キヅカイとセクハラは紙一重
人にものを教えるときは、教えているようなふりをしてはいけない。知っていることでも、さも忘れたかのように言い出さなければならない。
アレキサンダー・ポープ
「男女同権」とは、男の地位が女の地位まで上がったことなのです。
日曜日。
いつものコメダ珈琲。
「ふええ~っつくら」
と、ようやく仕事から解放されて一服。アイス珈琲をちびちびと飲む。
来週は月曜日から金曜日までぶっ通しで出張となっている。先週は突発的な会議が続いたため、ほとんど出張の準備ができなかった。そこで、日曜日に会社に行って出張準備をしたのであった。
――本当は休日中に仕事をするのは嫌いなのだが、かといって準備を怠ると1週間ツライ日々になる。難しい境目だが、今回は仕事を優先したわけである。
そんな出張準備もひと段落し、日曜日の午後3時から行きつけのコメダ珈琲でリフレッシュタイムを過ごしていたのだが――。
コメダ珈琲で無料で提供される豆菓子をポリポリしながら、ふと気になることについて思いを巡らす。
「新入社員ねえ……」
今回の出張は、途中から新入社員と「同行営業」することになっている。
同後営業ってどんな営業?
同行営業とは、その名前のとおり「誰かに同行をするタイプの営業」です。
例えば、新人をいきなり一人で営業にいかせるわけにはいかないですよね。
きちんと、ノウハウを教えて「営業とはこういうものなんだ」と教えていかなければなりません。
では、それをどうやって教えるのか?というと、同行営業で一緒についていった先輩が「営業とはこういうものである」ということを教えています。
営業の世界では、最初は同行営業から始まるのは当たり前のこと。
営業の仕方というのは、何度口で教えられたところで「分かりにくい」ということが出てくるものです。
だからこそ、きちんと方法を教えてくれる先輩の存在が必要になるということですね。
(http://salesperson-power.com/extend-power/doukou/ )
新人との同行営業については、先週、課長から告げられた。
課長「来週の水曜日から金曜日、お前が新入社員を連れて同行営業してほしい」
「……同行営業、ですか?」
課長「そうだ。東京支店に配属されたトマトさんが、来週西日本に研修に来るんだ。その研修中、お前が相手をするわけ」
「……はあ」
課長「年も近いしイイだろ。お前の最高のパフォーマンス(笑)をみせてやれ」
「いや、僕も大阪に来たのは4月からで、取引先さんとはほとんどまともに商談できてないんですけどね……。最高のパフォーマンスどころか不慣れな姿をさらすことになるかと思いますが……」
課長「そういう姿も勉強になるもんだ。とにかく頼んだぞ。スケジュールについて決まったらトマトさんに伝えといてくれ」
「はあ」
当然のことだが、私も新入社員時代に先輩諸氏と同行営業したことがある。
同行営業が本当に勉強になったかどうかはよくわからない。先輩方が何を話しているのか、まだほとんど理解できてなかった時期だったからである。
ただ、勉強になったかどうかは置いといて、
一緒に同行営業して楽しかった人と楽しくなかった人
というのは、結構覚えているものである。あくまで私の印象だが、以下の通りである。
同行営業が楽しかった先輩
・商談前に、商談先のことについてわかりやすく教えてくれた人(この「わかりやすく」というのが難しいのである)
・時間設定に余裕がある人(かといってゆるい営業ではない)
・話をとにかく聞いてくれる人(話しやすい雰囲気を持っている)
・取引先と仲がいい人(やっぱり、取引先が鏡になるもんです)
同行営業が楽しくなかった人の印象
・「わからなかったらなんでも聞いて」というが、何を聞いたらいいかわからない、という新人ゴコロを理解してくれなかった人。
・「できる新入社員だなあ」とか「今どきの新入社員はみんなできる」とか妙におだててくる(それが嫌みに聞こえた)
・変にマイルールを押し付けてくる。(俺はこうしてるから君も真似しな)
・身内の悪口を言う
・身内の悪口を言わせようとする
・取引先の悪口を言う
・自慢話ばかりする
・変に新入社員に気を使いすぎている
・話しかけにくい無口
・見透かしたような話し方をしてくる
・新入社員に対し対抗意識を持っているのが伝わる
……何か楽しくない人の印象の方がポンポン浮かんでくる。こういうところを見ると、自分にとって同行営業はあんまり楽しいものじゃなかったということか。(苦笑)
ともかく、新入社員との同行営業、なにか刺激的な発見ができることを期待しよう。新入社員からも教えてもらうことは多いはずである。こういうスタンスを常に意識できるよう、ゆとりをもっていきませう。
……ところで、一つ気になることがあった。
「ところで、同行する新入社員って、トマトさんなんですか?」
課長「そうだよ。今年でうちの部署に配属されたのは、トマトさんしかいないだろ」
「トマトさんって、女の子ですよね」
課長「当たり前だろ。何回か会ったことあるだろうが」
「……僕、来週1週間出張なんですよ。当然、トマトさんと同行営業する予定の水曜日~金曜日も出張ですけど……いいんですか?」
課長「……え?そうなの?……そりゃまずいなあ」
「まずいですよね(苦笑)」
課長「まずいね(苦笑)」
――何がまずいのか?まあ、変な話だが、
男女2人っきりなこと
である。
新入社員で女性が入った場合、出張による宿泊コースの同行営業は避ける傾向にあった。たいていの場合、日帰りコースで日程を組んでいたのである。
今どき古臭い文化だね。女性がこれほど社会進出しているのに
という意見はごもっともである。だが、うちの部署なりのコンプライアンス問題なのだ。(あんまり女性が働いたことがない職場なので、対応の仕方がまだよくわからんのです)。
課長「とりあえず部長に確認してみる。でも、たぶんお前になるからね」
「まあ、僕は別にどちらでもいいんですけどね」
課長「……焼き芋、俺はお前のこと信用しているからね」
「いや、何もしませんって……(満月の時以外は)」
というわけで、私が同行営業することになったのであった。
「まったく課長も大げさなんだよなあ。……でも」
と思い、コメダ珈琲にてパソコンを開き、あることを調べる。決して新入社員との甘い旅行計画について調べているわけではなく、もっと現実的な問題についてである。
それは、
セクシュアル・ハラスメント
である。
大辞林 第三版の解説
セクシャルハラスメント【sexual harassment】
労働や教育などの場において,他者を性的対象物におとしめるような行為を為すこと。特に,労働の場において,女性に対して,女性が望んでいない性的意味合いをもつ行為を,男性が行うこと。性的いやがらせ。セクハラ
普段から言葉には気を付けているが、今どきの女の子が何を考えているのかまるで分らない。マイペースにいろいろと話して新人にセクハラ呼ばわりされるのは私としても不本意である。
というわけで、少しセクハラについて調べてみた。
調べてみると、どうやらセクハラは大きく2つに分類されるようだ。
①ボディタッチ(膝や髪や肩を触る等)
②性的に問題な発言
①に関してはほとんど心配ないと思われる。こういうのはプレイボーイ(自称)がやる行動である。私はモテないことを自覚しているモテない男なので、ここら辺は問題ないだろう。
……となると、心配すべきはやはり②である。②についてもう少し詳しく見てみよう。
セクハラに該当するような発言例
・性的なジョークを言う(「俺、お前とはヤレない。女として見れないわ」、「俺は絶倫なんだぜえ」等)
・身体の特徴についていう(「お前、胸ないなあ」「ちょっと痩せすぎじゃない?「顔がマイケルムーアに似てるね」」等)
・結婚や出産時期についての発言(「いつ結婚する気なの?」「どうせ腰掛でしょ?」)
・執ように食事に誘われたり交際を求める(「ぼ、ぼくちんのこと、どう思う?」「ふ、ふ、ふふたりで夜景を見ながら牛丼食べない?こ、これは先輩命令だかんね」)
……う~ん、基本的にはしないとは思うけど、自分も気づかないところで発言している場合もあるからなあ。例えば、ほめたつもりで
「トマトさんって綾瀬はるかに似てるね」
とか
「トマトさんってすごくスリムだよね」
とか
「晩飯、一緒に食べよっか。好きなものとかある?」
とか言ったとしても、それがセクハラととらえられる可能性もあるわけだし。(いや、人によってはそうらしいですよ、ダンナ)
嗚呼、めんどくさい……。
とりあえず、嫌われないように営業車に消臭剤つけておこうっと。あ、俺とトマトさんだと体感温度が違うだろうからエアコンも気を付けないとなあ――トイレはこまめにいったほうがいいのかしら?もちろんトイレ大丈夫?なんて聞けないしねえ。あ、お昼ご飯はコンビニじゃだめだよな――。
アア、コリャタイヘンダ。