禍福がまま
人生はただ歩き回る影法師、哀れな役者だ。出場の時だけ舞台の上で、見栄をきってわめいたり、そしてあとは消えてなくなる。
真の勇気が試されるのは逆境のときではない。 幸運な時、どれだけ謙虚でいられるかで試される。
ヴィクトール・エミール・フランクル
初心忘るべからず
誰でも耳にしたことがあるこのことばは、世阿弥が編み出したものです。今では、「初めの志を忘れてはならない」と言う意味で使われていますが、世阿弥が意図とするところは、少し違いました。
勤労感謝の日である2017年11月23日、この日記を記す。 先週の出来事である。
11月13日月曜日。
東京本社。この日は終日会議だった。各営業担当が自身の活動内容と売上実績を報告する。
「えーというわけで、売上状況ですが、ワタクシが担当している企業はすべて軒並み好調となっております。このまま行ってくれれば、前年比、予算比共に大幅達成して2017年を終えることができそうです。また、2018年もすでに売上増を見込める企業がいくつかあり――」
「ワタクシを中心とし、各部署を巻き込んでいたホンニャラ計画、ようやく始動できそうです。手始めに、来年の1月より詳細な市場調査とトレンド情報を収集し――」
「この企業への取り組みに対しては、皆様から非常に厳しい意見がありましたが、初期からのワタクシの対応が功を奏し、とうとう売り上げ1.5倍につなげることができました。まさに災い転じて福原愛というわけで――」
会議終了直後、先輩であるグラタンさんに声をかけられる。
グラタン「やきいも、調子いいなあ。お前。うらやましいよ」
「いえ、そんな事はありませんよ。たまたまです。私は何もしていません。本当にいいお客様に恵まれてラッキーです」
グラタン「本当に、いろいろお前はがんばってるからなあ」
「いえいえ、本当にそんなことはありませんから」
己を過信することなどない。今が良くてもこの先悪くなることだって十分に有り得る。だからこそ、今の売上の調子いいからって、自分まで調子に乗る必要は全くない。感情に流されず、クールに業務をこなすだけ。大丈夫、私はいつだってフラットな気持ちで仕事に向き合うことができる。そんな気持ちでパイセンと話す。
グラタン「あ、ところでさ。来週の火曜日だけど空いてる?空いているんならちょっと付き合ってほしいんだけど」
「来週の火曜日、ですか?」
グラタン「そう。ちょっと大阪出張するんだけど、その際に一緒に同行してほしいんだよね」
余談ながら、グラタンさんは、私よりも一回り社歴が上の先輩であり、新入社員のころからいろいろと面倒を見てもらっていた方である。そんな先輩から同行営業をお願いされることは、私のようなペーペーからすればとても名誉なことである。しかし、この時の私は違うことを考えていた。
(……同行営業ねえ。まあ、要するに取引先までのアッシー君になれってことでしょ?めんどくさ。新入社員ならわかるけど、俺ももう、ソレナリの担当企業とか持ってんだからさ)
「……あの、来週火曜はちょっとどうしても営業に行く必要がある取引先さんがあるんですよ。まだ日程調整中ですが、もしかしたら難しいかもしれませんね」
グラタン「あ、そうなんだ。そりゃしょうがないな」
「すいません。申し訳ないす。あ、でも、もしもアポイントがうまくとれなかったら、その時はお供させていただきますので――」
と、(当人としては)体裁よく断ったのであった。
(断る力も大事って、勝間和代が言ってたよ)
などと思いながら。
――
会議終了後、いそいそと新幹線に乗り、その日のうちに大阪に帰る。東京から大阪までの約3時間、いつもならば晩酌をするか、内勤業務がたまっていればパソコンを開いて作業をする。だが、この日は窓を景色を流しながら、先ほどまでの自分を振り返る。
(今日の会議、ちょっと調子に乗りすぎた感じだったよなあ。たまたま運よく売り上げが伸びただけなのに、ちょっと生意気だったかな)
(グラタン先輩に対しても、ああいう言動は良くなかったな。俺が後輩からそんな態度だったら、やっぱり嫌だもんなあ……)
常に謙虚であれと思って仕事をしてきたつもりである。自分は組織に属する身であり、そのうえで活動しているだけである。それゆえに、一番危険なのは過信だとも思っている。
……しかし、些細な成功体験一つで、我がふるまいはフラフラと変わってしまう。私自身、少し仕事に慣れてきて、オゴリ高ぶった気持ちが出始めていたのかもしれない。会議での調子に乗った発言はもちろん、尊敬している先輩に対しても、あのような態度をとるとは、実に情けなく、恥ずかしい。
家についてからも、どこか今日のことが気になり、なかなか寝付けなかった。
――
翌日。
起床後も昨日のことが気になり、起きて早々、同じ悩み事に取りつかれる。
熱湯で少し濃いめに淹れたお茶を飲む。 苦味と渋味で頭が少しすっきりし、悩む以外のことを考える余地ができる。そして、
(初心に戻らねば。全ての慢心を捨てるのだ。そうだ――今日はこいつを結んでみるか)
クローゼットの中のあるネクタイを手に取る。そのネクタイは、就活生の頃に使用していたものである。
就職状況が今よりも少し厳しかった頃、何のとりえもないまま田舎から出てきた私にとって、就職活動はそれまでにない試練だった。その中で採用していただいた今の会社。 それなりに熱い思いをもって入社させていただいた。それが入社して数年の月日を経て、大切な気持ちを失いかけていたのではないか?
就職してからはほとんどつけることがなかったこのネクタイ。慢心におぼれた私の気持ちをただすためにも、今一度就活時代の気持ちを思い出したい。そのために、実にバカバカしい発想ではあるが、あのころつけていたネクタイを結んでみたのであった。
――
通勤中。
電車での移動中、頭の中で何度も
(過信するな、身の程を知れ、オゴリを捨てよ――)
と繰り返す。そして、以前見た夢の日記を読み返す。奇しくも、この日記を書いたのは、調子に乗ってしまった2017年11月13日(月)の、ちょうど1年前であった。
会社からの最寄り駅に到着。ここで何を思ったか、
(あ、とりあえず、ICカードにチャージしておこう)
と思う。電車に乗る前の改札で残高を見たら、数百円しか入っていなかったからである。(千円以上無いと不安になる)
改札を出る前に、駅内にある券売機に向かう。
5000円取り出し、ICカードにチャージする。その最中も、
(とりあえず、始業時間になったら、いの一番にグラタンさんに電話しないと)
と、またくよくよ考える。
――
会社。
始業時間の9時を迎えると、私はすぐに電話をかける。
「あ、おはようございます」
グラタン「あ、おはよう。どうした?」
「すみません、朝から――。あの昨日グラタンさんからいただいた来週の火曜日の件なんですけど」
グラタン「ああ、うん」
「昨日はあんなことお伝えしましたが、やっぱり一緒にご同行させていただいてもよろろしいですか?」
グラタン「え?あ、いいの?だって、別件があったんじゃなかったっけ?」
「いや、せっかくグラタンさんがこちらにいらっしゃるので、やっぱり、ぜひお供させてください。お願いします……、もちろん、もしよければなんですが……」
グラタン「ああ、いいよ、こちらこそ頼むよ。じゃあ、火曜日ね。またスケジュールはメールで送るわ」
「ありがとうございます!それは、よろしくお願いいたします!失礼いたします」
何か胸の中のつっかえが取れた気分。だが、その後も決してオゴらぬよう自分に言い聞かせる。お客様からのお電話は丁寧に受け答え、内勤業務の方の仕事も積極的に手伝う。少々極端だったかもしれないが、そのくらいの方が今はちょうどいい。
――
昼。
ほうじ茶「おい、やきいも、昼メシ行こうぜ」
「あ、はい」
先輩社員であるほうじ茶さんから声を掛けられ、慌てて財布を手に取る……のだが。
「……あれ、おかしいなあ?あれ?」
ほうじ茶「おい、どないしたん?」
「財布が……あれ?ない、なあ」
上着を探しても、財布がない。カバンの中を探っても、財布が見つからない。
「おかしいなあ……」
ほうじ茶「家にわすれたんやないか?」
「そうなのかなあ。もしかしたら、そうかも、しれません」
ほうじ茶「ええわ、貸してやるからさ。でも、1,000円までやぞ?こっちかて苦しいんやからさ(笑)」
「あ、すみません。ありがとうございます。申し訳ないです……」
ほうじ茶「お前、なんか今日変やな。朝から妙に気を遣って」
「い、いえ……」
社内にある食堂に向かい、昼ご飯を食べる。
ほうじ茶「最近、すっかり寒くなってきたなあ。もう、コートが必要やろ」
「……そうですね。ええ、そうですね」
ほうじ茶「布団から出るんもだいぶ億劫になってきたしな」
「……そうですね。本当にその通りです」
ほうじ茶「地球も熱うなっている言うけど、冬はやっぱり冷えるもんなあ。あ、温暖化って冬が寒くなるんやったっけ?」
「……そうですね。そう思います」
ほうじ茶「……お前さあ」
「……はい?なんですか?」
ほうじ茶「今日の午後の予定は?どうなってんの?」
「え?今日ですか?ええっと……今日は一日内勤ですが」
ほうじ茶「そうか。やったら、一回財布を探してきな」
「え?」
ほうじ茶「お前、財布が気になってしょうがないやろ?俺がお前だったら、絶対気になってるわ。ええよ、課長は今日おらんし。気になるんやったら、俺から課長にやんわり言うとくから」
全てを見透かされていたようだった。食事中も、私は財布が気になってしょうがなかった。家にあればいいけど、もしもなかったとしたら?そう思ったら怖くてしょうがなかったのだ。
「……すみません、ありがとうございます。恥ずかしいかぎりです」
ほうじ茶「ええって。遅くなるんやったらとりあえず電話してくれたらええわ」
「会社にはできる限り早く戻りますので」
ほうじ茶「とりあえず、1000円札渡しとくわ。まあ、多分家にあるんやろうけど、万が一何かあった時に文無しじゃ困るやろ」
「すみません……それじゃ念のため。お借りいたします」
ほうじ茶「利子はつけてくれてもええで」
「はい。財布が見つかった際には、いくらでも」
と、言葉に甘えて1000円札を受け取り、一度最寄り駅に向かう。本当に、 先輩が人として大きく見えた。もしも逆の立場だったら、同じことができるだろうか?
――
オフィスを出て、ひとまず駅に向かう。
この段階で、財布のありかとして想定できるのは7パターンだった。
①自宅
②自宅から駅までの通勤路。
③自宅最寄り駅内
④電車内。
⑤会社最寄り駅内。
⑥会社最寄り駅から会社の通勤路。
⑦会社内。
会社から駅に向かう最中、少しずつ事態の深刻さを感じながら、それでも極力冷静に頭を働かせた。
(最後に財布を使ったのはいつだろう?冷静に思い返せ。……そうだ。朝だ。朝、会社からの最寄り駅で、交通ICカードにチャージしたんだっけ!これは明確に記憶している。ということは……)
①自宅
②自宅から駅までの通勤路。
③自宅最寄り駅内
④電車内。
⑤会社最寄り駅内。
⑥会社最寄り駅から会社の通勤路。
⑦会社内。
ということになる。
このように、答えが絞られたとしても、決して喜ばしいわけではない。選択肢が減ることは、答えに近づいていると同時に、ある意味で恐怖を増強させた。この時の心理状況としては
(絶対的に有力なのは、駅の中に財布があること。でも――もしも、もしも、もしも会社最寄り駅内にないとしたら……?)
通勤路と会社内では一度も財布を使用していない。この範囲での確率は限りなく低いと思っていた。駅内にない場合ーーは想像したくない。一方で、駅員に訪ねたときには
財布ですか?ああ、届いていますよ。 ちょうど、あなたが言うような財布が!ちょっと待ってくださいね。
と、言ってくれるようにも思っていた。
――
駅。
「すみません、朝財布を落としてしまいまして、こちらに届いておりますか?朝8時くらいだったんですが」
駅員「財布ですか?少々お待ちください」
駅員室に入っていく駅員。祈るように帰りを待つが――駅員さんはすぐに手ぶらで帰ってきた。
駅員「……財布は、届いてないですねえ」
「……え?」
駅員「誰かが拾われたら、ここに届くことになりますので」
「あの、そこの、そこのところで朝にチャージしたんですよ。そう、今日の朝の8時ごろです」
駅員「……届いてないですね」
「そう……ですか……。朝の8時ごろなんですが……」
駅員「ええ」
数秒の間、沈黙が続く。
「……あの」
駅員「はい?」
「一度駅の中、ちょっと見させてもらってもいいですか?」
駅員「は?」
「いや、一応見ておきたいかなあ、なんて」
駅員「……いいですよ。どうぞお通り下さい」
と、改札を開けてもらう。
(……)
ここで財布が見つかればいいのだが、残念ながら財布は見つからない。当たり前である。この時の状態としては、血の気が引いたというのは表現に適さない。この時の私は、ただ呆然とし、白昼夢の中にいるような感覚であったように思う。突然の絶望は、実感が伴うのに時間がかかるようだ。
「――すみません、ありがとうございました」
駅員「はい」
「……あの、一応、交番にも聞いてみたいので、ここから最寄り駅の交番を教えていただけますか?」
駅員「ここから一番近い交番ですと、とりあえず、★番出口を出ていただいて―― 」
「ありがとうございます」
と、私は頭を下げて、駅員さんが教えてくれた★番出口に向かう。時間の経過とともに、私は早足になっていった。早足になっても何一つ事態は変わらない。でも、財布がなくなってしまったという実感が伴うにつれて怖くなり、落ち着かなくなっていったのである。
最有力候補だった駅内に財布がなかった。そのショックはあまりにも大きかった。
①自宅
②自宅から駅までの通勤路。
③自宅最寄り駅内
④電車内。
⑤会社最寄り駅内。
⑥会社最寄り駅から会社の通勤路。
⑦会社内。
⑥と⑦が残ってほしく無かった。⑥だったら限りなく可能性が低くなるだろうし、⑦だったら見つからないうえに、別の怖さも秘めている。(あえて文章にはしないが)
ともかく、最後の希望は、
交番に行って、善良な府民が我が通勤路で財布を拾い、それを交番に届けてくれた
という可能性だけ。正直、なんと心もとない希望だろう。わざわざ財布を拾い、わざわざ交番まで届けてくれるものだろうか?
交番に向かうにつれて、私のわずかな希望がさらに望み薄であると思えた。それは、
私が向かっている交番が、私の通勤路からかなり離れていたから
である。
(こんなに離れた交番まで、普通届けてくれるだろうか……?)
――
お巡りさん「……今のところ、こちらには届いていないですね」
「あっ……そうですか……」
この段階で、ようやく白昼夢から覚め、完璧な絶望感に襲われる。そして、今後具体的に訪れるであろう、各種問題事項がじわじわと頭の中をよぎる。
「……届いてないですか(本当に落とした。ない。財布がないことが明確になった。本当にヤバい)」
お巡りさん「そう、ですね。現段階だとまだ届いてないですが……。警察として、遺失届書を作製したいと思いますが」
「……はい。お願いいたします(財布の中、いくら入ってたっけ?この前お金おろしたばっかりだったから――。あと、接待の時の領収書が入ってたっけ。精算できないじゃん)」
お巡りさん「これから、やきいもさんがなくされた財布の特徴について質問をさせていただきます」
「……はい。(あ、家の鍵、財布の中に入れてたんだっけ。じゃあ、財布無いと家に入れないじゃん。笑えるんですけど)」
お巡りさん「まず、お名前と住所を」
「……はい(クレジットカードはやく止めないと。止め方わかんないけどね(笑)……あ、財布に免許も入ってんじゃん。免許と家の鍵――超笑える。家に帰ったら荒れてたりして(笑)。でも、それだったら家の中に入れるから好都合だな、なんつって。わらえる)」
お巡りさん「財布はどんな形ですか?また、財布の中身ですが、記憶されている範囲でいいので、できる限り詳細に教えていただけますか?」
「はい……ええっと……(おわった。最悪。人生終わったかも。本当、最悪。会社に言ったら笑い話どころか自己管理能力が低いってことにされるんだろうな。どっちにしろ、もう会社行きたくないんだけど。家帰って寝たい。あ、家に入れないんだ。死んでしまえよ。もう、何もかもめんどくさ」
お巡りさん「カードは、何枚くらいありましたか?できればどんなカードが入っていたかも明確にお願いします」
「そう、ですね……(なんでこんなことに……リセットボタンはどこ?リセットボタンはどこ?リセットボタンは……?)」
これもすべて、朝からぼんやりしていた私の過失。ぼんやりしたのはなぜ?それは、私の昨日から慢心があったから。反省したとしてもすべてが遅い。全て自分の責任で、すべてを失った。ざまあない。
拾ってくれた方、いらっしゃるのであれば、財布の現金は喜んですべて差し上げます。だから、お願い、それ以外のものは……助けてください。
――
お巡りさん「――はい、ありがとうございます。それでは、ひとまず財布の届け出がありましたら、やきいもさんにご連絡させていただきます」
「……はい。お願いします」
お巡りさん「あ、お時間大丈夫ですか?」
「ええ。大丈夫です(あ、そういえば昼休みに抜けてたんだっけ)」
お巡りさん「近くにもう一つ交番があるんです。そこもやきいもさんの通勤路の近くにありますんで。そちらに一度電話で聞いてみますね」
「……はい。お願いいたします」
電話をかけるお巡りさん。
お巡りさん「あ、すみません、★★駅前交番のものですが。財布の落とし物を確認したく」
「……」
お巡りさん「はい。時間帯は朝の8時ごろ」
「……(財布無くなったのも、全部自分のせい。全てはつながっていたんだ。すべて受け入れなきゃ。いつか笑い話になるのかな。少なくともいまは無理だけど……)」
お巡りさん「中には現金約〇万円。小銭少々。カードは4枚前後で、種類は――」
「……(これは夢じゃない。夢になってくれない)」
お巡りさん「小銭入れの中に鍵が1つ」
「……(すべては自分のせい)」
お巡りさん「――え?ええ。はい。うん。そうです……はい。ええ、ええ」
「……?」
お巡りさん「――あ、そうですか。まだそちらに?本署には行ってない?」
「……(本当に)」
お巡りさん「わかりました。そちらにまだあるということですね」
「……(ダメ……もう、泣きそう)」
お巡りさん「はい。では、またそちらに持ち主さんがうかがいますので。ええ、やきいもさんです」
ガチャ。
お巡りさん「――やきいもさん」
冷静にふるまうお巡りさん。
「……はい」
言葉を待っている間、心の中で今にもあふれだしそうな感情。
お巡りさん「財布ですが、見つかりましたよ」
――
「あ、もしもし、ほうじ茶さん。すみません、お昼休み中に」
ほうじ茶「おおどうした?財布、家にあったか?」
「い、いえ……。あの、今警察の方にお世話になっているんですが」
ほうじ茶「あ、そうなん!?え、なんで警察?まあええわ。それで、見つかったんか?」
「あの、おかげさまで……もう……。あの、それで大変恐縮なのですが、手続きなどで13時半ごろまでかかりそうでして――」
ほうじ茶「ああ、ええよええよ。よかったなあ、ほんまに見つかって」
「ご迷惑を、本当におかけしました」
――
お巡りさん「通勤路の途中の交差点に落ちていたみたいです。朝9時前には拾い主が交番に届けてくれたようで。やきいもさんの会社のすぐそばにある交番⓶の方でしたね。とりあえず、財布は確実にあります。ひとまずこちらですべき対応は終了ですので、これから交番②に取りに行っていただいてもよろしいですか?ここからタクシーで行っていただいても――いや、やきいもさんの会社の近くなので、歩いて行っていただいたほうが良いかもしれませんね」
ということで、お世話になった交番のお巡りさんに心からお礼を伝え、私は歩いて別の交番②に向かった。
お巡りさん②「では、中身の確認をお願いします」
「はい――。はい、大丈夫です。すべて元のとおりです」
家の鍵、各種カード 、現金、領収書など、すべて元のママであった。奇跡かと思わずにいられなかった。
お巡りさん②「そうですか。では、こちらにお名前のご記入を ――はい。これで以上となります」
「本当に、ありがとうございました、あ、あの、よく聞く謝礼などの対応を是非したいのですが」
お巡りさん②「ああ、いや、それは大丈夫です。拾い主の方がそういうのは必要ないとおっしゃってましたので。こちらからも、やきいもさんに拾い主さんの情報を開示することはできませんので」
「あ、そうですか……わかりました。何から何までお手数をおかけしました」
深々と頭を下げ、交番を出る。
本当に、拾って交番に届けていただいた人には、いくら感謝してもしきれない。決して届かない気持ちであるのが残念である。
――
会社に戻る。
ほうじ茶「おお、早かったなあ」
「あ、本当にお手数をおかけしました……おかげさまで無事に見つかりました。1000円札。お返しいたします。本当にありがとうございました」
ほうじ茶「あいよ。それにしても、ツイてるなあ、お前。中身も無事なんてなあ。モッテル男は違うなあ」
「いえ、そんなことは全く……大変に申し訳ない次第です」
ほうじ茶「まあ、みんなも心配してたからよかったなあ」
「みんな?」
と、周りをみると、ニヤニヤした表情でこちらを見ている人が数名。おそらくほうじ茶さんがネタとして話していたのだろう。
「すみません、大変に恥ずかしいかぎりです。もう、今回の件は、私の思いあがった態度によるものだと思います。最近調子にのっていて…昨日からそのことが気になっていたのですが…多くの人の助けの元にあるのだと…そう思わないと…今までのオゴリの気持ちを捨てて頑張らせていただきます」
ほうじ茶「ナニ言うとるん?まあええけど、とりあえず、これだけいろんな人心配させて、無事財布見つかったんやから、ちょっとくらいオゴッてくれてもええんやで(笑)」
「オゴるなんて、私には、できません。本当に」
ほうじ茶「って、そこはオゴらんのかーい。ええオチついたやないかい」
お後がよろしいようで。
本当に、この日のことはある意味でとても幸福な体験であった。この日のことを忘れずに頑張りたい。平穏な今日に感謝です。
いただいた善行を決して忘れず、己の慢心を多いに警戒すべく、この日記を残す。少しでも反省が必要なときには、長文だが我慢して読み返すべし、と自分に言い聞かすのであった。
まくら日記(芝浜について)
「おいッ、おい四十八両あるぜ!」
「まあ、大変なお金だねえ……どうするい、おまえさん?」
「なによゥ言ってやんでえ、どうするってことァねえじゃねえかなあ、おれが拾ってきたんだ、おれの銭だあ、商売なんぞに行かなくたって、釜の蓋でもなんでもあくだろう、ええ?へっ、ざまあみやがれってんだ。ありがてえありがてえ――」
麻生芳伸編「落語百選 冬」『芝浜』より
ええ、毎度お忙しい中、そちら様の指をこちらのどうしようもなくバカバカしいブログにお運びいただき、ありがたく御礼申し上げます。いくら頭を下げても足りないくらい――心よりそんなことを思っている次第でございます。今日は仕事をさぼって、昼間から日記を書かせていただきます(正確に言うと、日曜日に神戸マラソンに参加し、次の日を休養にするために有休を取っていたのだが、結局日曜日は神戸マラソンに参加せず、体力有り余って月曜日を休んでいるわけでやんすが)。
いやあ、あっという間に今年も年末に近づいてまいりました。今年ももう、1か月と10日程度すぎれば終わってしまいます。実に早いものですね。年々、そんなことを思うペースが速くなったのは、私が年を取った証拠でしょうか。そう思うのは少し早い気もしますが――。
ところで私、年末になると、いつもふと思い出してしまうお話がございます。それは、
芝浜
という古典落語でございます。
魚屋としての腕はいいが酒がどうしてもやめられない男と、その女房のお話。男は酒のせいで仕事にも支障をきたし、挙句仕事に行くこともやめてしまう。もはや食い扶持すらなくなり、女房からは仕事をするよう促される。いやいやながら魚を仕入れるために芝の魚市場に向かうのだが、来るのが早すぎて市場はまだ開いていない。仕方なく、近くの芝の浜(芝浜)で時間をつぶしていると……男はふと、海中で揺れる『革の財布』を見つける。拾って中をみると、そこには目をむくような大金が入っていた――。すっかり有頂天になり、その金を使って遊んで暮らそうとする男、しかし、そのお金を使うことをどこかためらう女房。
――さて、その女房がとった行動と、夫婦の行く末とは?
ざっとこんなあらすじでしょうか。ちょうど最後のオチが大晦日の夜ということで、この時期になると聴きたくなるんですよね。あと、酒を辞めたいときにも聴きたくなります(笑)
大変面白い話ですし、お話の構成も大変に見事。古典ながら現代でも十分に楽しめる内容となっている。聴いたことがない人は、ぜひ一度聴いてみてほしいです。まあ、今のご時世、30分や1時間もあれば、様々な娯楽で楽しい時間を過ごすことができますから、わざわざ落語で大事な時間を過ごす必要性などないわけですが。でもまあ、心と時間にゆとりのある方はどうぞ。
さて、あらすじに記した通り、大金が入った財布を拾うことで、拾い主の人生が大きく変わっていくわけですが――この芝浜を聴いていると、いつも疑問に思うことがある。
それは、実に些細なことではあるが、
財布を落としたのは、いったい何者だったのだろう?
ということ。落語家によって変わるが、財布に入っていたのは30両とも48両とも50両ともいわれる。現代でいえば、500~1,000万円弱の貨幣価値らしい。
結局、このお金の持ち主は、最後の最後までストーリーには現れない。現れないからこそ、この大金は御役所から正式に「持ち主不在」ということとなり、最終的に夫婦のものになるわけだが。
それにしても、お金の落とし主、いったい何者だったのだろう?まあ、作り話なので答えなんてないのだけど、ちょっと考察してみたい。
あ、私、歴史学者でも落語研究家でもない、ただのド素人ですので、深い考察なんてしませんからね(イイワケ)。
①持ち主は殺されてしまった説
一番最初に思いついた。これであれば、最終的に持ち主が御役所に現れなかったのも、まあうなずける。
……しかし、殺されたとなると、殺した人が財布をそのまま置いていった意味が分からない。普通だったら金を強奪するんじゃないかしら?(まあ、普通は殺さないけど)
――それに、よく考えたら芝浜に死体がなきゃおかしいか。
……いや、財布だけが殺された拍子に懐から抜け、波にさらわれてしまったとしたら?そんな都合よく懐から抜けるか知らんけど。
もしくは、大分前に殺されてしまっていて、財布はしばらく海をさまよっていたけど、主人公がたまたま朝早く芝浜に来た時に、浜辺に流れ着いたとか?ありえなくはないけどね。
②盗っ人の失態説
例えばどこかから盗んだお金。盗人はすぐに使うと目立つからと、しばらくどこかに隠しておいて、ある程度時間が経ったらそのお金を回収しようとした。盗人はどこに隠したらいいのかわからなかったので、とりあえず芝の浜辺の砂の中に埋めておいた。だが、波にさらわれ、金が入った財布がいつのまにか浜辺に流れてしまった。
盗人が隠し場所に行ってみると、財布が無くなっていて慌てる。しかし御役所に届けようにも届けられない。泣く泣く、盗んだお金をあきらめた。
……うーん、ちょっとつらいな。いくら昔の人でも、砂の中に埋めるなよ、って言いたくなるし。でも、盗人が与太郎(落語に出てくる愚か者)みたいなやつだったら、ありえなくはない。
③鼠小僧説
誰もいない冬の夜明け前の芝浜、そこで物思いにタバコを吹かす男。(酒の飲みすぎで顔色が悪いだけなのだが)全身から感じる憂いに、鼠小僧は何かを感じる。
(……この男、死ぬ気だな)
義賊である鼠小僧は、懐から革財布を取り出す。これは、先ほど悪代官の家に忍び込み、盗み取ったもの。ちょうど、夜明けに男が気づくようなところへ、静かに投げ入れた。
(……こんな金でも、お前さんの役に立ったら、俺の存在意義があるってものよ)
鼠小僧は男に気づかれぬよう、その場を静かに去っていった。
……これもちょっと無理があるかしら。マンガみたいな勘違いである。まあ、落語も作り話だしね。
まあ、ほかにもいろいろ考えられるだろうけど、こういうことをたまに考えてみるのも面白いものである。
そういえば、国語の授業でこういうの、あったよなあ。『三年峠』や『ごんぎつね』の続きを考えたなあ。
……ところで、なんで急にこんな日記を書いたのか。
それは、また次回にて。
【追記】
気になって、芝浜の財布について言及している落語噺があるのか調べてみると、『芝浜異聞』というお話がヒットした。柳家小満ん氏が演じている模様。音声は見つからなかったけど、「財布の落とし主を見つける噺」のようだ。ざっと調べてみる限りだが、多分、私が妄想した3タイプとは違うみたい……聴いてみたいなあ。
夢となれ、2017年神戸マラソン
予想していることはまず起こらない。起こるのは、たいてい予想しなかったことだ。
ベンジャミン・ディズレーリ
数日前。
取引先の商談室。
「それで、どうです?最近の調子は?いよいよ日曜日ですね」
塩こうじ「ああ、神戸マラソンね。……それがね、やきいもさん」
「?」
苦笑いを浮かべる塩こうじさん。
塩こうじ「実は私、DNS(スタート前の棄権。 「Did Not Start」の略)しようと思ってるんですよ……」
「え!そうなんですか?それまたどうして――」
塩こうじ「うん。なんだか1か月くらい前からふくらはぎが本当に痛くて……走ると、4~5㎞あたりでもう、痛くて痛くてしょうがないの」
「……ええ」
塩こうじ「行きつけの整体師に相談したんですけど、いろいろ遠回しに『出ないほうが身のためだよ』って言われてしまってね」
「そうですか――。残念ですね。神戸でお会いできると思ったのに」
塩こうじ「まあ、来年2月も別の大会に出る予定ですから、そこで再起を図りますよ。ともかく、私の分も頑張ってください」
「頑張ります。いずれまたどこかで一緒に走りましょう」
塩こうじさんは、取引先の社長さんである。30代前半ながら、会社を双肩に担っている若大将。それと同時に、マラソンについて話すことのできる数少ない身近な人でもあった。
9月ごろ、塩こうじさんから
「11月19日に開催される神戸マラソンに出るんですよ」
という言葉を受け、
「実は私も神戸マラソンに出るんですよ!」
と、意気投合。私は私で11月19日に開催される神戸マラソンに出る予定だったのだ。
この大会で塩こうじさんと会えると思っていたので、大変に残念な心地。まあ、塩こうじさんの分もしっかり走らねば、と改めて気持ちを燃やす。なんたって、神戸マラソンは、私にとって本年最後のフルマラソンなのだから。しっかり有終の美を飾って来年につなげたいところである。
――
金曜日。
21時まで残業し、くたくたになりながら帰宅。帰り道、通勤路を走る人たちがちょろちょろと目に入る。
(気合入ってんなあ。この人たちは大阪マラソンに向けて練習してんのかしら?それとも、神戸マラソンの最終調整かしら?……おれも頑張らないとなあ)
などと考えながら、ふと、あることを思う。
(あれ、そういえば、神戸マラソンって、前日受付が必要なんだっけ?)
(イメージ)
マラソン大会は、当日の前日や前々日に、事前受付を行う。前日受付では、ゼッケンや参加賞等を受け取るのだ。ちなみに大きな大会では、前日に大会イベントも合わせて行われるため、結構にぎわっている。出店も結構出ているので、それを見るだけでも楽しい。
ところで、前日受付は、大会が行われる開催地で行われる。そのため、地方で行われる大会の場合、遠方からの参加者は事前受付がなかなか難しいことも多い。その点を考慮し、地方大会では事前に郵送でゼッケンや参加賞が送られてくることもある。
だが、神戸マラソンは都市部開催だし、大規模な大会なので、前日の土曜日に事前受付を行っているだろうと思われた。金曜日にそんなことを思い返す時点で、気持ち的にかなり出遅れているのだが。
(明日、一回神戸に行かないといけないのか。何時から受付してるんだろう……って、あれ……?)
私は事前受付のことを考え始め、妙な違和感に襲われる。
(あれ?……なんかおかしくね?)
家に辿り着く直前だろうか。私は事前受付があるにしても、あるモノが己の手元にないことに気が付く。
(あれ、なんでアレがないんだろう……?)
家にたどりつき、念のため郵便受けを覗く。しかし、やはりあるモノは届いていない。
あるモノとは、
事前受付の際に受付に渡す「参加者ハガキ」
である。
大会数週間前に、運営側から参加者だけにこのハガキが送られてくる。このハガキには、事前受付の情報なども記されているわけである。そして、そのハガキはゼッケンや参加賞を受け取るための引換券にもなっている。
そんな大事なハガキが、私に届いていない。コレイカニ……?
(運営側のミス?……それとも――)
私はスマートフォンを取り出す。調べたのはランネット(※)の申し込み履歴である。
ランネットとは
マラソン情報が集う総合サイト。マラソン大会の参加についても、このランネットを通じて申し込むことが多い。ホテルも宿泊総合サイト(「じゃらん」とか)を通じて予約するでしょ?就職活動も就職サイト(「マイナビ」とか)を通じてエントリーするでしょ?マラソン大会もおんなじ感じなのよ。
……
……
「うそ……」
私はランネットの大会エントリー履歴を見て愕然。
(ランネット エントリー履歴より)
我ながら実に信じられないことであるが……私は、私は、
神戸マラソンの抽選に落選していた
ようである。
……いや、ちょっとまて。そんなの納得できるか。とんだミステリーである。
なぜ私は落選しているのに、大会を迎える2日前まで「当選していた気持ち」でいたのであろう?
約半年間も自分で自分をだまし続けたというのか。そんなことはあり得ない。
(だって、大会運営側から「『当選』しました」ってメール来たじゃん!)
6月ごろ、大会運営側から当選したというメールが来ていた。それすらも私の幻想だったと言うだろうか?
そこで、改めてメールボックスを調べてみると……
6月、神戸マラソン運営側から届いたメール
……私は確かに当選している。しかし、なぜか、ランネットでは落選となっている。これはどういうことだろう?本格的なミステリーである。
ただ、神戸大会運営サイドやランネットに文句をつける前に、私は考えられる「あること」を想像する。そして、今一度、運営側からきたメールをよく見てみる。
(……もしかして)
「おれ、ちゃんと入金したっけ……?」
記憶をたどってみるが、入金した記憶がない。
勝手にカード引き落としと思っていたのだろうか……?信じられないことだが、私だったらやりかねない。私以外の人間だったら「嘘だろ」と言いたくなるところであるが。私はそういう人間である。
――話を整理する。おそらく、こういうことだろう。
私にとって本年最後のフルマラソンは、参加する前からすでに終わっていたようである(というか、そもそも参加する権利すらなかった)。もはや自分の間抜けっぷりに、自己嫌悪を抱く余地すらない。あまりに予想外なことに笑ってしまったのであった。
ともかく、なんだか拍子抜けし、体から一気に力が抜けた金曜日の夜でした。そして、金曜日の夜は実にだらしなく過ごしたのであった。当然、土曜日も前日受付に行くことなく、衣替えやら掃除などして過ごしたのであった。
11月19日に神戸マラソンに参加される皆様、頑張ってくださいね。中には眠れぬ夜を過ごされる方もいることでしょう。でも、マラソンは参加するだけでも意義があるのです。こんなアホからすれば、心からそう思うわけです。参加される皆様は、それだけで実に美しいのです!頑張ってください!
……それにしても、取引先の塩こうじさんになんて言おうかなあ。というか、同僚にも「神戸マラソンに出ます」って言っちゃったんだよなあ。月曜日は自分へのご褒美ってことで、有休取ってんだよなあ(笑)
嗚呼、恥ずかし(心から苦笑)
切る人が切れば、見る人が見れば
人は己を美しくして初めて美に近づく権利が生まれる。
約2か月前。
「うしろはこんな感じになります」
「はい、大丈夫です」
「何かつけます?」
「いや、大丈夫です」
「お疲れ様でした~」
「ありがとうございます」
「ありがとうございました~、はい、お待ちの大麦さん、どうぞ~」
私の散髪を終えた理容師は、すぐに次のお客を相手に接客を開始。
家から歩いて5分のところにある理髪店。スピードも速く、料金もお手頃。出来も申し分ない。普段は5万円/回の美容院に行っていたが、今後はこの店を愛用させていただこう。
その数日後、ツレと会うと――
「あれ、髪切った?」
「うん、まあね」
「――」
「……なに?」
「今回は床屋だったんだ」
「……え?」
「違う?」
「違わない。……なんで、わかるの?」
「やっぱりね(笑)だと思った」
「本当にわかったの?」
「そりゃわかるわよ」
「……超能力者?俺全然わからないんだけど」
「本当に分かんないの?」
「どこを見て思ったわけ?」
「教えないよ(笑)」
残念ながら、私はおしゃれのセンスを一切持ち合わせていない。正直、髪を見てもその人が美容院を使ったか床屋を使ったかなんて、まるで検討がつかない。
……しかし、見る人から見れば、散髪後をみただけで、床屋に行ったか美容院に行ったかがわかるものなのだろうか?ツレは結構外見に気を遣っている人なので、特別に分かったのかもしれない。しかし、もしも普段会う人も、ツレと同様、美容院で切った場合と理髪店で切った場合との見極めがつくとしたら……それは結構怖い話である。
男のくせにそんなこといちいちに気にすんな!男は内面勝負じゃ
と思う一方、
わかんないけど、次は美容院に行った方がいいかなあ……
なんて思ってもしまう。うーん、難しい年ごろなのね。
――
そんなこんなで、今日。
前回理容店に行ってから約2か月がたち、再び髪がびよびよと伸びたことを感じる。朝に鏡を見て、なんとなく
……うーん伸びたなあ
と思いながら、頭をシャカシャカする。
(ソロソロ、切るか。)
そんなあいまいな基準で、仕事終わりに髪を切りに行くことにした。今日は仕事が忙しかったので、予約は21時すぎでも受け付けてくれるところを探す。もちろん、時間帯以外の条件として、
美容院であること
を設定。
――
21時、仕事終わりに予約した美容院へ。
髪を切ってくれたのは20代の女性。気さくな雰囲気の方。
「仕事終わりですか?サラリーマン大変ですね~」
とか
「手元にクッション置いてください。このクッション、人気なんですよ~」
とか
「後ろ髪がすごい癖が強いので、この部分は思い切ってばっくり切りますね!」
といったような言葉が印象的だった。
――
約30分で散髪終了。
「うしろはこんな感じになります」
「はい、大丈夫です」
「何かつけます?」
「いや、大丈夫です」
「お疲れ様でした~」
「ありがとうございます」
出来をあらためて見る。
……正直2か月前に理容店で切ってもらったときとどう違うのか、私にはあまりわからなかった。まあ、自分にはわからなくても、わかる人にはわかる……のだろうか。
次にツレにあった時、今の私の頭はちゃんと美容院に切ってもらった、ってわかるのかしら。
……なんとなく「あ、今回は美容院で切ったんだ」って言いそうな気がする。これはわかる気がする。何でかはわからないけど…何でだろうね。
そんな月曜日でした。――さて、明日も頑張ろう。
タイトルなんてあるわけナシ
今日は資格試験だった。
――いやあ、ようやく終わった。今年一番の重労働だったように思う。頭が良くないので、体を動かすより頭を動かしているほうがかなりエネルギーを使う。
個人的なことながら、これまでの人生、試験を受けると、大体
今回はダメだったな
とか
今回は受かったな
というのが試験終了後にわかってしまっていた。唯一わからなかったのは、大学受験のころだったかな。大学受験のころは――(ながくなるのでやめるが)試験後に合否の予想がある程度ついていたわけである。
――でも、今回の試験は正直よくわからん。
試験勉強の為に会社を数日休んで勉強した(いつか、そんな日記も書いたなあ) 。それ以外の土日も、勉強に時間を費やした。平日も酒を断って、仕事終わりに勉強したっけ。我ながらよく頑張ったと思う。
――でも、本来ならば、「数週間前から頑張っている」時点で既に対応がかなり遅れているような試験内容だった。要するに、ちょっと難しかったんです。
落ちているといわれたら、まあしょうがないか、って思うし、受かっていたら、嗚呼受かっていたか、ヨカッタヨカッタ――て思うだろう、と思う。でも、今回は本当によくわからない。そんな試験だった。
……受かっていてほしいなあ。でも、わかんないな。こんな気持ちは大学受験を終えた高校生ぶりの感覚。高校生の頃も、大学受験がうまくいったのか、その当日はよくわからなかったなあ。こんな気持ちを味わえるから、試験って楽しいんですよね。心に潤いが与えられて楽しかったです。(結果は11月下旬。気になる日々がまた続く)。
オチもなく、内容もなく……今日は久しぶりに酔うぜ~って言ってみたり。
明日からまた気を引き締めて頑張ります。
走れば走るほど(しまだ大井川マラソンinリバティ)
学べば学ぶほど、自分が何も知らなかったことに気づく、気づけば気づくほどまた学びたくなる。
10月29日。日曜日。
朝、5時に起床。この日は静岡に宿泊。それは、「しまだ大井川マラソン」があったため。
昨晩はなかなか眠れなかった。どうしても、マラソン大会が実施されるかどうか気になってしようがなかったからである。当日の朝になり、予定通り実施する旨、公式HPより発信されていることを知る。ここでようやく、走るためのスイッチを入れることができた。
ホテルで朝食を済ませ、着替えなどの準備を済ませたら、いざ出陣!
7時30分ごろに会場最寄り駅である島田駅に到着。到着すると、エキナカにはすでに多くのランナーが所狭しにいらっしゃる。会場にさっさと向かって行く方もあれば、雨を前に進むのを躊躇する人も。(私は躊躇するタイプ。)
約10分くらいウダウダしてからようやく会場に向かう決意。と、その前に、駅前にある栄西像にご挨拶。
歴史の授業で習った通り、鎌倉時代に臨済宗を開いた超有名人。その一方で、実は中国から茶を飲む習慣を日本に持ち込んだ人であるということは、あまり知られていない。茶世界のバイブルである『喫茶養生記』を記し、ニホンノデントウである「茶」の文化をこの国に根付かせるきっかけとなった伝説の人。(だから、茶産地である島田市に銅像があるんですね)
まさに宗教に関係なく尊敬できる人物。そんな栄西様に、今日は満足のいく走りができるよう、願掛けをした(知らんがな、という栄西氏の声が聞こえた)。
――
さて、歩いて10分ほどして会場に到着。
(……うわ)
会場について早々、私はある後悔に駆られた。それは、
雨具を何も用意していなかったこと
である。
みんなカッパやらウインドブレーカーやら、ゴミ袋で雨対策をしている。まあ、雨降りの中を走るうえでは基本的なことであろう。にもかかわらず、私は晴天の時と同じような身軽な格好。アホまるだしである。(※)
(※)全員が全員、雨具を身に着けているわけではない。だが、身に着けない人はちゃんとした理由がありそうな人ばかりだった。そして、私は、十中八九着るべき人間なのに、単純に忘れてしまった大ウツケなわけである。少なくとも、みんなが雨具を身に着けている姿を見て、私はそう思った。
到着早々、関係ない所で気持ちが沈んだ(まあ、自業自得である)。落ち込みながら軽くストレッチ。
【コンディション】
気温: 15〜17℃
天気: 雨(雨→土砂降り→雨→小雨→雨→土砂降り→小雨→雨→土砂降り――を繰り返す)
風: 穏やか。ほぼ無風?
なお、今回のコースはこんな感じ。
折り返し地点を挟むと、対称的に見える。高低差は少なく、比較的走りやすいコースと思われる。
さて、今回の目標は、
「絶対に完走」「歩かない!」
の2本を掲げた。これは、決して小さな目標とは思わなかった。それは、雨の強さ次第で先行きが全く読めなかったからである。
台風の影響から、おそらく、スタート段階よりも雨が弱くなってくれる、ということは考えづらい。天気は時間の経過とともにどんどん悪化していくことだろう。すると、晴天の時には許されていたことが、今回の天気では命取りになることも十分に考えられる。だからこそ、完走すること、そしてどんなことがあっても歩かずにゴールを迎える、ということを第1に考えた。それくらい、この日は慎重になっていたわけである。(まあ、雨具を忘れて精神的ダメージを受けていたことも多少関係するが)
さて、スタート!
〇スタート~10㎞ 5:55/km
スタート後は市街地を駆け抜ける。雨天なのに声援を送ってくれる方々の気持ちに感謝。しかし、気持ちを高ぶらせすぎず、ゆっくり走ること最優先に意識。
4㎞程度走ると、市街地を抜け、マラソンコースに突入。大井川沿いをせっせと走るコースとなっていく。
さて、5㎞あたりの最初の給水ポイントで惨事。なんと、雨が強くて給水ポイント前の道路が完全に水浸しになっていたのである。
ランナーたちは悲鳴をあげながら隙間道を走ったり、コースアウトしながらその水を避ける。おそらく、給水しそびれた人も多かったことだろう。
(……こりゃ大変だぞ。中止になることも有り得るだろうな)
出だしから嫌な予感。しかし、こんなのはほんの序の口であったことを後々知ることになる。
――
市街地の沿道にはたくさんの人が応援だったが、マラソンコースに入ると、応援は一気に減る。それくらいに沿道の足場は悪く、雨を防ぐものがほとんどなかったわけである。そんな中でも応援してくれる方々もおり、心より御礼。応援の絶対数は少ないものの、だからこそ、一つ一つの応援が響く。
その応援も途絶え途絶えになると、もう雨が道を打つ音と、ランナーの足音のみとなる。雨は不定期に強弱をつけながら振るため、ランナーを一喜一憂させていた(まあ、私の話ですが)。
(天気は一向に良くならない。……本当に、中止になるんじゃないかしら)
気持ちが重くなりながら、もうすぐ10kmかというタイミングで最初の助っ人が登場。
荻原健司氏。スキー界のキング。今回の大会のゲストである。上がり切らない気持ちを高めるべく、この方にハイタッチ!おかげで、なんとなくもやもやしていた不安が払拭されました。
しかし、運営サイドもこんな序盤でキングオブスキーを送り込むとは。ランナーの心境を察した見事な判断と思った。
〇11~20㎞ 5:35/km
少しだけペースを上げていく。しかし、それでも上げすぎないように調整。
(とりあえず、後半まで様子を見て、焦らずに行こう)
と考える。ここまでは、ただひたすらに我慢しながら慎重に走り続ける。
〇21〜30km 5:45/km
20㎞地点を超えた段階で疲れは無し。いつもだったら少しずつ呼吸が荒くなってくるのだが。
(……ちょっと、慎重すぎたかな)
最初の折り返し地点にたどり着く。軽やかな足取り。疲れはほとんどない。これは逆に調子がいいのでは?と思うほど。
調子に乗りそうな気持を抑えつつ、前を見ながら走ると――
(あ!)
サブ4ペースメーカーの後ろ姿。その周りをサブ4狙いのランナーが取り囲む。
(もしかしたら、サブ4行けるペース?意外としり上がりでペース上げられるかも?)
と、昂揚感が高まる。だって、今回はタイムはとりあえず考えていませんでしたから。
そんなことを考えていると、前に再び助っ人登場。
ご存知、千葉ちゃんこと千葉真子氏。ここも浮足立ってハイタッチ。
「よーし、順調!ナイスラン!」
と激励をいただく。気分はもう最高潮!ペースがどんどん上がっていく!!
――と思ったのだが、そうもいかず。
(……もう限界である)
ここあたりでトイレに行きたい衝動を抑えられなくなる。
(この天気だし……我慢し続けるのは無理だな)
走っているうちはあまり気づかないが、振り続ける雨の影響でからだの中はすっかり冷え切っていたようだった。
24㎞地点でやむなくトイレに入る。しかし、タイムロスなどは気にしない。雑念を捨て、目標達成だけを頭に入れる。
トイレで用を済ませて仕切り直し、ペースを整えながら走る。
――
しばらく人気の少ないコースが淡々と続く。横を見ると、今にもあふれかえりそうな大井川。雨は強弱をつけながら振り続ける。すでに走路は水浸し。ここで靴が水に浸かることを気にしているランナーは、おそらくほとんどいなかっただろう。
〇31~35km 6:40/km
30kmすぎ、しまだ大井川マラソン名物の大エイドステーションがランナーを迎える。これを楽しみにしている参加者も多い。
(これは公式画像。当日はこんな晴天ではない)
しかし、私はここにきて限界に到達。再びトイレに駆け込む。……だが今回は単純な体内の水分排出だけでは済まされない状態だった。
(……気持ち悪)
雨によって体が大分弱っていたのかもしれない。筋肉の痛みよりも、内臓の悲鳴が体を動かなくさせる。本来ランナーにとって楽しみのはずの大エイドステーションが、今は避けなければリタイア直結の物となっていた。
楽しそうなランナーを横目に私は大エイドステーションを抜ける。抜けた後も、気分が相当悪い。
(こんな時は、日ごろの練習を思い出すんだ――)
と、少年漫画のように思うわけだが……。
「ああ、今日は雨か。じゃあ、休みの日~(笑)」
「二日酔いで気持ち悪……。今日は体を労わろう。それもできるサラリーマンである」
「走りたいけど、今日は勉強する日って決めてんだ。走っている場合じゃない!あ、その前にコメダ珈琲に行って気分転換しよ」
(……言われてみれば、雨の中走る練習ってしたことなかったなあ。それに、ここ最近、何かにつけて練習さぼってたし……。マラソンって、日頃の積み重ねなんだね)
マラソンに向き合ううえで、基本的ながら最も大事なことを、今更ながら再認識する。私には、ピンチの時に己を支えてくれるものが悲しいほど何もなかった。
(何という薄い背中よ。しかし、これが本来の実力である……)
と無念極まりない心地。雨の力で自分の中にあった薄っぺらの皮が剥がされたのであった。
……しかし、当初掲げた目標である
「絶対に完走」「歩かない!」
だけはどうしても成し遂げたかった。それだけを頭において、腹を手で温めながら走りをつづける。
〇36km~ラスト 7:00/km
ここはもう、つらかったことしか覚えていない。肉体的な疲労と内臓の疲労が相まって、正直地獄であった。どんな道を走ったのかも、あんまり覚えていない。だから、書くこともあんまりない。
ただ、お経のように頭の中で
(歩くな歩くな歩くな歩くな歩くな歩くな歩くなーー)
と唱え続けていたように思う。ほとんど歩いていると変わらないペースであったとしても、ここは自分との戦いだけである。
もしも、ここで
実はゴールは43.195㎞でした!がんばって!
と言われたら、たぶんゴールできなかったかもしれない。
そんな状態、そしてあと残りわずかというところ――。
「4時間以上走った自分をほめてあげましょう!そして、ゴールは万歳をしましょう!ここで恥ずかしがったら絶対もったいない!」
という、大会ゲストのDJケチャップ氏の声が聞こえる。この声に従うまま、小さく万歳をして――
ゴール!
ゴールして近場で寝そべりたかったが、あたりがご覧のありさまだったので、ヨロヨロとその場を立ち去る。
小中学生と思われる方々が、「お疲れ様です」と計測チップを外してくれたり、「お疲れ様です」と笑顔で参加賞の飲み物をくれたり、「お疲れ様です」とTシャツを渡してくれた。当然ながら、彼ら彼女らも、雨に濡れ靴も泥だらけになりながらその仕事をしてくれている。
もう、あなたたちはいったいどういう教育を受けたらこんな大変なことをそんな素敵な笑顔でできるんだ!
と心の底から思った。走り終わった直後、心身ともにギリギリの状態で思ったくらいだから、走り終えた今、その思いはさらに強い。
本当にありがたかったです。こんな天気でも走り切ることができたのは、こういったサポートの方々の力が大きいのだと思います。
――
脚を引きずりながら預けていた荷物を受け取る。そして、早々に帰りのシャトルバスに向かう。
「こちら、温泉に向かうバスでーす」
という声が耳に入る。どうやら、島田駅行きのバスと、近くの温泉に向かうバスの2タイプがあったらしい。
私は帰りの時間を確認しながら、どうしてもお風呂に入りたい欲求に駆られて、風呂行きのバスを選ぶ。
(余談だが、バスの座席はすべてビニールシートで覆われている。ずぶ濡れのランナーを乗せるわけですからね。)
出発前のバスの中で、参加賞のおむすびをいただく。正直、まだ体調がすぐれなかったのであまり食は進まなかったけど、ちびちび口に入れる。おいしかった!
シャトルバスが発進し、温泉に向かう。バスの窓から外を見ると、まだ走っている方々の姿が目に入る。
心の底から応援。届かない声援だろうけど、この方々が完走することを切に祈る。それと同時に、最後まで声援を送り続ける方々のことを思うと、本当に頭が上がらなくなる。
――
その後、バスで約30分で、「伊太和里の湯」に到着。
幸せだった。とても幸せな入浴だった。ただ、私の場合、帰りの時間も迫っていたので、10分くらいの入浴時間だった。許されるならば、1時間以上風呂に浸かっていたいくらいだったが。それでも、冷え切った体を温めるのには十分なほど、幸せなひと時であった。本当にありがとうございました。
再びシャトルバスに送られ、島田駅に到着。シャトルバスの運転手やアテンドの方々も、土砂降りの中、ずぶ濡れのランナーを送るという、本当にやっかいな仕事だったでしょうに。温かいご対応、本当にありがとうございます。本当にありがたかったです。(なんかしつこいかもしれないけど、やっぱり書いておきたい)
島田駅に到着し、切符を買っていた頃、
パンパーン
という音が聞こえる。同時に、あたりから
あ、おわりかあ
という声が聞こえる。時計を見ると、16時。制限時間に達したようであった。
ーー
その後、浜松駅まで電車で揺られる。雨脚はさらに強くなっていった。
(浜松駅前)
浜松駅に到着。エキナカで晩御飯を購入。
そして、イソイソと大阪行きの高速バスに乗る。バスの中では起きてるんだか寝てるんだかよくわからない気分で、マラソンを振り返る。
ーー
夜の23時頃に家に到着。帰ったらすぐに寝てしまう。なんだか慌ただしい一日であった。
――
さて、この日の結果だが、タイムとしては
4時間20分弱
でした。個人的には当初立てていた目標である「完走」と「歩かない」は達成できたのだから、万々歳な結果である。
ただ、今こうして日記を書いて思うのが、
フルマラソン、全然わかっていなかったなあ
ということである。
練習不足は否めない。もっと本番で力を発揮できるような積み重ねが必要だろう。あと、緊張感も少し持たなくては。雨具を忘れるあたりはマラソンに対してあまりにいい加減な態度と言わざるを得ないだろう。30kmあたりの体調不良も、もしかしたら避けられたものだったかもしれない。
まあ、一方で、そんな体調不良の中でも、最後まで自分の目標を達成すべく走り続けたことは、素直にほめてあげたい。 たぶん、今までのフルマラソンの中で一番リタイアが脳裏をよぎった大会だった。それくらい、35㎞からはつらかった。まあ自己満足だけど、あそこからはしっかり頑張ったなあと思う。次回からは辛くならないようにしなくては、だけどね(笑)
本当に、まだまだ学ぶことの多いマラソン。経験を重ねて、もっといい走りができるよう、頑張っていきますで。
おしまい。
せっかく来たんだから…。
「『茶色』ってなんで『茶色』なの?」
「え?」
「いやさあ、焙じ茶とかは『茶色』だけど、普通の人の茶のイメージって『緑色』だろ?どうなのよ、お茶娘」
「名前で呼んでくださいよ」
ここは茶処静岡川根。越すに越されぬ大井川。川の流れのように途切れなくからかわれております。
茶柱倶楽部第9煎『茶柱、再び』より
土曜日。朝。
あさ、慌てて準備をし、外に出る。
(雨である…)
傘をさすほどではなかったので、そのままで最寄駅に向かう。そして大阪駅のバスターミナルへ。そして、約5時間、バスに揺られながら静岡は浜松駅に向かった。
前回記した通り、10月29日、静岡の『第9回しまだ大井川マラソン』にでることになっている。
ただ、台風が見事な直撃ルートになるため、行くかどうか少し悩んだ。正直、前回記した通り試験勉強が忙しく、なかなか練習ができなかったし、慣れない勉強疲れで少し疲労がたまっていたのもある。
わざわざ行って当日中止だったら目も当てられない。逆に大会決行になっても、風と雨が降るなか走りきる根性があるかどうか…。
とりあえず、高速バスで浜松にむかい、前泊することにした。
さて、浜松駅に14時半に到着。浜松駅はすでに雨。
疲れを取るべくホテルで休もうかと思いつつ、せっかく静岡に来たんだから観光の1つくらいしたいなあと思い…
ここに来てみた。静岡の菊川市にあるサングラムカフェ。san grams green tea & garden cafe。
静岡といったらやっぱり日本茶。ここで抹茶とかぶせ茶、そして抹茶プリンを堪能した。
大変美味である。お茶の淹れ方までレクチャーしてくれたのも嬉しい。余は満足である。(あとは、客の私が髭面のボサボサ頭で大変似合つかわしくない様子だったのが申し訳なかった。)
さて、ホテルに帰ってサービスカレーを食べながら明日に備える。
うまい!そして準備万端!明日は中止になりませんよーに!
ただ、この日記を書きながら、なんだか中止になりそうな気がしてます……だって、同日開催の他のマラソン大会が中止になり始めてるんだもの(苦)