妻の妊娠とともに、(ひとまず)酒をやめてみました
夕食。
妻「じゃあ食べよー。いただき」
「あ、ちょっと待って」
と言って、私はいつものように冷蔵庫にゆく。そして、缶ビールを手に取る。
妻「・・・またそれ?」
「と、止めんなよ!止めんなよ!止めたって飲むからな!」
妻「・・・」
「ぷるぷるぷる・・・飲まないとコイツが止まらねえんだよ!」
妻「・・・」
「プシュ!じるじるじるじる・・・・かあああ旨い!!見ろ!震えが止まった!!」
妻「・・・」
「・・・ってアレ?(5秒間、缶をくるくる回す。そして)・・・コレ!ノンアルやないかい!ノンアルやないかい!」
妻「ふっ(鼻で笑う)・・もうそれやめなよ。あっきた」
「そういうなよ。一応我慢してるんだから。じゃあ、いただきます」
この茶番が、我が家の夕食時の儀式となっている。そして、夕食を終えた後、 手帳に「飲まなかった○○日目」と記入する。このルーティンワークも、本日で12月7日で58日目となった。禁酒は当初想像したよりもかなり続いている。2ヶ月前まで毎日のように飲んでいたことを思うと、よく58日も続いたなあと、我がコトながら素直に褒めてやりたくなる。
酒を止める決意をしたのは、10月中旬のこと。
少しずつ、妻のつわりがひどくなりはじめた頃だったと思う。仕事から帰ってきたらすぐにベッドに横になったり、夕食をほとんど残したりする妻。その様子を見て、妻が妊娠モードになっていくのを感じる。
(では、夫である俺は?妻のためにできることってなんだろう?)
真剣に考える。そして、それは妻が急に何かあったときにいつでも対応できる状態で有ること、という考えに至った。酒を飲んだらそれができない。だったら酒を止めるしかない。ここで酒を止められるかどうか、それで父になる覚悟が試されていると思ったのである。
ーーなんてかっこいいことを言えればいいが、別にそういうわけでもない。きっかけは些細なことである。
在宅勤務が続き、コロナストレス(という、妻も反対しづらい理由)で、平時より飲み過ぎの毎日を過ごしていた。そんな10月のある日、朝起きるとみぞおちのあたりがだるい。顔色も粘土のような具合。仕事はだるくて集中できない。もちろん、妻の体調が悪そうな様子も加味され、ちょっとだけ酒を飲むことに罪悪感を覚え
(・・・と、とりあえず今日は飲むのやめてみっか。今日だけね)
と思って飲まなかっただけである。ただ、この時の思いつきが今もなお続くことになる。
その次の日の朝、目覚めがすこぶるよかった。顔色も人間らしい状態に戻っている。そこで、
(せっかくだし、今日も止めてみよう。明日は飲むけど)
と思う。しかし、結局次の日も飲まなかったこともあり、
(よし、1週間止めてみよう)
になる。それが
(10日間までならいけるかな?)
となった後には、
(ついでだし2週間行ってみよう)
そしていつの間にか
(ここまできたら1ヶ月だろう)
となったのである。最初は些細な思いからだったが、まさか1ヶ月もお酒を止めることができるとは、我ながら驚きであった。そして、いつの間にか58日目。まもなく2ヶ月目に突入する。
最初は結構イライラすることもあった。だが、日を重ねるごとに禁酒ストレスは収まっていった。今はそこまで酒を飲みたい気持ちもない(冒頭に書いたような冗談で済ませられるレベル)。でも、一回飲んだらまた毎日飲酒生活に戻りそうな予感。恐る恐るな毎日である。そんな酒との詳細な戦いについても、またどこかで書いてみよう。
ちなみに、いろんな妊娠関連の本を読んでみると、いずれも妊婦自身の飲酒は厳禁としているものの、
夫の飲酒について、そこまで我慢してほしいという記述は少ない
気がする。
「飲んでもいいけど飲み過ぎないで」とか「奥さんの前では飲まないであげて」とか「飲み会で遅くまでならないで。頻度も考えて」とか「匂いのきついつまみは止めて」って表現が多い。夫のたばこが妥協無しで満場一致で否定されているのを考えると、夫の飲酒は比較的寛大に受け止められているように思う(だからといって、「飲んでいいよ」、とは誰も言っていないが)。
くどいようだが、私は酒が好きだ!酒が生きがいだ!!だから、酒を止めるのは辛いことだ。強く禁じられているわけでもないのなら、そのうち飲んでしまうかもしれない。いつまで続くかは自分でも分からない。分かりません!
ちなみに、来週に健康診断がある。なので、とりあえずの目標として、健康診断まで酒を止めておこう、という気持ちでいる。その程度の決意である。
未来の娘「お父さんさ、なんで毎晩毎晩酒ばっかり飲んでんの?臭いしうざいし寸胴だし、iPhone級にださいんだけど(未来の若者言葉)。なんでお母さんもお父さんみたいな人と結婚したの?」
「うええええん、ひどーいひどーい」
娘「AI並にうざい。10m以上離れてよね」
妻「そういう言い方するもんじゃないわよ。お父さん、少しは休肝日は設けてよね。『あのとき』は止められたんだから」
娘「あのとき?」
妻「あんたが私のおなかにいたときよ。お父さんね、あんたを妊娠しているときは、私がいつ何があっても対応できるようにお酒を飲まなかったのよ」
娘「へえ・・・そうなんだ」
妻「あんた、愛されてるのよ。そして、お父さんはね、あんたのためだったらいつでも大好きな物を犠牲にできる強い人なのよ」
娘「・・・パパ、いつもありがとう。でも、私にとってもパパは大事な存在なんだから、たまには休肝日を作ってね」
ニタニタしながらこんなことを想像している私は、きっとアホ面だろう。あははは。
ともかく、今日もノンアルコールで乾杯。・・・いつまで続くかしらねえ。