妊娠5ヶ月突入前のマイタケ
土曜日。夕方。
「もうこんな時間か。晩ご飯どうする?」
妻「今日、なんか調子悪い・・・食欲はあるんだけどさあ」
「いいよ。なんか作るよ」
妻「ごめんね、トマトお願い。昼に生協で買った唐揚げがあるから、それも出して」
「あいあい」
ご飯を炊飯し終えた後、おかずの検討。
「唐揚げってこいつか。・・・あ、鮭の切り身があるからコイツを焼こう。トマトはスライスするけど、緑が足りないし、ほうれん草でも茹でようか。あとは味噌汁だな。具材となるような物がないな・・・あーー」
妻が買っていたマイタケ1パックを発見。
「マイタケ汁か。コイツでいいな。バランスも悪くないだろう」
ということで、マイタケを茹で、さいの目切りした豆腐を入れる。
1時間後、ご飯が炊き上がり、夕食が完成。
主菜:鮭の西京焼き
主菜2:生協の唐揚げ
副菜:ほうれん草
副菜:トマトスライス
汁物:マイタケの味噌汁
主食:ごはん
「うん、悪くない。おーいできたよ」
といって、ソファーに横になる妻を呼ぶ。
妻「ありがとー。なんか元気になってきた・・・って、ちょっと」
「ん?」
妻「この味噌汁って・・・?」
「見ての通り、マイタケ汁。香りマイタケ、味もマイタケ」
妻「なんでマイタケ入れるの!?私、マイタケ嫌いっていったじゃーん」
本当にいやそうな顔をする妻。
「嫌いって・・・じゃあ、なんで冷蔵庫に入ってんの?俺は買ってないぞ」
妻「マイタケご飯にしたかったの。炊き込みご飯なら食べれるの」
「なんじゃそりゃ・・・いや、別に無理して食べなくてもいいよ」
妻「・・・とりあえず一口食べてダメだったら止めるね。少し冷ましてから」
味噌汁には手をつけずにご飯を食べる妻。食欲はあるようで、鮭と唐揚げを中心にご飯をおかわりする。
2杯目のご飯を食べる前に、恐る恐る味噌汁の匂いを嗅ぐ妻。その時である。
妻「・・・うっ!」
「ん?どした」
一気に顔をゆがませる妻。そのゆがみ具合といったら大したモノで、演技でできるような代物では無かった。こちらが恐怖を覚えるようなレベルである。
妻「これはまずい・・・」
「え!?え?まさか?」
妻「・・・うん」
といって、手に口を押さえながら、揺れるようにトイレに駆け込む妻。
(あっちゃああ・・・マイタケはだめだったか・・・)
吐いている最中についてこられるのは嫌らしいので、大人しくテーブルで待つ私。なんとも無力である。
ーー
2~3分ほどして妻が戻ってくる。
「・・・大丈夫だった?出した?」
妻「うん、出した。ごめん、マイタケは無理・・・。匂いだけで一気にこみ上げてきた」
「それはごめんなさい・・・」
妻「ポカリちょうだい、ポカリ」
大人しくポカリをコップにつぎ、妻に差し出す。
妻「ふう・・・落ち着いた。食べたもの全部出しちゃったよ。・・・ゴメン、味噌汁だけ退いてもらっていい?」
いそいそと味噌汁と流しに持って行く私。落ち着きを取り戻した妻は、再びご飯を食べ始める。
「・・・よく、吐いた後に食べられるね」
妻「え?ああ、まあ、もう慣れたよ。スッキリしたし。そっちこそ何で食べないの?」
「いや、まあ・・・吐かせてしまった罪悪感と、吐く前の表情が衝撃的すぎて食欲がね・・・」
妻「いいよ、気にしなくて。なんていうかさ、唐揚げの油臭さで少し胃がつっかえる感じだったんだよね。そこでマイタケにとどめを刺されたのよ」
「ふーん」
(唐揚げがボディブローでじわじわ効いてきたところで、マイタケがフィニッシュブロー)
「まるでボクサーだね」
妻「もうマイタケの味噌汁作んないでね」
「わかりました。すみませんでした」
もう、つわりとかよくわかんないから、自分で作ってくれ
と言わなかったことだけ、自分を褒めてやろう。でも、味噌汁は失敗だったなあ、と反省。あの妻の顔は一生忘れないことだろう。
明日で5ヶ月目突入。一応、一般的には『安定期』ってヤツになるのかな。妻のお腹も少しずつ膨らみ始めているけど、無事に体調も安定してくれるのを願うばかりである。・・・これは人それぞれっぽいしねえ。