「まくら」営業、はじめました。

営業職の男です。「まくら」を極めて営業のタツジンになりたいのです。

いつかまた偶然に

 

 

劣等感の固まりがずっと、息をしてもパンを食べても、飲み込めないところに詰まってんだ、バケツ3杯分じゃ足りないくらい

あなたが生きているこの世界に僕はなんどでも感謝するんだ。溜め込んだ涙が腐ってしまう前に、ハローハローグッバイ

藍坊主「ハローグッバイ」

 

 

 

日曜日。

 

 

母「ここのスーパーにも無いわねえ……」

 

「これで3件目か」

 

母「お盆になると、かっぱ巻きはなくなるんだよ。どこも納豆巻とか鉄火巻ばっかり。なんで?」

 

「知らん。これは重要な発見だ。『スーパーはお盆になるとかっぱ巻きを売らなくなるのはなぜか?』という疑問が見つかったよ。あとで調べてみる」

 

母「もうあきらめるか――」

 

「でも、お孫ちゃんはかっぱ巻きが好きなんでしょ?それにここまで探してあきらめるのはねえ」

 

母「じゃあ、次が最後。次で見つからなかったらあきらめる。ほら、いくよ」

 

 

お盆なので実家に帰省中。せっかくなので、母の買い物に付き合う。

 

この日、母が探していたのは「かっぱ巻き」である。

 

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この日の昼に、私の兄貴夫婦が実家に遊びに来るということで、朝から昼ごはんの食材を探していたのである。

 兄貴夫婦の子供、すなわち私の母にとってのお孫ちゃんが、かっぱ巻きが好物なのである。そこで、スーパーの御総菜コーナーにあるかっぱ巻きを購入しようとしていたのだ。だが、なぜかどこのスーパーにもかっぱ巻きが置いていなかった。

 

だったら、自分で作ればいいじゃない

 

と言いたくもなったが、それは少々お門違いな言葉だと思って引っ込めていた。

 

母は、買い物をする時間そのものが好きなのである。いろんなスーパーをめぐってかっぱ巻きを探す行為を楽しんでいるのだ。だから、息子として、何も言わずに買い物に付き合いたかった。もちろん、うちの母だってかっぱ巻きを作ることはできるだろう(たぶん)。

 

 

かっぱ巻きがないことを知り、母はスーパーの出口に向かう。

 

「あ、ごめん、ちょっとトイレ」

 

母「すぐ戻ってきてよ。ほかの店で買ったやつが傷んじゃうから」

 

 

 

そのまま店のトイレに行った。用を済ませてトイレからでると――。

 

「あれ、やきいも?やきいもだよね?」

 

 

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男性に声をかけられる。その声を聴いて、私は彼が何者なのかすぐに分かった。しかし、唐突だったので声に詰まる。

 

「え、え?」

 

タマネギ「やきいもでしょ?俺だよ、タマネギだよ」

 

「あ、ああ!久しぶり」

 

タマネギ君は、私の高校時代の同級生である。そして、私にとって、「友人」と呼べる数少ない人だった。

 

 

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高校時代、私はあまり友達がいなかった。高校の学年が上がるほどに、一人でいる時間が長くなっていった。思春期で人付き合いに悩むタイプでしたからね(笑)。あまり自分の過去を懐古するのが好きではないので、ここで私の高校時代を書くことはしない(あんまりいい思い出もないしね)。

 

 

そんな私ではあったが、タマネギ君とは卒業するまで親しくしてもらった。休み時間に話したり、放課後に一緒に帰ったりした。部活も違うし、進路も全然違っていたけど、共通の話題は事欠かなかったように思う。

 

 

――そんなタマネギ君だが、高校を卒業するとすっかり会うこともなくなったし、連絡もしなくなった。まあ私自身、大学進学後も人付き合いに悩む性格は続いていたから、携帯変えても連絡先が変わったことを肉親以外に伝えなかったからね(とてもめんどくさいやつでした……今も)。

 

 

ともあれ、そんなタマネギ君との約10年ぶりの再会は唐突に訪れた。

 

「なんかやせたね。それに背も伸びた?あはは」

 

タマネギ「いや、変わってないよ(笑)あれ、こっちに住んでるんじゃないよね?帰省中?」

 

「ああ、うん。今、俺、大阪にいるんだ」

 

タマネギ「大阪?今何やってんの?」

 

「ええっと、チョメチョメって会社に勤めてるんだ。これでも営業だよ」

 

タマネギ「へえ~そうなんだ」

 

「タマネギ君は?」

 

タマネギ「俺は(地元の)大学病院で看護師してるよ。あれ、いつからこっちに来てたの?」

 

「え、ええっと、いつだっけ?あはは、忘れちゃったよ。でも懐かしいなあ」

 

タマネギ「そうだね。あれ、連絡先とか俺知ってるっけ?」

 

「え?――ああ、大丈夫?かな?うん」

 

タマネギ「いまの連絡先教えてよ」

 

「あ、そうだね――あ、ごめんちょっと携帯忘れちゃって。あはは。また連絡するよ。――ごめん、ちょっとおふくろを車に待たせてるから」

 

タマネギ「あ、うん。じゃあ、また」

 

 

約30秒で、私は、タマネギ君と別れた。なぜか逃げるようになってしまった。

 

 

――

 

 

母「まったく、かっぱ巻きのくせにてこずらせやがって」

 

「よかったよかった。じゃあ、さっさと帰ろうよ。孫が来ちゃうよ」

 

母「あ、もうこんな時間。早く帰らないと、急げ急げ」

 

 

結局、次のスーパーでもかっぱ巻きを見つけることはできなかった。それでもあきらめられなかった母は、しょうがないので次が最後、ということで別のスーパーに向かった。そこで、ようやくかっぱ巻きを見つけることができたのであった。

 

 かっぱ巻きを見つけた母は嬉しそうだった。今朝から探していた物がようやく見つけられたのだから、喜び一入であろう。

 

 

ただ、私は、かっぱ巻きのことはもうどうでもよくなっていた。

 

――

 

月曜日。実家を後にし、飛行機で大阪に帰る。(行きは青春18きっぷ、帰りは飛行機であった)

 

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大阪に戻り、行きつけのコメダ珈琲でこの日記を記す。書いてある通り、今もタマネギ君とのことを振り返ってしまう。

 

……なぜ私は、タマネギ君との再会を、かっぱ巻のように喜べなかったんだろう。……「母のかっぱ巻き」と「私の思い出の人」を比較するのはおかしいけどね。

 

でも、自分自身、10年ぶりにタマネギ君と会えたなら、もっと嬉しい再会になるものだと思っていた。でも、今回は嬉しいどころか、逃げるような対応になってしまった。情けないって、18の俺は言うだろうね。

 

上に書いたけど、高校時代の知人友人の連絡先は、携帯を変えたときに全部消えてしまった。こっちから連絡はできないし、こっちの連絡先が変わったのだから、あっちから連絡することもできない。すべては自分が蒔いた種であるし、そのカバーもできなかった。

 

 

嗚呼、情けない。10年たっても変わらずに、人付き合いに悩み続けている。

 

 

 

 

ここまで書いて、高校時代、タマネギ君とともによく聴いていた「藍坊主」というロックバンドを聴いてみる。

 

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高校時代ぶりに聴いてみたけど、やっぱりいい歌ばっかりだった。「雨の強い日に」「ウズラ」「鞄の中、心の中」「センチメンタルを超えて」「テールランプ」「ジムノペディック」「春風」「ハローグッバイ」「水に似た感情」――名曲ばかりである。タマネギ君は、「鞄の中、心の中」が好きって言っていたっけ。

 

 

 

……わがままだけど、また偶然会いたいなあ。その時はうまく再会を喜びたいものである。いつになるかわからないけど……。情けないなあ。