「つわり」に対する 適切ではないたとえ
木曜日。今日も妻はつわりで寝込んでいる。
ベッドで横になる妻を励ます。
「調子どう?なんだか、きつそうね」
妻「つわり辛い・・・。もう耐えられない・・・」
「大丈夫かあ。・・・大丈夫じゃないよなあ」
妻「ネットで妊婦のブログとか見ると、『私は会社のトイレで毎日吐いてました!』とか『子供と夫の面倒見ながらつわりと戦いました!!』とか 言っている人いるけど、私は本当無理だと思う・・・我慢が足りないのかな・・・」
涙を浮かべる妻。その姿が実にいじらしく感じる。
「・・・いや、そんなことないよ。そんなこと言うなよ。十分頑張ってるって。ブログなんて、ある程度自己顕示もあるもんだよ。『私はこんなに頑張ってます!』とか『皆さんとは違う特別な人生を生きてます!』って思われたいだけだよ。だから、話半分で読むくらいでいいんだよ。それに本当のこと書いてるかどうかもわからないし(すみません、妻を励ますために言っただけです。皆さんのことではありません)」
妻「そうなのかな・・・。でも、私はもう、つわりは二度と味わいたくないなあ・・・二人目は無理かも・・・」
「わかるわかる。よくわかるよ」
妻「・・・わかるの?」
「うん。おれもフルマラソンに出る度に、35kmのあたりで『もうしばらくマラソンはいいや』って思うもん。ほら、いま14週目でしょ?つわりは16週目くらいまでって言うし。なんとなく、フルマラソンのポイントと同じじゃん」
妻「うん。・・・うん?」
「辛いのはよくわかる。でも、完走した後には、『さて、次はいつ走ろう』って思うのよね。多分、妊娠も同じようなもんなんじゃないかな。出産したら、つわりの辛さなんて忘れちゃうんじゃない?マラソンと一緒で」
妻「・・・それ、一緒なの?」
「え?」
妻「一緒なの?それと?」
妻の問いかけと腑に落ちない表情から、妻が言いたいことを感じる。
「・・・あ、ゴメン、違うかもね。適切なたとえじゃ無かったね」
妻「うん、そうだね」
「『趣味で走っているマラソン』と『つわり』を一緒にしちゃだめね」
妻「うん、そうだね」
「・・・さて、飯の用意するか。なんか食べられるものある?」
妻「・・・ごめん、何もいらない」
「そうか・・・(俺も35km地点では何も食べたくなくなるよ)」
・・・いや、俺のマラソンだって辛いんだよ?・・・でもまあ、趣味の苦しみと、会社を1ヶ月近く休む苦しみ・・・一緒にされたらそりゃ違うわなあ。
つわりの場合、男は下手に共感しようとしなくていいのかもしれない
後輩ができたら教えてやろう。