ギザ十な日々

2人の息子と妻との日々を書いています。

先輩社員の声を聴け

 

 

 

 

 
 
 
先日。会社にて。
 
 
 
先輩A「お、プリンちゃん、HPに載ってまっせ」
 
先輩B「え?プリンちゃん?どれどれ。あ、本当だ。全然知らなかったよ。『先輩社員の声』かあ」
 
先輩A「まあ、ウチの部署やったらプリンちゃんでしょうねえ。ホンマは男ばっかりの部署なんやけど、学生がみはったら多少は華やかな部署に見えるでしょうし」
 
先輩B「まあ、そうだろうなあ」
 
 
先輩たちの会話に聞き耳をたてる。会話には交じらず、メールを打つふりをしながら、私もHPをのぞく。見てみると、上述の会話の通り、ウチの部署代表は一番の若手社員であるプリンちゃんであった。インタビュー形式で原稿用紙6〜7枚程度でまとめられている。
 
 
入社したきっかけ、仕事内容、仕事を通じて心に残った出来事、学生へのメッセージ、1日のスケジュール (ついでにインタビュー中や仕事中の写真)などなど
 
 
基本的に学生向けの内容なので、キラキラした内容が目立つ。
 
(多分、そういう風に誘導尋問されたか、インタビューをもとにライター担当が色をつけたのだろう。)
 
 
軽く嘲笑。暇つぶしに(業務時間中に)ほかの「先輩社員の声」もみている。むしろプリンちゃんが控えめに感じるくらい、どの先輩たちもキラキラ感とデキル感を文章で表現していていた。それをみて、こちらが少し恥ずかしくなってくる。
 
 
(嘘つけ嘘つけ。そんなわけアルマジロだろ。普段はもっと退屈な業務だろうに。いい歳して語っちゃってるよ笑)
 
 
 
 
 
・・・・・・しかし、ここでふと思う。
 
 
 
 
・・・いや、本当にそういうキラキラした姿で仕事をしているんじゃないの?
 
 
 
ーーそんなわけないだろう。・・・いや、そう思う私が汚れているんじゃないのか?「先輩社員の声」に載るような社員は、やはり学生だけではなく社内・社外から見ても特別な存在なのではないか?
 
 
くたびれたカバン、コンタクトをつけるのがめんどくさくてーーメガネ、昔は持参していたのにめんどくさくてーー缶コーヒー、パソコン画面には、未読メールがどっさり。机には有象無象の書類や雑誌新聞の山。
 
 
キラキラ感からは程遠い私の構成要素が、目の前にずらずらと並んでいた。
 
 
私はこれまで『先輩社員の声』でお声がかかったことは一度もない。まあ、ウチの部署は伝統的に女性社員を推薦しているため、特段何も思ってなかったのだがーー私が会社の看板として、いや、社会人代表として学生に紹介できる器ならば、性別に関係なく『先輩社員の声』に載っていたことだろう。要するに、私がそういう器ではなかった、ということであるに違いない。
 
今一度、我が社の『先輩社員』たちを読んでみる。なんと素晴らしい人生だろう。業務時間中にHPをみてサボっていた自分が情けない。そんなことをしている暇があるならば、少しでも顧客のお役立ちができるように努めれば良いだろうと、恥ずかしい気持ちになる。焼き芋君、仕事は楽しいかね?(ここまで書いて、冒頭で尊敬すべき先輩たちが私よりも先に『先輩社員の声』を見始めたことに気づいたが、まあ、この際細かいことはどうでもよい)
 
 
 
ここで気持ちを切り替えて仕事に向き合えば良いのだが、根っからのダメリーマンである私は、仕事ではなく別の方面に気持ちが動く。それは、
 
もしも自分が「先輩社員の声」で取り上げられるとしたら、どんな風に答えるだろう?
 
ということである。決して取り上げられることはないにもかかわらず。
 
 
 
(私がこの会社に入社したきっかけは、「小さい頃からウチの商品を家庭でも見ていたのでーー」・・・・・・いや、ありきたりだな。じゃあ、「先輩たちとお話しする機会があって
、その時の先輩がすごくかっこよくてーー」・・・・・・いや、先輩とは入社前に会ったことないしな。じゃあ、「会社の社風が社会貢献につながっていて、さらにグローバルな事業展開を進めたり、先進的な技術開発にも取り組んでいてーー」・・・・・・それじゃ嘘になるしなあ)
 
 
他社のHPものぞいてみる。急に忙しくキーボードをパチパチ叩く。
 
「ーーへえ、なるほどねえ」
 
手帳にメモメモ。その姿を見て
 
先輩B「お、焼き芋、熱心だねえ。企業研究?新規提案?」
 
先輩A「いい顔してるやんか。どれ、何を見てたんや
 
「え。あ、いや、まあ、大したことは何も。あ、すみません、これから商談があるんで。行ってきまーす
 
急いでパソコンを閉じて外出。移動中も、スマホで先輩社員の声をいろいろと調べる。
 
 
ーー
 
 
出張の最中。車移動の中。頭の中。
 
 
インタビュアー「若手社員にもかかわらず、沢山の経験を積まれている焼き芋さん。ぜひ、仕事で一番印象に残っていることを教えてください」
 
「もう、若手社員じゃないですよ。いいおっさんです(笑)。あ、仕事で記憶に残っていること、でしたよねーーそうですね。オデン社へのカラシ提案で新規御採用いただいたことですかね。ただ、これは私自身の力だけでできたことではないことを初めに申し上げねばなりません。上司が逐一相談に乗ってくれましたし、提案内容についても前任の先輩に相談したりしました。その時のアドバイスをもとに提案しただけです。あと、当然、工場の皆さんが素晴らしい製品を作ってくれることが大きいわけですし、アフターフォローしてくれた品質保証部の皆さんにも感謝しなければなりません。念押ししたいのですが、商品流通を管理してくれる物流部の存在も頼りになっております。ーーこう考えると、記憶に残っているのは、提案を採用いただいた「結果」よりも、そういった社内のつながりを感じることができたからかもしれませんね・・・・・・(ちょっとわざとらしいな。もっと先輩たちが自然に喜ぶような内容にしないと)
 
 
インタビュアー「焼き芋さんは、いつも顧客に斬新な提案をしていると伺っております。焼き芋さんが提案で心がけていることとは?」
 
 
「お客様への提案の際は、『一度の商談でお互いウィンウィンになること』を前提にしてます。そのためにも、一回の商談のために念入りな事前準備とリサーチを重視してます。お客様にとってもお忙しい中ご面会させていただくわけですから、準備を怠ってお互いがムダな時間を過ごすのはもったいないですよね。昔のようにゆとりのあった時代だと、ただ雑談するだけで人間関係を構築できた部分もあるでしょうが、今は皆様もお忙しいですし、働き方改革で効率を重視してますからね。まずは私と面会することで『得した気分』になってもらいたいんです。私は斬新な提案ができているとは全く思いません。でも、もしかしたら、ほかの営業担当
よりも、事前準備を重視しているっていうところが少しだけ違うのかな、って思います(先輩世代の批判はカットだな)」
 
 
 
インタビュアー「ハナバナしい営業成績を挙げている焼き芋さんですが、その私生活はミステリアスだと伺っております。ほとんど誰に聞いてもわからない、と。みなさんが興味を持っていると思うので、ぜひ、休日の過ごし方を教えていただけますか?」
 
「休日ですか?恥ずかしいなあ(笑)まあ、勉強とジョギングですね。勉強はしてもしすぎることはないと思います。それが仕事の提案にもつながってくるでしょうし、何より、勉強している自分が好きなんです」
 
インタビュアー「なんと向学心にあふれているんでしょうか。それに、学問だけではなく、ジョギングもされているんですか !?なんだかデキル男ですね」
 
「大したことでもないですよ笑。でも、ジョグって、無の境地になれる唯一の時間なんです。仕事の進め方で悩んだりしても、走っている最中は忘れられますし、走り終わった後は、新しいアイデアが生まれたりすることもあります。その瞬間を期待してジョグってる部分もありますよね。まあ、周りから見たら淡々としているつまらない休日ですかね(笑)」
 
インタビュアー「いいえ、今までで一番刺激的なインタビューでしたわ。私、個人的にも焼き芋さんに興味が湧いてきましたところです」
 
「私は、仕事以外は退屈な人間です。恥ずかしいことに、仕事に関わること以外には何一つを興味が起こらないのです」
 
インタビュアー「ーー私のことはどうですか?」
 
「・・・・・・こんなことを私が言う必要性もないですが、貴女は誰が見ても美しい女性です。しかし、私は、貴女と向き合う以上に、生きがいを感じる素晴らしい仕事に出会ってしまったのです。それが幸せなのか不幸せなのか、私には考える余裕すらない。ただただ、まっすぐ突き進みたい。今はそれだけです」
 
インタビュアー「ーー少し車を停めていただいてもいいですか?外の空気を吸いたくて(鼻づまり)」
 
「ちょうどセブンイレブンがありますから、そこに停めましょう。私は、貴女が空気を吸っている間に、雑誌コーナーで市場調査を済ませておきます」
 
 
セブンイレブンに入り、トイレを借りて、昼食におにぎりと唐揚げを買って食べた。そして、一人インタビューを続けるのであった。
 
 
ーー
 
家。花の金曜日の夜。
 
「そうですね。ヒントはどこにでも隠れていると思います。それに気付けるかどうかは、多分、普段どれだけアンテナを張れているかってことなんだと思います」
 
「まさか今の会社に入社するなんて、学生時代には想像もつかなかったです。でも、この会社に入れてすごく生きがいを感じています。そう思えるって、改めて考えてみると、すごく幸せなことなんですよね笑。今は神様と両親に感謝するだけですね」
 
「これからはジャズ音楽ですよね。今はジャズにすごく興味を持っています。最近、歌詞がある音楽が少し煩わしくなってきて・・・・・・。言葉に頼らないアーティストのスピリットを感じたいんです」
 
「洗濯の頻度ですか?実は洗濯には一番のこだわりがあってーー洗濯と選択って、私は人生においてどちらも決定的に重要なことだと思ってます」
 
 
 
酒を飲みながら、悦に浸ってインタビューを受けるのであった。そして、 歯を磨いて寝るのであった。
 
 
 
ここ一週間、ずっとこんなことを考えて過ごしていました。意外と楽しかったです(笑)でも、こんな社員は絶対に「先輩社員の声」に載らないでしょうね。