ギザ十な日々

2人の息子と妻との日々を書いています。

些細?なトラウマ

 

 

下人は七段ある石段の一番上の段に、洗いざらした紺の襖あおの尻を据えて、右の頬に出来た、大きな面皰(にきび)を気にしながら、ぼんやり、雨のふるのを眺めていた。

芥川龍之介羅生門』より

 

 

自分に愛想の尽きかけた時、自我の委縮した折は鏡を見るほど薬になる事はない。妍醜瞭然(けんしゅうりょうぜん)だ。こんな顔でよくまあ人で候(そうろう)と反りかえって今日まで暮らされたものだと気がつくにきまっている。そこへ気がついた時が人間の生涯中もっともありがたい期節である。自分で自分の馬鹿を承知しているほど尊く見える事はない。

夏目漱石吾輩は猫である』より

 

 

 

先週の月曜日。

 

 

「……うわあ」

 

鏡の前に立ち、血の気が引く。

 

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顔の一部が赤々と腫れている。ニキビである。特に、鼻ちょうちんが赤く腫れているのがかなり目立つ。昨日までなかったのに、起きたら見事に腫れあがる。

 

 

(なんと間抜けな面構えだろうか)

 

何とか目立たない方法はないかと考えるが、顔の真ん中で堂々としているニキビを消すことは非常に難しい。

 

(やっぱりあれのせいかなあ……)

 

ニキビの原因はなんとなく想像がつく。約2週間ほど前に淀川でフルマラソンを走った。その日は大変に天気が良く、日差しも強かった。走り終えた後は顔がすっかり焼け、2,3日後には顔の皮が一部剥けてしまうほどであった。

その後のメンテナンスが足りないために、ニキビができたのだと思われた。考えてみれば、鼻のあたりの日焼けが一番ひどかった。

 

 

「もう……会社行きたくないぜ(涙)」

 

営業という仕事上、肌荒れはツライ。しかも、鼻ちょうちんの大きなニキビである。滑稽に映るか、不快に映るように思われた。

 

ただ、

 

ニキビができたので、今日、会社休みます

 

などとは口が裂けても言えない。というか、言って理解してくれる上司はこの世にいないだろう(私が上司でも認められません)。それに1日や2日でこの大きさのニキビは治らないことを、経験上よく知っている。

 

ひとまず、花粉症シーズンであることを利用し、社内にいるときはマスクを着用することにした。ただ取引先の前では、マナー上失礼にあたるので、止む無く外す。無論、営業パワーは半減するのであった(情けないことよ)。

 

得意先に行く前などに、

 

いちいち肌荒れなんて気にするな、男のくせに。女々しいやつだ

 

お前の顔なんか誰も観ちゃいないから気にするな

 

鼻ちょうちんが赤いなんて、むしろかわいいよ

 

という言葉を自分にかける。しかし、他人のことならば納得するものの、自分のことになるとまるで説得力を感じられない。会社に戻っても、できる限り目立たぬよう目立たぬよう過ごした。もう、生きててすみません、ってな気分である。肌荒れのない周りの同僚が楽しそうに笑っているのを見て、とてもうらやましく思えた。

 

 

これではまずい、と、先週の月曜日、会社終わりに皮膚科に行き、飲み薬と塗り薬をもらう。これが良かったようで、数日たつと、顔の肌荒れは大分収まってくれた。皮膚科の先生には感謝である。

 

ただ、薬の副作用か、精神ダメージの影響か、先週は何もやる気が起きず、会社でも大人しくし、帰ったらボーとした日々を過ごしたのであった。まったく、我ながらなんと気持ちの小さい奴だろうと辟易した、まあ、そんな一週間なのであった。

 

 

――それにしても、肌が荒れると高校時代を思い出す。

 

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高校時代は、不規則な生活とジャンクな食事とホルモンバランスの乱れの影響か、肌がとても荒れやすかった。高校生になると、肌荒れが気になって、人前で話したりするのが一気に苦手になった。(中学生時代も人前に出るのは不得手だったけど、、まあ、そこまでじゃなかったかな)。

 

青春真っ盛りの時期に人と接するのが苦手になったと言うのは、なんとつらかったことだろう。肌荒れに悩む当時の自分を抱きしめたくなる(そして、早急に『イイ皮膚科』に行くことを勧める。家から近い皮膚科でもなければ、通販で売られていた恐ろしいほど高いニキビ薬、じゃなくてね)。

 

今でも

 

ニキビ つらい(もしくは『死にたい』)

 

と検索すると、悲痛の叫びがどんどん出てくる。ニキビって、身近である分、悩みの高低差がかなりあるモノなのかもしれない。(芥川龍之介のせいで、一部の人にとって『若さ』の代名詞のようになっちまいやがるし)

 

 

 

楽しかった高校時代に戻りたい

 

これは、私にはあまり縁のない感覚である。もちろん楽しいこともたくさんあったのだが、今回のように肌が突然荒れると、昔のつらい気持ちが鮮明に思い出されるからだ。正直、あの時の高校生活を繰り返すのはまっぴらごめんである。

 

トラウマというには大げさかもしれないが、私の些細な人生の中でいえば、やっぱり高校時代の肌荒れの記憶は「トラウマ」と呼べるものな気がする。少なくとも、社会人になった今でも、高校生の時以上のストレスを感じたことはない、と自信を持って言える。(今の会社がとてもいい会社、ということもあるかもしれませんが)。 

 

 

ともかく、肌荒れは、己の日々の行いを戒め、何も支障のない日常がいかに満たされているかを再認識させる力があるみたい。たまにできるニキビも、そう思ったら悪いものでもない……いや、やっぱり、できてほしくはないな(笑)

 

 

以上、思春期丸出しの高校生が書いたような日記でした。本当はもっと丸出しにして書きたいくらいだけど……まあ、これくらいで。