ギザ十な日々

2人の息子と妻との日々を書いています。

「至急」という言葉に見え隠れするサラリーマン事情

 

 

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金曜日。夕方。在宅勤務。

 

私はパソコンの前で少しイライラしていた。

 

昨日、部長から

 

「今月のうちの部の顧客別の売上状況をまとめてほしい。あと、各営業担当者に、なぜ売上が増減したのかの理由を記載してもらってくれ。期日は明日金曜日の終業時までによろしく。月曜朝一の会議で使うんだ」

 

と突然命じられる。私は自分の他の仕事の脇に置き、慌てて売上資料をエクセルにまとめる。そして、営業全員にメールを発信する。

 

各位

お疲れ様です。

添付の資料に、各担当で売上が増減した理由を記入してください。期日は金曜日の終業時刻までとさせて頂きます。お忙しい中恐縮ですが、よろしくお願いいたします。

 

といったメール。大体の同僚は

 

(あ、これは部長からの命令だな。こりゃ、さっさとやらんといかんな)

 

と思って対応してくれる。

 

・・・しかし、残念ながら全員が同じ気持ちになるわけではなく、いつも2~3名は期日までに記入がされていないものである。そして、それはだいたい同じ人である。

この日もまた、終業時刻が過ぎた段階で、いつもの2人が記入がされていなかった。私はイライラし、

 

リマインド

まだ提出されていない方は何卒、いそぎご対応をお願いいたします。

 

と送る。ただし、特定の2名宛では無く、営業全員宛に送る。2人だけを宛名にし、CCに部長を入れて責めることもできる。だが、残念ながらこの2人がいずれもうちの営業部署のベテランと言うこともあり、あまり高圧的になれないのであった(仮にベテラン営業で無かったとしても、それをやる勇気は私には無いのだが)。 

 

 

そんな折、経理部の人からメールが届く。

 

ヤキイモ様 

お疲れ様です。

チョメチョメ(株)の7月15日分の売上について、入金が確認できておりません。至急、入金日を確認頂きますよう、よろしくお願いいたします。

 経理部 中田(仮)

 

 

「・・・なんだこりゃ。至急って、こんな終業後にどう至急確認すればいいんだよ」 

 

いきなりよく分からない内容で、しかも「至急」とはどういうことか。しかも至急を赤字にしているとは。経理部の理不尽なメールにますますイライラする。

 

すると、その直後に会社スマホが鳴る。経理部のベテラン栗山(仮)さんからであった。なお、上記のような催促メールは、いつも栗山氏から来ていた。

 

栗山さん「あ、ごめんね。さっき、中田くんから連絡来たと思うけど」

 

「ええ。中田さん。そうですね。至急と言うことで」

 

栗山さん「あの子、新入社員君なのよ。だから、サポートで電話したんだけどね。で、さっきのメールなんだけど、--事情はこうこうこういうわけ」

 

「ああ、なるほど」

 

栗山さん「まあ、彼、『至急』って書いていたけど、こんな時間だし、来週に対応してもらえるかしら」

 

「ああ、わかりました。できる限り早めに対応します」

 

ということ。ひとまず、今日中にどうこうしろ、ということではないようであった。

 

 

どうやら、

 

新入社員中田君が上司に指示されてメール。

(おそらく)上司の栗山さんから、急ぎ処理する必要があることを伝えるためにそのように書くように指示された。もしくは過去の栗山さんのメールをCCに入れられながら勉強したために、「なるほど、急ぎの時は『至急』って書けば良いんだ」と学んで送った。

終業時刻を過ぎた時間に「至急」メールを私宛に送ってくる。

 

ということのようだった。

 

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 サラリーマンで「至急」と書かれたメールを受けて喜ぶ人はおそらくいないだろう。それどころか、多くのサラリーマンは不愉快な気持ちになるに違いない。少なくとも私は顧客に対して『至急』という言葉を使ったことは一度もない。なんとかこの危険なワードを使わずに相手に素早く対応してもらうようにするのが営業という仕事である(多分)。

 

身内に対しては何度か使ったことがあるが、それも相手がよっぽど期限を守らなかったり、相手に落ち度があることが明確なときくらいだと思う。冒頭の先輩社員2人に対しても、さすがに期限を1時間過ぎたくらいじゃ「至急」というワードは使わない(まあ「いそぎ」、は使ってたけどね)。

 

それくらいサラリーマンにとって「至急」という言葉は重いのだ。新入社員の中田君よ、そこらへん、わかっているのか?

 

 

・・・とは言いつつも、新人中田君の気持ちも分からないではない。経理部の人は日常的に「至急」というワードを使うからね。そして、たいていの場合、至急を使うときは受信者に落ち度があるのが多いのが、経理部という部署である。

 

栗山さんのフォローも、なんというか、「至急」という言葉の裏に込められた本音と建て前が見え隠れする。さっきの電話も、

 

基本的には私たちは「至急」って言葉を日常的に使うし、そうしなければならないんだけど、一応、タイミングや相手を考えて「至急」を使っているのよね。でも、まだそこら辺の微妙なニュアンスまでは分かっていないだろうから、フォローの電話をしたのよ。

 

ということだろう。多分。

 

 

ひとまず、中田君のメールを無視することもできないので、お客様に請求書が無事に届いていたかの確認メールを送る。詳細な確認は月曜日になるだろうが、そこは中田君も許してくれるだろう。

 

メールを終えた後、私は自分自身の課題に戻る。先ほど、「至急」を使わないリマインドメールを送った訳だが、ベテラン先輩社員の2人は私のメールに気づいて対応してくれているだろうか。恐る恐る共有ファイルを確認する。

 

「・・・あ、書いてくれてる」

 

どうやら、ベテラン先輩社員2人とも、先ほどのリマインドメールを見て「いそぎ」記入対応をしてくれたようだった。

 

今回も至急という言葉を使わずになんとかまとめ作業を完了することができた。中田君よ、コレができるリーマンだぜ。

 

 

 

・・・だんだんめんどくさいリーマンになってきたなあ、と、ここまで書いて思うのであった。