同じ?

 

○オオカミ

オオカミとイエイヌの子育ての違い。オオカミは父性が強いが、イエイヌは父性が存在しない。進化の過程で失われる父性。基本的に核家族となるオオカミの子育てに対する父親の姿は、何か共感を感じる。