自由からの迷走
人は自由を得たのち、いくらかの歳月を経過しないと、自由を用いる方法を知らないものだ。
トーマス・マコーレー
2月4日。昼過ぎ。
試験官「はい、以上になります。皆様お疲れ様でした」
(……嗚呼、終わっちゃった)
――
帰り道。会場から駅までの間、ツレに電話。
「あ、もしもし」
ツレ「あ、もしもし。試験、どうだった?」
「うん、かくかくしかじかって感じ」
ツレ「あ、そう……まあお疲れ様。今日はゆっくり休みなさいよ。これからどうするの?」
「……うーん、とりあえず、家に帰る」
ツレ「どこかに寄らないの?」
「別に寄りたいところもないしね。今は何にも考えたくない。――じゃあ、電車乗ります」
本日はとある試験があった。結果は正直よくわからない。ただ通知を待つのみである。
――
帰りの電車、悶々と時間を過ごす。昂揚感があるのに、なんだか気持ちが晴れないというか、そわそわするというか、じっとしていられないというか、だれかと話したいけどやっぱり話したくないというか、……。
(――なんか、今、無性に叫びたい)
思春期のころって、毎日こんな気分だったのだろう。多分だけど。
ーー
店員「あ、すみませ~ん。今フリータイムで全部屋使用中でして~」
「……あ、そうですか。わかりました」
店員「またのお越し、おまちしておりまーす!」
「ええ(カラオケに行こうなんて思うこと、もうしばらくないからな!)」
カラオケでこのモヤモヤ感を発散!――いいアイデアだと思ったのだが。
――
帰り道、あるカフェに入る。
少し遅めの昼ごはんということで、ホットドッグとコーヒーを注文。ホットドッグが運ばれるまでコーヒーを飲みながら一服。
(せっかくだし、ゆっくりと日記でも書こうかな。文章にすれば気分が晴れるかもしれない)
日記を書こうと思ったその時、
店員「いらっしゃいませ~」
い「あ、空いてる空いてる!」
ろ「ラッキーっすね!全員入れる入れる」
は「注文まとめて頼んじゃって~」
に「人数分って、みんなブレンドコーヒーでいいの~?」
ほ「いや、あたしミルクティーにして~」
へ「私抹茶ラテね」
と「俺、なんか食いたいなあ」
ち「俺、ホットドッグ食いてえ」
り「私パスタ食っちゃおうかな」
ぬ「ねえ、ここwifi使える?」
る「おれタバコ吸ってくる」
を「あ、おれもおれも」
がやがやと店内に入ってくる若者たち。私が入ったときにはほとんど客がいなかったのに、周りを見渡すとすっかり満席状態。私の席の周りを若者が取り囲む。
(……)
店員「ホットドッグ、お待たせいたしました」
(……)
私はホットドッグを早々に平らげ、コーヒーを一気に飲み干す。そして、店を出る。
店が悪いんじゃない。若者たちが悪いわけでもない……んだけどね。
――
家までの帰り道、何か気分が晴れそうなものを探す。
(マンガ喫茶って気分でもないし、パチンコは面白さがわからないし、昼から酒を飲むほど大人じゃないし、かといってまたカフェに入るのはバカバカしいし。そもそも、さっきホットドッグ食べたから何も食べたくないし。どこか遠くに行く気力もないし、本を読む気にもなれないし、DVD借りに行くのもめんどくさいし、女の子の店は……聖人なのでよくわかんないし)
と、歩いていると
「うわ!……びっくりした……」
鳩のナキガラを見つける。鳩はよく見かけるが、ナキガラ姿は初めて見た。
(……これってなんだか、ついてないなあ。……やっぱり帰ろ)
心の中で手を合わせ、結局、帰宅。
――
試験前まで使用していた資料などを片付け、ぼんやりとテレビを観る。時間はみるみる過ぎていく。
(――あ、クリーニング取りに行くの忘れてた)
近所のクリーニング店に行ってワイシャツを引き取りに行く。その帰り道、ふと、
(……日記、やっぱり書こうかあ)
と再び思う。
――
晩御飯を食べながらこの日記を記す。晩御飯はビールとスナック菓子と冷や奴(1丁)。あとはメインデッシュで鶏のモモ肉ステーキ(塩コショウを振ってオーブンに放り込んだだけ)。
……地味すぎる自由の使い方。でも、試験が終わった後のビールはこれまた美味いから、まあ、いいのかな……あぁ。
以上、文章の通り、気の抜けた状態です。イベント終了後にパーッとできる人がうらやましいなあ。私もできれば欲望を全開にしてみたいものである。まあ、全開にしたらしばらく解放しっぱなしになっちゃうから、ある意味、今の状態くらいの方がいいのかもしれませんが。
また頑張れる何かを探さないと……あ、英語以外がいいかなあ(笑)