挑戦三 独り船旅、意味も目的も無く『別府』へ向かう
金曜日。朝。
いつものビジネスバッグ以外に、小さめのリュックを1つ、背にしょいながら家を出る。猛暑の大阪では、なるべく荷物は少なくしたいところだが――
(これは最低限、どうしても必要なのだ・・・)
満員電車ではリュックを下ろし、電車を降りた後も同僚に見られぬよう、いつも以上にこそこそと通勤。
出社したら、すぐに倉庫に向かう。そして目立たないところにリュックに隠す。
ーー
この時期は、売り上げの大きいお客様をメインに、上司と挨拶回り。営業車での移動ではあるものの、気温が40度近くまで上がっていることに辟易。私は、上司と会話しながら訪問時の話題の整理をする。一方で、今日の夜の予定を立てる。
(夜は贅沢だけど、バイキングにしようか。あんまり混んでないといいなあ・・・。カップラーメンは必要かしら?まあ、一晩だけだし、いらないか。必要になったら自販機で買えばいいし)
――
定時のカネが鳴る。すぐに帰る勇気はないが、いつでも帰られる準備を整える。
18時、残業もほどほどに会社を出る。そして、私は大阪南港にあるさんふらわあターミナルへといそいそ向かった。
事前にネット受付を済ませていたので、予約番号を見せたらすぐにチケットを発券してくれた。(そんなに長蛇にならないのがフェリーのいいところ。5分くらいで事前の手続き終了!)
受付近くにあるトイレで、仕事着であるスーツとワイシャツと革靴を脱ぎ、普段着とスニーカーへ着替える。いらなくなった仕事着をビニール袋に収めた後、ビジネスバッグとともにコインロッカーへ預ける。
身軽になったところで、いよいよ乗船!
――
(おお、これが・・・お世話になります)
(船までの通路で撮影。19時くらい?頭の中では、興奮とともに『サントアンヌ号のテーマ』が繰り返し流れる。初代ポケモン世代なので)
さて、今回ここにきたのは、このツアーに参加するため。
フェリーさんふらわあが企画している弾丸クルーズツアー。関西から九州まで0泊3日で旅行できるプラン。簡単なイメージで言うとこんな感じ。
1日目の夜 大阪港出発
2日目の朝 九州(大分か鹿児島)に到着
2日目の夜 九州を発
3日目の朝 大阪港に到着
(もちろん、九州の港発の逆パターンも有り)
私が今回利用したのは、大阪から別府までの船旅。1日目(金)の夜に大阪を出港し、2日目(土)の朝に別府に到着、そして夜に別府を出港、3日目(日)の朝には大阪に戻るというもの。
「独り」「海」「フェリー」「安い」「土日完結」が好きな私にとって、これは最高のツアーに思えた。特に値段!まさに破格である。宿泊費と移動費込みで往復1万円ちょいなんだからね。信じられる?
――
船に乗り込むと、非常に賑やか。特に家族連れと高校生(おそらく、部活の遠征)が目についた。
(・・・そうか、世間は夏休みか)
青春を謳歌している男子女子や、幸せいっぱいではしゃぐ子供と、それをたしなめる親をみると・・・男一人がなんとなく居心地の悪く感じる。
(いやいや、何を言うか!これは俺の旅行だ。誰にも文句を言われる筋合いはナイ!)
背中に力を入れて、自分が予約したベッドに向かう。
――
価格の高さに少し悩みながらも、思い切って船内バイキングを利用した。食堂で受付をしている人に「1名です」と告げ、2,000円を渡し、バイキングに挑む。
余談ながら、価格はこんな感じになっている。
(船上価格にしては・・・安い?個人的には理解できる範囲。繁忙期閑散期ある中で、海を見ながら時間制限無しに食べ放題できるなんて、2,000円とはなかなか良心的ではありませんか。料理の内容だって、まあ、船の上にしては立派なもんですからね)
ちなみに、内容はこんな感じ。
HPより(この通りに出るとは限らないが、ポイントは押さえている)
本音としては――少し高いけど、まあ、船の上だからね(笑)
料理は刺身やステーキ、そして中華にカレー、さらにはおでんなど、幅広く揃えてある。バイキングだし、誰の目も気にせず、自分の欲望のままに好きな物をすくい取る。
(シッチャカメッチャカ。あ、もちろん、誰の目も気にしないので、おかわりにも行きましたよ。)
ガシガシ食べ、落ち着いていると、船内から生演奏が聞こえてくる(これもフェリーのお楽しみの一つ。生演奏が必ずあるんです。ない場合は映画の上映会か、ビンゴ大会)。流れる音楽よりも、はしゃぐ子供たちをぼんやり見ている方に琴線が触れる。
(今、この子たちは、忘れられない体験をしているんだなあ)
なんて思うと、自分がどれだけ頑張っても、彼ら彼女らの時間の過ごし方には勝てないンだなあ、と思い、酒が一層進む(怪しいやつ)。『となりのトトロ』が流れた時は、ちびっこたちのテンションが上がり、歌い出す子もいた(酔いが回ってくると、とある女の子の歌声が、私の懐古主義に火をつける。そして、昔を思い出して涙を流す。そして、私の怪しさは増すばかりである)
――
1人ぼーっとしながら、再度席を立ち、バイキングに向かう。そして、デザートのケーキをとる。お酒はつかれたので、コーラを飲む。
(酔っ払ってたため、ケーキが逆さまになっている)
恥ずかしながら、この日は私の誕生日でした。30歳。・・・一つ節目の。
独身最後のひとり旅、ひとりわびしくケーキとコーラで乾杯・・・。ああ、なんと虚しい人生だろう。・・・でも、こういうのも好きなのよ、あたし。きっと、こういう、独りでかっこつけるのが好きな人種なんだと思います。(と、浸りながらも、周りは子供ばっかりだったので、少し恥ずかしさを感じておりました)
――
腹も膨れたところで、船内の風呂で汗を流し、21時過ぎにはベッドに向かう。
ちなみに、私が予約したのは個室ではなく、相部屋で一部屋12ベットのタイプ。
(実際はこんなに明るくないが、快適)
ベッドではなく床に寝る雑魚寝タイプもあるのだが、今回は少しだけ贅沢してベッドにした。
ベッドは体がギリギリ収まるくらいで、ほとんど余裕はない。カーテンを閉め、21時30分には寝た。
翌日、無事に別府に着けるのか!?別府についてどんな事件が起こったのか!!?
続きがあるか・・・知らんけど、とりあえず船旅楽しかったです。